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第5章「世の終わりのための四重奏」 4-1 全軍出撃~行き先

 「しなくたって、こんなことは、とっくに御存じだろうよ」

 「確かに……」


 やおら、ヂャーギンリェルが立ち上がった。おっ、と声に出し、プラコーフィレス、

 「御大将自ら、御出陣?」


 「この目で見てみないと、どうすりゃいいのか分からん。ゲーデルエルフの凄腕の暗殺者……あの・・エーンベルークンを撃退したヤツだ。小手先じゃ、話にならなかったということよ」


 赤い眼を殺意に細め、ヂャーギンリルが口を引き結ぶ。

 (火の精霊サラマンダー八体が、小手先とは思えないけどね……)

 プラコーフィレスは壁によりかかり、ニヤついたままそんな族長を後ろから見つめた。


 「魔獣庫の鍵を開けろ!」

 祭壇の間から出るなり、ヂャーギンリェルが叫ぶ。

 「どの檻を開けますか?」

 ひざまずいて、控えの兵士が尋ねた。

 「全部・・だ!」

 えっ? と兵士が族長を見上げたが、睨みつけられ、

 「ハハァ!!」

 すぐさま駆け去る。


 ヂャーギンリェルも大股で歩き出し、

 「出陣だ! 侵入者を全力で撃退する!! 全軍出陣!!」

 云われたエルフたち、一瞬、意味が分からず、ポカンとしている。

 「訓練じゃねえ!! とっとと出撃準備をしろ!! 全軍だ!!」


 飛び上がって、エルフたちが動き出す。にわかに、洞窟全体が騒然とし始めた。フィーデン洞窟エルフ全軍出陣など、数千年来、一回あるかないかだろう。しかも、洞窟内での撃退戦闘は初のはずだ。


 (あーらら、こりゃ大事オオゴトになってきましたよ……っと……)

 云いつつ、プラコーフィレスもその赤い眼を針のように細め、ペロリと唇を舐めた。



 4


 すっかり冷え固まった山のような溶岩の塊におっかなびっくり近づいて、三人が目を白黒させる。おそるおそる手をかざすが、暖かくもなく、むしろ冷たい。


 完全に岩だ。

 「ひええ、こりゃまた、いってえどういう寸法で……??」

 「わかんねえ」

 フューヴァも首をかしげる。

 「私、もう何も考えないことにしました」


 いきなりペートリューがそう云ったので、プランタンタンとフューヴァ、ふだん何か考えてたっけ……という表情かおでペートリューを見つめた。


 「なんにせよ、これで堂々と渡れるってえ寸法で……」


 上流部は溶岩が氾濫したまま固まったので、川だったところがすっかり埋め立てられている。そこまで移動し、プランタンタンがヒョイヒョイと渡って容易たやすく対岸へたどり着いた。


 そしてフューヴァとペートリューがゴツゴツした冷えたての溶岩をおっかなびっくり渡って、最後にストラも歩いて渡った。


 「さ、お次はどこへ潜るんでやんす?」


 夜目の効くプランタンタン、洞窟の岩壁に何か所か通れそうな穴が空いていることを発見する。


 「こりゃあ、完全に迷路でやんす」

 本来ならストラの広域三次元探査により余裕で道が分かるが、いまは違う。


 「五か所のうち、二か所は囮通路。途中で行き止まり。残る三か所は、狭域探査範囲内では、ずっと続いている」


 と、プランタンタンがその三か所の空洞の前で、それぞれ耳をすまして奥の音を聞いた。何か人工的、人為的な音がしたら、そこにエルフがいると思ったのだ。しかし、


 「どこも、何にも聴こえねえでやんす」

 「川の音とかも聴こえねえのかよ」

 「まったく、聴こえねえでやんす」


 すると今度はペートリューがフラフラと動き、左端の洞窟の前で闇を凝視し始めた。

 てっきり、いよいよペートリューが魔法を使って何か察知しているのかと思いきや、


 「……こっちから、お酒の匂い・・・・・がします」

 「ハ????」

 プランタンタンとフューヴァ、流石に驚愕。

 「マジで云ってるのか?」

 「きっと、気のせいでやんす」

 二人とも当然信じなかったが、ペートリューは譲らぬ。


 「すっごい微かですけど……ベリー系の、果実酒・・・みたいな薫りです……ワインとは違います……もっと、甘い、すごく薄いけど、美味しそうなお酒です……」


 「薄い」というところで、プランタンタンがピンとくる。

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