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第4章「ほろび」 2-2 テトラパウケナティス構造体分離方式

 三人はいつまでも歩きでストラに追随するのは難しいと判断し、この行程の中で乗馬の練習をしていた。


 と云っても、戦馬ではなく、荷馬だ。


 それでもプランタンタンは小柄な体格に合う馬が仔馬しかなく、フューヴァの後ろに乗っている。ペートリューは、馬の尻のほうに酒樽を括りつけている前の部分に乗っていた。三人とも最初はかなり難儀したが、三日も乗るとかなり慣れた。


 というわけで、現在、時間的にピアーダがガニュメデに到着する三日ほど前だった。


 つい先日、街道の途中で、ピアーダ軍を追うラグンメータ隊を見送った。

 補給隊は、その後ろを進んでいる。


 が、進行速度は、やはり遅い。護衛の兵士もいるが、一隊につき10人いるかいないかだ。


 「このひょろ長い隊列を、ぜんぶ、ストラさんに護れっていうのか!?」


 丘の上から、街道の端から端まで伸びる行列を見やって、フューヴァが叫んだ。軍事にはド素人のフューヴァも、その無謀さ加減はなんとなく分かった。


 「ナニ考えてやがんだ!?」


 「旦那と手を切るのに、わざとできねえ仕事を押しつけたのかもしれねえでやんす……」


 フューヴァが息をのんで、後ろのプランタンタンを見やる。


 「わざと失敗させて!? そこまでするか!? だって……補給隊が襲われたら、困るのはアイツラだろ!?」


 「まあまあ、落ち着いて、フューヴァさん」

 「おまえは落ち着きすぎなんだよ」

 「ペートリューさんを見習いなせえ」


 ペートリューは少し離れたところで明後日のほうを向き、晴天の青い空を見上げながら目を細め、水筒を傾けている。


 「アイツの、ナニを見習うんだよ」

 まあ、云っておいてなんだが、確かに……とプランタンタンも苦笑。

 そこで、肝心のストラへ自然に目が行く。


 ストラは馬上からスラブライエン方面と、その向こうの低い連山、そしてさらに向こうのマンシューアル方面へ眼をやっているように見えた。


 「……ナニか、作戦でもあるのかね。アタシにゃ、それこそ、よく分かんねえけど」


 フューヴァがつぶやいた。


 「いや、あっしにやあ分かるでやんす。ありゃあ、得意のタンチ魔法で。既に、隊商を襲ってやろうっちゅうふてえヤツバラを探してるんでさあ」


 「おまえ、意味わかって云ってる?」

 だが、それはその通りだった。


 (スラブライエンでは、まだ第10隊及び11隊が出発準備中……補給部隊の総延長は、今現在で推定約80km……広域三次元探査の範囲約40kmの倍。どうする……)


 補給部隊は、全体がひたすら一直線というより、数隊ずつ中隊を構成して進み、その中隊の長さが、つかず離れずで小隊が進んで約数キロもある。馬車と馬と徒歩であり、しかも軍属という名の民間人なのでこのような大規模隊列を組んだ経験がなく、簡単に伸びてしまう上に、伸びた分後方では渋滞まで起こす。そうすると、どんどん進行が遅くなってまた伸びる。


 そんな中隊と中隊の合間が、数日おきに出発しているので十数キロほど離れている。


 その全体を、護らなくてはならない。

 方法はある。


 早期警戒機と同じく、ストラ自身が上空を飛び回って常時探査するのが手っ取り早い。


 だが、敵襲があった場合、そこからストラが要撃機を兼ねることになる。

 複数かつ同時に攻撃された場合、一人では防衛しきれない可能性がある。

 もう一つ。


 潜伏行動モードではプログラム使用許可ギリギリだが、テトラパウケナティス構造体分離方式により疑似物質を構成、臨時自律式警戒及び防衛機体を製作しその任に当たらせる。


 それは、我々で云う全自動索敵・攻撃ドローンだった。


 (高度防衛任務受諾につき、潜伏待機行動モードをレベル1より2に移行……自己判断プログラム……一時的許可。行動期限は、これより地球時間で72時間。テトラパウケナティス構造体分離承認。行動開始します)


 いきなり、ストラからギュウウンとか、ビュウゥンという振動音がしたので、プランタンタンとフューヴァがビックリして目を丸くした。


 一瞬、ストラの頭上に直径1メートルほどもある、お盆を合わせたような銀灰色の円盤状の物体が四つ出現し、眼にも止まらぬ速度で飛んで行った。


 「なん、なんだ……!?」

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