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第4章「ほろび」 4-4 旦那を王様に

 「いや、ま、今のままでも、立場としちゃあ従者でやんすし、仕えてるようなもんでやんしょうが……」


 「だからさ、ストラさんを王様にしてやんよ!」

 「へええ!?」

 薄緑に光を反射する美しい眼を丸くし、プランタンタンが声をあげた。

 「だ、旦那を王様に!?」


 「そうさ! そうしたら、アタシは自動的に名実ともに貴族になるだろ? 御家再興だ」


 「はあ、まあ……そうなんでやんすか?」

 「エルフにゃ、分かんねえかなあ」


 分かるような、分からないような……。プランタンタンは前歯を見せながら腕を組み、首をひねった。


 「でも、ストラの旦那がどこかの王様になるってんなら……面白いかもしれやあせんね」


 「ストラさんはあの調子だから、アタシたちがそうするんだよ!」

 「へへえ……」

 プランタンタンにも、なんとなくイメージが浮かんできた。


 「何をどうすりゃいいのかさっぱりでやんすが、延々と御金様おかねさまを稼ぐだけっちゅうのもナンでやんすし、どうにかして旦那を王様にするってんなら、ただ浮草みてえに風まかせでフラフラするより、やり甲斐があるかもしれやあせん」


 「だろ!? おまえも協力しろよ!」

 「協力すると、どうなるんで?」

 「そりゃあ……おまえ……おまえも貴族になれるぜ」

 「貴族になると、どうなるんで?」


 「領地を経営するんだもの! ただストラさんにひっついてるより、何倍も何十倍も何百倍もカネを動かせるだろ!」


 「なるほど!!」

 プランタンタンが手を打った。


 (そうすりゃあ、買うにしても兵隊で攻めるにしても、グラルンシャーンのクソジジイの牧場を手に入れられるかもしれねえでやんす!!)


 そう思うと、もう顔が緩んでくる。


 「ゲヘェッッッシッシッシッシッシシシシッシシッシ~~~~~~~!!!! さっすがフューヴァさん、いいこと教えてもらったでやんすううう~~~~~~!!!!」


 「んふ? そうかい?」

 フューヴァも、まんざら・・・・ではない。

 「はやく旦那が帰ってきやせんかねえええ~~~」

 「ただいま」

 いきなりすぐ後ろから声がして、二人が飛び上がった。


 「ストラさん! お、終わったんですか!?」

 「うん」

 「ラグンメータ卿たちは、ガニュメデを……?」

 「うん。卿は、フランベルツの総督になった」

 フューヴァが、興奮して唾をのんだ。


 (やっぱりストラさんはすげえぜ……! こ、この力を、いくら仕事とはいえ、他人ひとのために使ってやるなんて勿体ないぜ……! ストラさんのために使わなきゃ……!)


 プランタンタンも息をのんで、

 「だっ、旦那! 残りの5万トンプは……!?」

 「これ」


 道端で頑丈な革袋を無造作に差し出し、プランタンタンが受け取って中を確認する。


 ザラッ、と光り輝く大粒金貨を見てプランタンタンが笑いかけたが、そのために吸った息で、顔をしかめた。袋を顔から遠ざけて、


 「…………んんんなんでやんすかああああああああ!!!! このニオイはああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」


 金貨から、マンシューアル特有のスパイスとマンシューアル人の体臭の入り混じった臭いが漂っている。本国から直送された金に、どういうわけか臭いが染みついていた。


 「そんなに臭うか!?」

 フューヴァが袋の中を除きながら鼻をつけたが、

 「……まあ、クサイっちゃクサイけど、それほどかね」

 「フューヴァさん、この御金様おかねさまを、洗っておいておくんなせえ!」


 プランタンタンは革袋をフューヴァへ押しつけると、鼻を押さえたまま走り去った。


 「やれやれ……」



 その夜、ストラの帰還を祝ってささやかな宴が催されたが、ペートリューが一人で大量のワインを痛飲し、次の日も丸一日動けなくなってしまった。その間に、プランタンタンとストラがヴィヒヴァルンへの行き方を村人に尋ねて回った。

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