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第18章「あんやく」 2-10 ゾールンの思惑

 「敵の心当たりは?」

 「まったく御座りませぬ!」

 「攻撃の方角は? 魔力の飛んでくる方向だ」

 「西と推察いたしまする!」


 「敵の攻撃目標は? 冬の日の幻想とやらで間違いないのかい?」

 それにはムラヴィールリィが、憔悴しきった顔で、

 「間違い御座りませぬ!」


 「で、あれば敵はゾールンだ。アレを狙うのはゾールンしかいないからね」


 「しかしオネランノタル様、ゾールンだったら南から攻撃されるのでは?」


 「そこだ、リースヴィル。アイツは、偽ムーサルク事件なんか起こすようなヤツだ。搦手と陰謀が大好きな、ヒマなやつなんだ。ここから西方で、この規模の魔法攻撃を行えるような場所はどこだい?」


 「帝都と、イェブ=クィープくらいかと……」


 ムラヴィールリィが、戸惑い気にそう答えた。なぜなら、その両者が冬の日の幻想を狙う理由が全く分からないからだ。


 「じゃ、そのどっちか、もしくは両方だろう」

 「両方ですって!?」

 これはレクサーン王だ。


 「よもや、皇帝とイェブ=クィープが手を結んだと!? どうしてです!? しかも、なぜ我が国を……!?」


 「考えられることは1つだ……これは、衝撃的な話になるから、そのつもりで聴くんだ」


 オネランノタルがそう云って四ツ目でレクサーン達を見渡したので、みな緊張して強張った。


 「いいかい、これまでの調査で、皇帝とイェブ=クィープの祭祀王とやらは、ストラ氏ではこの世界を救えないと判断し、元の世界へ返そうとしていることが判明した。だから、手を組んだんだろうさ」


 「なんですと……魔王様を!!」

 レクサーンが眼をむいた。

 「どのようにして!?」


 「それは、知らないよ。問題はここからだ。ストラ氏と敵対する魔王は、伝承を信じるにあと2人と考えられる。ゾールンと、どこにいるどんなヤツかも分からない、全く未知の1人。未知の1人は想定のしようがないので置いといて……とりあえず、ゾールンが、皇帝やイェブ=クィープと手を組むか……利用していると考えたら、どうだい?」


 「げえっ!」


 思わずムラヴィールリィがそんな声を発し、半分気絶して膝から崩れ、兵士に支えられた。


 「ゾ……ゾールンめが……畏れ多くも皇帝陛下や、イェブ=クィープの斎王陛下を利用し……我が国を……自らの封を、弱めるために……!」


 「しっかりしてくれ、ムラヴィールリィ! 御主だけが冬の日の幻想を護れるのだぞ!」


 レクサーンが、泣きそうな顔で叫んだ。


 じっさい、ストラたちは王宮と冬の日の幻想を護る防御魔法に手出しはできない。チィコーザ流の独自の術式だからだ。


 だが、その流儀を、チィコーザ出身で魔術師長兼大神官だったコンポザルーン帝は、熟知している。


 また、いまの「月の塔」王家はコンポザルーン帝の兄であるイリューリ王の系統から王座を奪ったも同然だ。仇討を考えていてもおかしくない。


 「だからと云って、ゾールンめと手を組むとは……!!」

 「いえ、さすがに手を組んだというのは考えにくいです」


 リースヴィルが、ルートヴァンそっくりの美しさと厳しさをたたえた微笑みでそう云った。


 「で、あれば……」

 少し安堵しつつも、リムスカールが訪ねた。


 「狡猾なゾールンが、何らかの手で皇帝を操って利用していると考えるのが妥当でしょう」


 「何らかの手だと……!」

 レクサーンが青ざめた。


 偽ムーサルクを使い、王国をあそこまで揺さぶった相手だ。たまたま・・・・ストラたちがチィコーザを訪れていなかったら、どうなっていたか。


 「ま……まさか、またぞろ謎のエルフとやらが皇帝の側近などに化けて、陛下をたぶらかしておるとか……!?」


 レクサーンが細かく震えだした。


 「可能性はあるだろうさ。相手はあのゾールンだ。何を仕掛けてくるか分からないよ」


 「ど……どうすればよろしいので……」

 オネランノタルの言葉に、リムスカールの声も、自然と小さくなる。


 「何でもかんでも、いっぺんにはできないよ! いま代王の手配で、帝都とイェブ=クィープに間諜を使う手はずになっている。うまくゆけば、何らかの情報が入るだろう。そっちは代王に任せて、私たちは、敵の攻撃への対抗手段の具体を考えなくっちゃならない」


 「いかさま! 如何すればよろしいので?」


 「まず、敵の攻撃だが……私は、魔力の動きは分かるが、人間の魔術の詳細はよく分からない。リースヴィル、お前はどう観る? お前の言葉は代王の言葉だ!」

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