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第4章「ほろび」 2-1 地味な任務

 加えて迫撃砲を乱れ撃ちにしたかのごとく、榴弾めいた爆発が次々にマンシューアル軍を襲う。


 ガルスタイが、城の塔の上から多重炎弾魔法を撃ちまくっていた。ゴーレム軍団の操作に膨大な魔力を使っているため、軍団を焼き尽くすほどの炎や稲妻を使用することはできない。また、それでは市民や味方を巻きこむ。ガルスタイの戦法は、あくまでゴーレム軍団による物理攻撃だ。が、兵士を動揺させ、また何十人かをふっとばすには充分すぎる。


 炎と衝撃波にまかれ、人間や馬……あるいはその残骸が、面白いように舞った。


 攻勢一転、先陣に甚大な被害が出た。

 「クソ、魔法戦だ、引け引け!」

 たまらず、ラグンメータはそう命令せざるを得なかった。

 「こっちの魔術師は何やってる!?」

 「こっ、後方に!!」

 「速く前に出せ!」


 しかし、マンシューアル軍にこのゴーレム軍団に対抗できるほどの魔術師はいなかったし、ピアーダ軍も同じだった。前線における魔術師など、よほどの使い手でない限り、伝達魔法による通信兵扱いなのだ。


 その「よほどの使い手」が、ガルスタイだった。

 フランベルツで、彼に勝る魔術師は一人もいなかった。

 ただ、一人を除いて……。


 合流したピアーダ軍と共に進軍は完全に止まり、市街地の前で陣を張った。壁となったゴーレム軍団を挟んで、膠着状態となった。


 籠城戦である。

 その夜……。

 「ストラを呼び戻せ……!!」

 軍議の場、沈鬱な表情で、ラグンメータが云った。



 2

 

 そのころ、ストラは後方で補給路の確保を請け負っていた。

 プランタンタン達三人も一緒である。

 これは、ストラを遠ざけるピアーダの発案だった。


 ラグンメータからストラの話を詳細に聞いたピアーダ、自分ではストラを使い切れず、持て余すと判断した。また、ストラに恐怖も覚えた。


 「元より、得体の知れぬ流れ者……。あまり重用していると、取り返しのつかぬ事になりますぞ……!」


 ピアーダは、ラグンメータにそう進言した。

 「しかし……あいつがいないと、おそらく勝てないぞ……」


 「そのようなことは……。ですが、いますぐ放逐するのは愚策。いざという時は、使えましょう。また、契約もありましょう。ここは、適当に後方にでも回して……そうですな、敵の遊軍部隊を狩らせておきましょう」


 「まかせる」

 そう取り決めたのが、スラブライエンを出る前の日だった。

 そうして、ストラは補給部隊の安全確保という地味な任務についた。

 が、それが大正解。


 補給部隊といっても、前線が遠くなればなるほど補給が難しくなるのは、現代の戦争でも変わらない。まして、このような世界だ。荷馬車の行商に護衛の兵士が何人かつくような補給部隊など、ただでさえ物資の運搬量が少ないうえに、盗賊、山賊、敵の部隊に襲ってくれと云わんばかり。


 従って、原則この世界の戦争は、補給は現地調達……村や町からの収奪に頼る。


 敵の領内ならまだしも、自国内でそれをやるとかなり領民から恨まれるのだが、ピアーダは出撃をサボってスラブライエンで物資を溜めこんでいたので、それを行わずに済んだ。その代わり、長大な荷馬車の隊列がラグンメータ隊の後ろをノロノロとついて行くこととなった。


 野盗もそうだが、それを襲ったのがガルスタイの魔術軍団だ。


 本来であれば護衛部隊として軍を裂いて後方に送り、荷馬車を護るところだったが、ストラがいたのである。ラグンメータは気にせず、急ぐことができた。


 そして、戦いに間に合ったのだった。



 そんな隊商の群れが、第一隊から第十一隊まで五月雨さみだれ)式にスラブライエンを出発し、ガニュメデまでゾロゾロと連なっている。


 ピアーダが、カッセンルデントと示し合わせて戦争を怠り、溜めこんだ物資の全てだった。


 マンシューアルからの補給隊は、藩王が仕立てて出立させるまで、まだまだ時間がかかる。


 「こんなん、敵の兵隊でなくとも、襲い放題でやんす」


 ちょうど中間地点の、少しガニュメデ寄りにある街道を見下ろす小高い丘の上で、フランベルツの毛長馬に乗ったフューヴァの後ろからプランタンタンがつぶやいた。彼女らにすら、こんな簡単に絶好の位置を確保できる。

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