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第4章「ほろび」 4-5 スルヴェンへ

 また、離れの中でフューヴァがマンシューアルから得た金貨や宝石を、石鹸で丁寧に洗った。外で洗うと人の目があるため、離れに籠もって洗ったのだ。臭いが消えたのかどうかはよく分からなかったが、洗うと輝きが増した気がした。


 それらを均等に三等分し、三人で分けて持つ。


 (うーん……稼ぐのはいいけど、こんな高額金品、プランタンタンじゃねえけどいつまでもジャラジャラ持ち歩いてらんねえな……)


 遠からず、どこかに本拠地を置かなくてはならないかもしれない。フューヴァは、そう確信した。


 (ヴィヒヴァルンに、イイ場所があるといいけど……そこを拠点にして、ストラさんの国盗り物語・・・・・の始まりだぜ)


 井戸水で濯ぎ、小石みたいなマンシューアル金貨を一粒ずつテーブルに並べて乾かした。


 そこに、いきなりドアが開いたので身構えたが、


 「村長にも話を聞きやあしたが、だーれもヴィヒヴァルンなんか行ったことがないっつうんで、行き方を知るのは一人もいねえでやんす」


 プランタンタンとストラが帰って来た。フューヴァは安堵しつつ、

 「じゃあ、どうします、ストラさん。まずは西に行きますか?」

 「うん」

 ぶっきらぼうにストラが答えた。


 「西っつうと、もしかして、シュベールさんの領地っちゅう……ナントカってところでやんすか?」


 「スルヴェン」

 ストラが、ボソリとつぶやいた。

 「スルヴェン……」


 プランタンタンはまったく地理感が無く、前歯を見せたままスピスピと鼻を鳴らしてフューヴァを見つめた。


 「アタシも、聞いたことあるくらいだぜ。フィーデ山を仰ぎ見る場所だ。フィーデ山の向こうがヴィヒヴァルンなんだ。フィーデ山は、晴れてたらギュムンデからも見えたぜ」


 「はあ……遠いんでやんすか?」

 「さあな。でも、ゲーデル山脈からも見えるだろ」

 「いや、あっしは知らねえでやんす」


 正確には、プランタンタン達牧場エルフの住んでいた場所からは、山の端に隠れて見えないのだった。山岳エルフ達の住む、もっと山脈の高地へ行けば、山脈の端から続く峠の向こう側に独立峰としてフィーデ山が見えてくる。


 「そうなんだ」

 「まあ、とにかく行ってみやんしょう」

 決まった。明日、出立することにする。


 フューヴァが離れのオーナーである農家へ金を払い、食料などを買いこんだ。

 「おら、ペートリュー、自分の分の酒は自分で買えよ! 明日、出発するぞ!」


 ペートリューは部屋の隅のベッドで毛布にくるまっていたが、唸り声ともつかぬ声で、


 「もう、買ってありまああーーー~~~す……!!」

 「マジかよ」

 フューヴァは素で驚いた。

 翌日……。


 村に預けていたフランベルツの毛長馬に跨がって、一行はスイシャールを出発した。ペートリューの馬には、相変わらず小樽が四つ括りつけられていた。


 「……なんか、暑いな……」


 フューヴァが快晴の空を見上げ、日射しに顔を手で覆った。気がつけば、夏の日射しが輝いている。

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