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第4章「ほろび」 3-10 決意

 「私とて、長年『フランベルツの魔王』と畏れられた存在だぞ! それを、苦労してコツコツ構築してきた魔術を事も無げにことごとく打ち破られて……逃げる!? 降参する!? ……死んだほうがマシだ!!」


 「ああ、そうかい」

 グレイトルが燭台の火に、不敵な笑みを浮かべた。

 覚悟は決まった。


 グレイトルが、選帝侯地方伯フランベルツ卿の部屋へ向かう。ただでさえ神経の細い妻は気絶するように寝こんでしまい、地方伯は怒りと不安の入り混じった感情が抑えられず、ここ数日はただグレイトルを怒鳴りつけるだけだった。


 「……脱出だと……!!」


 怒りと憔悴と不安、帝都に戻れるという喜悦でグチャグチャになった表情で、地方伯は固まった。


 「いざという時は……です。いつでもお逃げできるよう、御準備を」

 「わ、わ、分かった。どっ、どこ・・を使えばいい……!」


 どこ・・とは、秘密の脱出路のことだ。ただでさえ内戦状態の裏門から、ノコノコ出て行くはずもない。フランベルツ城には、極一部の者だけが知る極秘脱出路が七つ、あった。


 「二番で」

 「に、二番か……二番な……」


 二番は、地下を通って近隣のナントカという村はずれの遺跡のような場所につながっているはずだった。


 「帝都へ向かう馬車は、用意してあるんだろうな!?」

 「もちろん」

 「わ……わかった。下がれ……」

 地方伯は額を押さえ、汗を拭きながらグレイトルを下がらせた。


 ねぎらいや鼓舞の一つも無く、グレイトルは我が主にして甥ながら、ほとほと愛想が尽きた気がした。


 「さあ、朝までにケリをつけるか!」

 軍議室へ戻ると、ガルスタイはいなかった。

 塔へ向かったという。

 (ゴーレムどもを操りながら、直接戦う気か……!)


 もはや城に残っている兵の半分近くが裏門での内乱に参加し、それが城全体に伝わりつつあった。せっかく参集した第四・第五要塞の兵たちも、後方が内乱を避けて裏門に入らず再び街に逃げ出し始めた。そうなると前方部隊も戦っているのがバカバカしくなり、全体が蜘蛛の子を散らすように逃げ去り始めた。


 そうしていったん兵の離散の流れができると、止めようがなかった。穴の開いた袋みたいなものだ。


 グレイトルは近衛兵を含め、とにかく集められるだけの兵を集め、総攻撃に備えた。


 ガルスタイの秘術である護国の巨人たちさえいれば、どんな相手でも勝てるはずだった。


 (それが、このザマ・・・・とは……いったい、何者なのだ……その、バケモノとやらは)


 グレイトルは、城の正門前広場を見下ろせる大きなテラスへ向かった。広場に集まった兵へ、地方伯が訓示や閲兵を行う場所だった。


 向かう途中で、地響きがするのを感じた。最後のゴーレム達が起動したのだ。

 10体のフランベルツ城守護ゴーレムは、城の各所に分散して配置されている。


 平時は壁に埋まった彫像、使っているのかいないのか分からない石造りの謎の小屋、もしくは壁そのものとして偽装されているゴーレム達。それらが一斉に動き出し、城の一部を破壊しながら正門前に集まってきた。


 その正門前では、正門そのものがいきなり動き出して変形、正門を赤々と照らしていた篝火かがりび台を両肩に備えた巨大ゴーレムが出現していた。


 ストラが、鋭い視線でそのゴーレムを見上げる。


 暗闇に存在感だけが影となって立ち上がり、両肩の明かりにブロックのおもちゃのような顔が無機質に浮かび上がっている。


 と、城壁や建物を破壊し、また屋根をよじ登りながら、通常サイズのゴーレムも集まってきた。その数、三体。


 (他に六体が集結中……全兵力を集結させる気だ……けど、この狭い場所に……? 作戦意図不明)


 そして、魔力の流れを探知し、ひときわ高い主塔の最上階へ視線を移す。そこにいる敵魔術師をプラズマ攻撃すれば、一発でカタがつくだろう。しかし、


 (シンバルベリル反応に強い感。規模は推定でタッソの約150倍、ギュムンデの山岳エルフの約40分の1……誘爆による破壊規模は、推定瞬間最大3000度の高温、爆轟効果は半径12キロ、影響範囲は半径40キロ。ラグンメータ・ピアーダ軍及び一般市民を巻きこむ……)


 やはり、これまでと同じ方法でゴーレムを全機行動不能にし、その後、作戦通りガルスタイを放置して、ラグンメータ達に任せる他は無い。

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