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第5章「世の終わりのための四重奏」 2-5 天の目玉

 「いやはや、すげえ格好だぜ」

 フューヴァが銀鏡に移る自分を見て、驚いた。

 その夜……。

 宿の食道に金を払い、軽い壮行会となった。


 スルヴェン名物である、フランベルツでも最上質のカスタ肉や乳製品料理、極上の白ワインが並び、三人の眼と舌を楽しませた。調子に乗ってペートリューが「無限にワインを飲むモード」に突入し始めたので、ストラが(いつも通り)強制的に脳へ睡眠誘導波をぶちこんで、気がついたらペートリューはテーブルに突っ伏して眠っていた。


 もう慣れたもので、プランタンタンとペートリューはかまわずに放っておき、存分に料理を楽しんだ。


 夜、ストラがペートリューを小脇に抱えて部屋へ戻り、プランタンタンとペートリューも部屋に入る。


 プランタンタンは歯を磨くや、いつでもどこでも寝ることのできる習慣で、ベッドに入るやすぐさま寝息をたて始めた。


 一人、興奮してなかなか寝つけなかったのは、フューヴァだった。

 ぼんやりと木窓を開け放ち、夜空を見上げた。


 (ヴィヒヴァルンで活躍して……できれば、ストラさんにどこか領地を持たせたい……そこを拠点に……大きくなって、ヴィヒヴァルンから独立だ……そして……ヴィヒヴァルンやホルストン……ラヴァロンやティチェーリア、ウルゲリアまで……いやいや、もっと大きな土地を抱える領主にしてみせる……まともなら、何十年もかかる仕事だろうが……ストラさんの力だ……10年以内にしてのけて見せるぜ……)


 そんな妄想をしていると、ますます興奮して眼がさえてきた。

 が……。

 ふと、そんな夜空に、不思議なものが見えたので仰天した。


 薄曇りだったのでそれまでまったく気づかなかったが、サーッと夜風が吹いて雲が流れ、満天の高原の星空が見えたときだった。


 (な……なんだ……!?)

 天に、巨大な「一つ目模様」が浮かんでいた。


 それが幾重にも環を描いて、星や月を歪め、線のようにして丸くひん曲げている。


 まさに、巨大な瓶の底が天にあるような感じだった。

 「……!?」

 フューヴァは、窓から身を乗り出して、天を仰いだ。


 その「模様」こそ、ストラが重力レンズにより大量の宇宙線を集め、一身に受けてエネルギー補充している最中だった。


 大規模空間破砕兵器にまきこまれた影響で、多重空間重力越波効果によるブラックホールにも相当する連続超絶重力波群からプログラムを護るために、とてつもない規模と速度と回数で位相空間転位を繰り返し、テトラパウケナティス構造体に溜めこまれた莫大なエネルギーの99.9999999999%以上を失っていた。そのエネルギー総量は、テトラパウケナティス構造体特有の内次元反転効果により、理論上は無限である。が、現実問題、最大級のテトラパウケナティス構造体兵器でX100規模の太陽フレアに匹敵した。


 すなわち、超概算で1Mt級水爆100億個以上に相当する莫大なエネルギー量だ。


 そして実際、ストラはその元世界最大級のテトラパウケナティス構造体兵器の一体であった。


 ストラのような超絶強力なテトラパウケナティス構造体兵器は、同じくテトラパウケナティス構造体により構成された無人プラントが、恒星に最接近して製作される。


 この世界に来たばかりのストラは、あやうく消滅する寸前の、形象保持限界ギリギリだったのだ。


あのグラルンシャーンの牧場からタッソへ抜ける秘密の洞窟の中で、ストラは少しずつ降り注ぐ宇宙線や中性子、重力波を集め、なんとか再起動に成功した。いや、もしかしたらこの世界に存在する無尽蔵の「魔力」を、プログラムが自動的に集めていたのかもしれない。で、なくば、自然に集まる宇宙線だけで再起動を行うには、数万年はかかるだろうから。


 そこからは潜伏待機モードで行動しているので、使用エネルギー総量があり得ないほど少なくて済んでいる。だが、もし本格的な戦闘モードに突入したら、とてもではないがエネルギーが足りなさすぎる。そのため、機をみて、少しずつ宇宙線回収方式でエネルギー補充を繰り返していた。


 が、未だ総量事実上値の0.00000000002%しか補充できていない。つまり、この世界へ「飛んで」来てから、ストラは失ったエネルギーの0.00000000002%しか回復できていなかった。機を見ては夜空で宇宙線回収を繰り返し、既に100回以上行っていて、それである。


 こんな具合では、単純計算であと最低でも500兆回は行わなくては満タンにはならないことになる。


 とてもではないが、現実的ではない。

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