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第4章「ほろび」 2-3 円盤

 唖然とするフューヴァの後ろで、プランタンタン、


 「まっ、魔法の鳥でやんす! あの鳥に、隊商の列を見張らせようって寸法で!!」


 「トリぃ!? ……ア、アタシにゃ、でっかい皿に見えたぜ」

 「ペートリューさん、い、今のは、いってえなんでや……!」


 二人が振り返ると、ペートリューはその手の水筒も落としそうになって……いや、自身も落ちそうなほど揺れながら、馬上で居眠りをしていた。


 「……やっぱり、ペートリューさんが一番の大物でやんす」

 「そうかもな……」

 


 この、四つのテトラパウケナティス構造体分離方式疑似物質構成臨時警戒・攻撃用自律型ドローンを、以降便宜上単に「円盤」と呼称する。


 円盤はすぐさま光学迷彩を発動して空に溶けるや、時速数百キロで散らばった。


 これで、スラブライエン~ガニュメデ間約160キロを、40キロずつカバーするつもりだった。もっとも今現在でまだ第一隊から九隊までしか出立していないので、全長で80キロほどだったが。


 本格的に同プログラムを発動すれば、もっと「それっぽい」メカを構築することも可能だったが、臨時だし、ストラはそういうメカデザインは苦手(興味ない)ので、空力学的及び戦闘形状的に効率の良さそうな円盤状にした。


 ガニュメデ方面から、単に円盤1~円盤4と仮定する。

 その円盤2が、さっそく三次元探査で敵を感知。


 まばらに木々の生えている藪と林の中で、20人ほどの大規模武装集団が、第三隊商の中ほどを進む食料満載の馬車に狙いを定め、じわじわと包囲を狭めていた。


 すぐさま、ストラにデータが飛ぶ。

 (武装及び風体より、敵兵ではなく野盗と認定。排除)

 円盤2が、音も無く降下。

 地上30メートルより、容赦なく高エネルギー粒を弾丸として射出する。


 どこから発射しているというでもなく、強いて云えば空間中のエネルギー焦点からほとばしり出ている。


 キラッ、と光がきらめいたと思ったら賊共は身体のどこかを撃ち抜かれ、一撃で絶命した。


 合計23人を人知れず皆殺しにするのにかかった時間は、四秒だった。

 その夜……。

 ストラたちは、丘の上で野営をしていた。


 プランタンタンとフューヴァは、ストラが特別なタンチ魔法で隊商を見張っていると信じこみ、それはまかせてこの仕事が終わったらどこへ行くかという話に夢中になった。糧食の堅パンとハムを火で炙ってかじりながら、


 「稼げるったら、やっぱりヴィヒヴァルンかねえ」

 「そりゅあいいでやんす。向こうにゃ、遺跡がたくさんあるっちゅう話でやんす」

 「イセキ? イセキなんか行って、どうすんだよ」


 「知らないんでやんすかああ~~~? 大昔の遺跡にやあ、金銀財宝のお宝が眠ってるんでやんすよおおおお~~~ッッシッシッシシシッシ~……!」


 薄緑に光る眼が細くなり、前歯の隙間から息を漏らす下卑た笑いが夜の闇に響いた。


 「ホントかよ……」

 フューヴァがカップで水代わりのワインを傾けて、眉をひそめた。

 「それに、あっしはマンシューアルの食いもんは、もう二度と御免で」

 プランタンタンが、笑みから一転、これも眉をひそめて首を振る。

 「はあ……なるほどな」


 エルフには、あの強烈な香辛料スパイスは毒なのだろう。そう思って、フューヴァは納得した。


 「ペートリューさん、ペートリューさん」


 固形物を一切摂らず、まるで何かの修行のように延々と水筒をチビチビやっているペートリュー、話しかけられても気がつかず、焚火をただ見つめ、自動的に酒を飲んでいた。


 「ペートリューさん!」

 プランタンタンが細い手を伸ばし、ペートリューを揺さぶった。

 「……えっ、な、なにか?」

 フューヴァは、数日ぶりにペートリューの声を聴いた気がした。


 「ペートリューさんは、マンシューアルの酒とヴィヒヴァルンやホルストンの酒と、どっちが飲みてえでやんすか?」


 「そりゃあ、ヴィヒヴァルンかな」


 てっきり「飲めるんならどっちでもいい」と答えると思っていたフューヴァ、珍しくペートリューが明確な意思を表示したので驚いた。

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