表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/1272

第3章「うらぎり」 5-7 この戦争の後

 「ようし、いっちょうやったるぜえ!」

 「マンシューアルの将軍にも、いいところ見せてやるんだ!」

 こんな調子である。また、


 「報酬は、ぜんぶ宝石らしいぞ!」

 「敵1人につきサファイア、10人でエメラルド、大将首でルビーだそうだ!」

 などと、根も葉もない噂も広がっている。


 ストラは、「ラグンメータ臨時司令官派遣ピアーダ将軍付特別任務兵」というよくわからない・・・・・・・肩書がつけられ、月10,000トンプの他にピアーダから改めて働きに合わせて報奨金が出る契約となった。


 「働きってさあ……具体的に、どんな働きだ?」


 将軍のすぐ近くを進むストラの馬の後ろを歩きながら、フューヴァがプランタンタンにつぶやいた。


 「さあ……。それも、そのうち命令が来ると思うでやんす。あっしらは、ストラの旦那の指示に従っていりゃあいいんでやんす」


 「まあ、そりゃそうだろうけど、よ……」


 そこで、ワイン樽を括りつけてある荷馬を引きながら、あいも変わらずグビグビ水筒から酒を飲んでいるペートリューをチラッと見つつ、フューヴァ、


 「あのよ、この戦争の後のことなんだけど……」


 「わかってるでやんす。仕事が終わったら……とっとと次へ行きやしょう。どうせフランベルツは負けて、ラグンメータの旦那が新しい王様だか総督だかになるんでやんしょう。そうなると、旦那は御払箱でやんす。ラグンメータの旦那の右腕として政治家をやるにしても、将軍になるにしても、暗殺やらをこなす裏の役目に着くにしても、今の値段じゃあ、高すぎると思うんで。だからって値下げもできねえし、邪魔になったストラの旦那を暗殺なんて、それこそ誰にもできねえことでやんす」


 フューヴァが、ニヤッと鼻面をしかめて笑った。


 「流石プランタンタンだぜ。そして、そうなると、狙われるのはアタシ達だ。ストラさんは、別にアタシらがどうなろうと知ったこっちゃないと思うんだ。でも、アタシは死にたくない」


 「もちのろん、あっしもでやんす。まったくもって、そういうことでさあ」

 プランタンタンが、馬上のストラの後ろ姿を見つめた。


 「云い方が悪いでやんすが、ストラの旦那はまだ何も分かってないし、何も覚えてねえ御様子。酔狂で、あっしらと一緒にいてくださってるだけでやんす。何も覚えてねえうちに、うまく動いてもらいやしょう」


 「しっかし、おめえもワルだなあ」


 「フューヴァさんに云われたくねえでやんす。ゲヒッ、シッシッシッシシシシシ……」


 プランタンタンが前歯を見せ、肩を揺らしながら歯の隙間から息を出し、いつも通りの笑みを見せる。


 「どういう意味だよコイツ」

 フューヴァもプランタンタンを小突きつつ、笑った。

 「で、云いたくねえけど、アイツ・・・なんだけど、よ……」

 フューヴァがもう一度、斜め前を歩いているペートリューを眼で指した。


 「アタシはもう、面倒見きれねえんだけど」

 「あっしなんか、最初から見てねえでやんす」

 「ハッキリ云うね」

 「こっちもハッキリ云うでやんす」

 プランタンタン、フューヴァを見上げ、


 「あっしらは、ストラの旦那が酔狂で飼ってるネズミみてえなもので。それが、ネズミ同士でチュウチュウ云い合ったところで、意味ねえでやんす」


 フューヴァが、眼を丸くして息をのんでから、吹き出した。

 「ちがいないや」

 ガニュメデまで、六日ほどで到達する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ