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第4章「ほろび」 3-9 混乱の城内

 だが、空からの攻撃には、それを想定しておらず、無防備であった。


 (対空兵器、対空防壁共に確認できず。なお、原始的弓兵力による対空部隊は考慮せず。降下開始)


 天から舞い降りる死の天使のように、光子剣アンセルムの残像を軌跡にして、ストラが音もなく城の正門前広場に降り立つ。


 「な……なんだ!?」

 「光だ!!」

 「女だ、女戦士が光の先にいるぞ!!」

 「いや……光の剣だ……!!」


 城門の警備兵が、夜空に軌跡を残す一条の光線を凝視し、その真下に立つストラに瞠目した。そして、恐れおののいて遠巻きにストラへ槍をつきつける。


 みな、その穂先が、震えていた。


 空から降りてきたという事実と、その光る剣が今までゴーレムと戦い、全て打倒した光線の正体だという確証に、全員の顔に恐怖が貼りついている。誰も一言も発せず、篝火かがりび台で松明の爆ぜる音だけがした。


 そこに、街中より野戦の物音や声が聴こえてくる。兵士達の恐怖が頂点に達した。敵軍が、このバケモノを先陣にし、ついに総攻撃を仕掛けてきたのだ。


 「…………!!」

 兵達が、息も止まってストラを凝視した。


 そして、無表情で一点を見つめるストラが一歩、前に出だけで、それをきっかけに兵士達、ガシャガシャと槍を打ち捨て、我先に逃げ出した。


 「……こっ……コラァ! 貴様ら! どこへい……!」


 部隊長が叫んだ瞬間、ストラの対人プラズマ弾がその胸部を板金鎧ごと撃ち抜いた。超特殊炭素繊維の防弾チョッキや、特殊炭素合金重装甲兵の装甲板も余裕で撃ちぬく威力だ。鉄の板金など、紙にも等しい。


 衝撃でぶっ飛び、胸の半分が砕け散って血と肉骨片をぶちまけながら転がる部隊長を見やって、兵士達、恐慌状態となった。


 その恐怖はたちまち城全体に伝播し、これから籠城戦だというのに、続々と城の裏門から兵士が脱出し始める。


 ところが、その裏門では集結してきた第四・第五城壁要塞の兵士達でごった返していたものだから、メチャクチャな混乱を引き起こした。


 「出せ、どけろ!」

 「逃げるんだ!」

 「なんだ!? 参集じゃねえのか!?」

 「どけっつってんだろ!!」

 「脱走か!! 貴様ら!!」

 「参集命令の灯台が見えないのか!?」

 「魔法の石巨人をぶっ殺したバケモノが来たんだ!!」

 「そんなヤツがこの世にいるか!」

 「いいからどけろ! 殺すぞ!」

 「戻れ、戻れ!!」

 「ここは通さんぞ!」

 「ぶっ殺して通れ!! 逃げるんだ!!」

 等と押し合いへし合い、ついには武器を抜いて同士討ちが始まったのである。

 こうなればもう、内乱だ。


 その騒ぎにグレイトル、

 「何が起こっている!」

 「城の裏手で、脱走兵と参集兵が戦っております!!」

 流石のグレイトルも、目の前が真っ暗となって、ガックリと机に手をついた。


 そこに、

 「将軍! 地方伯閣下がお呼びです!」

 「…………!!」

 「将軍!」

 「うるさい! 後で行く!」

 兵士が飛び上がって驚き、

 「ハ、ハハッッ!!」

 あわてて下がった。

 ガルスタイが、聴いたことも無いような重い息をついた。


 「グレイトルよ」

 「なんだ」

 「降伏するのなら、今だぞ」

 「分かっとる」

 「するのか?」

 「しない」

 「そうか……」


 「おまえは降伏しろ。そして、新しいフランベルツに尽くしてくれ」

 「断る」

 「では、今のうちに脱出を……」

 「それも断る」

 「どうして……」

 「魔術師としての……沽券にかかわる」


 ガルスタイは、ダン、と未だ濃い青を保つシンバルベリルのついた杖で、床を突いた。

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