第4章「ほろび」 3-3 10万トンプ
「……!!」
一瞬、唖然とし、
「そそ、そっそ、そ、そんなものを、その魔術師は杖の先にくっつけて、今までのうのうと生活していたのですか!? しかも、領主の城で!?」
サンタールに詰め寄られ、ピアーダがたじろいだ。
「い、いやしかし、落としたり叩いたりで爆発するものではないと聞いている……!」
「本当ですか!?」
ラグンメータも、助け舟を出す。
「そう簡単に爆発しないというのは、本当だ。我が藩王家にも、一つや二つはあるはずだ」
「エエッ……!?」
サンタールは絶句した。
「だが、あの石巨人を破壊するほどの攻撃魔法を食らったら……どうなるか分からない……と。そういうことだな? ストラ」
「そういうことです」
一同が、重い息をつく。判断は、ラグンメータがする。
「分かった。魔術師の相手は我々がする。ピアーダ将軍とシュベール卿の情報では、ガルスタイなる魔術師の専門は、ああいう石巨人のような無生物に仮の命を吹き込む魔術で、直に戦うのは本領ではないとのこと。よもや、自殺行為以外に、前には出てこないだろう。ストラは、石巨人だけを相手してくれ」
「わかりました」
そして間髪入れずストラ、
「では、報酬の件ですが」
「分かった。月額範囲内を超えた任務だ。追加で2万。どうだ」
「…………」
「3万だ」
「…………」
「3万5千」
ストラが、チラッとプランタンタンを見た。
すかさずプランタンタン、片手を開いた。
「10万トンプで引き受けます」
「10万ンン!?!?」
と、声が上がるのと、
「ゲヒィイッッシシッ……!」
笑いかけたプランタンタンが両手で口を押えるのと、同時だった。
シュベールだけが、肩をすくめて感嘆する。
(こんなところで、10万を回収するとは……さすがストラさん)
ラグンメータは、思わず天井を仰いだ。
そのまま、こちらもチラッとピアーダを見やる。
ピアーダがものすごく渋い表情で、小さくうなずいた。
「分かった……。10万、払おう」
ほとんどため息のような声で、そう答えた。
無言で、プランタンタンが何度もガッツポーズ。
「では、前払いで5万、成功報酬で5万、よろしくお願いします。また報酬は金貨貨幣の他に、金額が相当する物品でもよろしいです」
「好きにしろ……」
「それから、私どもはこの戦いが終わったら、次の土地へ移ります」
「えっ」
ラグンメータが顔をあげた。
「そ、そうかね……」
正直に、安堵が表情に出ている。
「作戦は、前払費用を受け取ったら直ちに開始します。フューヴァ」
「……あ、は、はい」
「契約を」
「分かりました」
ラグンメータも手を上げ、兵士がフルトス紙を用意した。
「いやはやああ~~~~~しっかし、10万とはふっかけやんしたねええ~~~~さっすが、ストラの旦那でやんすうううう~~~~~」
契約を終え、陣地内に用意されたテントへ向かう途中、プランタンタンが感心しきって、放心したようにつぶやいた。その後、思い出したように、
「……イッシッシシッシッシッシッシッシシ……ヒヒッーシシーッシッシッシッシッシシシィイイイ……!!」
と、延々と歯の隙間から息を出して笑いだす。
ペートリューは酒さえ飲めればなんでもいいので、
「おっさけーおっさけーじゅうまんトンプでいっくら買えるっかなあー~」
などと小声でブツブツ歌っているだけだが、フューヴァは考えこみ、
「ストラさん……」




