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第4章「ほろび」 3-6 出撃

 「よし……」

 と、迎えの兵士が来た。

 「時間です」

 「分かりました」


 ストラが立ち上がり、夜襲を気取られぬようにして配置している最低限の数の松明の合間を、司令部へ向かって歩く。


 「ストラ様が参られました」


 テントに声がかけられ、中から幹部達が現れる。みな、疲れているが戦意昂揚していた。


 「頼んだぞ、ストラ!!」

 ラグンメータが代表して声をかけた。

 「代金の分は、必ず」

 「では、行け!」

 ラグンメータの命令で、ストラがその場から音もなく暗がりに消えた。


 「我らも密かに出陣の準備を! ストラが石の巨人どもを全て破壊したら、夜襲だ!」


 鬨の声でも上がりそうな場面だったが、皆それは心の中で行い、静かに動き出した。

 


 忍者もかくや・・・という動きで闇を進んだストラ、ガニュメデに近づく。かつては完全に城壁に囲まれた城砦都市だったが、今はところどころ三分の一ほどしか残っていない。それを防衛要塞として活用している。その数、ちょうど五基。


 市街は既に要塞を超えて拡張されているため、戦いはガニュメデ郊外の市街地で行われていた。


 城壁要塞間の隙間を埋めるように、彫像としてゴーレム達が街の通りの各所に佇んでいた。


 その数、四体ずつ五か所に総勢で20。ストラは一瞬で飛んで行けるが、あえて探査しながら走って近づき、市内全域の魔力子マギコリノの微かな流れをつかんだ。


 (城壁守護部隊の他にも、市内各所にもう20……そして城内に10……総勢、50。そのうち、城を護る一体は全長18メートルほどの特大サイズ。……局地拠点防衛兵器と認定)


 それらを全て同時にコントロールするのだとしたら、ガルスタイという魔術師、ただ者ではない。高濃度シンバルベリルを所持するだけはある。


 ストラは正面ではなく、ガニュメデの西側へ回りこんだ。

 城壁の要塞と要塞の合間の市街地を、一人で駆けて行く。


 一人だろうと、ガルスタイの防衛魔術は確実に敵をとらえ、ゴーレム達が眼を覚ました。


 (外部から大量の魔力子マギコリノの導入を確認……やはり、外部供給方式……)


 紐のように大量の魔力がフランベルツ城から流れ出て、ゴーレムの背中にランドセルのように設置されている四角い大きな石材に直結した。


 見つけた。

 (レセプターは、背部に共通……)


 ゴーレム達は、漆黒の中を一斉に音を立てて歩きだし、石畳を踏みしめて進んだ。


 まだ逃げ後れている市民がおり、家の中で震えている。


 (強度的に、対戦車プラズマ弾ならば余裕で破壊可能……しかし、近接する一般市民に被害が及ぶ可能性が96%……)


 で、あれば物理的超絶パワーで叩き壊す・・・・他は無い。

 石の巨人がドシドシと小走りになり、通りを走って地面が揺れる。


 それだけで歩兵などは怖じ気づき、蜘蛛の子を散らすようにして逃げ出すが、ストラは走る速度を上げた。もはや人間の速度ではない。時速100キロを超えた。そのまま、超高速行動ハイ・マニューバへ突入すると思われたが、一部まだ市民の残る周辺建物への影響を鑑み、通常行動範囲内で攻撃する。


 だがゴーレムとしては、それでもあまりの速さに混乱して動きを止めた。

 そこへ、ストラが大ジャンプで飛びかかる。

 同時に、光子剣アンセルムで横一文字に居合!!

 ゴーレムの反応速度では、対処できぬ。

 光子振動がきらめき、夜の闇を裂いた。


 巨大な割石と煉瓦で作られた頭部の鼻から上がスッパリと切断され、ストラが重力制御で背後上空に回りこむや、体操選手めいて身体をひねって体勢を整えて空中に急停止。剣を左手に持ち替え、背中の魔力子受容体マギコリノ・レセプターめがけて、重力突進をかけながら右拳を一気に振りつけた。


 バグァ!! 複雑な紋様の彫刻された背中の石材が砕け、まさに動力を断たれた巨大ロボが機能停止するのと全く同じで、前のめりに崩れたゴーレムが地面へ片膝をつき、その姿勢のまま動きを止めた。


 (稼働完全停止を確認……魔力子マギコリノの供給遮断を確認……再起動の可能性の皆無を確認……)


 そうなれば、もう話は早い。


 真っ暗闇を切り裂いて光子剣アンセルムが線を描き、ストラが地面を走り、空中を舞ってゴーレムどもに襲いかかる。


 その速度と急激な方向転換に、鈍重なゴーレムでは成す術がなかった。

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