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第18章「あんやく」 2-9 臨時作戦指令室

 その中の一隊が一行を見るなり、

 「そこの冒険者、止まれ!」

 すぐにフローゼが、


 「ヴィヒヴァルン代王ルートヴァン陛下より派遣された、ノロマンドルの勇者フローゼ! レクサーン王に御目通り願いたい!」


 「な……なんですと!!」


 すかさず、リースヴィルがヴィヒヴァルン国章とルートヴァンの紋所、それにルートヴァンの派遣証を魔術で浮かび上がらせる。兵士たちはそれを見せられてもよく分かっていなかったが、第3騎士団「マーカル」の騎士達は、王より指令を受けていたので、


 「こ、これは、まぎれもなく……!」

 「ささ! こちらに!!」

 下馬し、一行を案内し始めた。

 「なんでえ、魔王紋じゃなくてもいいのかよ」

 自分の役割をとられたように感じたフューヴァがそう愚痴を云ったが、

 「連中は、もう魔王様の配下ですので……」

 リースヴィルが苦笑しながらそうフォローした。

 


 一行はそのまま王城に通されたが、かつての雪景色から残雪の残るなだらかな丘陵の王城内に景色が変貌しており、フューヴァやプランタンタンは、


 「こんな場所だったっけ?」

 と、周囲を見渡した。

 (そういや、あの王女さんは元気にやってんのかね……)


 フューヴァ、偽ムーサルク事件に伴う政変で一族を失った第3王子の王女アーリャンカを思い出した。ルートヴァンとレクサーンの会談で、ストラの発案により命だけは助かり、チィコーザのどこぞの大神殿で、政変により亡くなった人々を慰め、世界の安寧を大魔神メシャルナーに祈る日々を送っているはずだった。


 もっとも、この世界は霊をあまり・・・信じないため、死者に敬意を払う文化がほぼ・・無く、どういう祈りの生活を送っているのかは、想像もつかない。


 一行は王宮内の暖かい中広間に通され、最高級の茶や菓子でもてなされていると、


 「レクサーン陛下の御成り!」

 という使用人の声が届いた。

 が、スッと席を立ったのはフローゼとリースヴィルだけだった。

 「ああ、ああ! そのまま! みなさん、そのまま!」


 少しやつれたように見えるレクサーンが部屋に入るや手を振りながらそう叫び、まっすぐストラの前にひざまずいた。


 「魔王様! ようこそ、再びチィコーザの地に!!」

 「うん」

 「さっそく、現状の説明を!」

 「いいよ」

 「地図を持て!!」


 どやどや・・・・と軍人や役人が山のような資料を運び入れ、中広間がたちまち作戦指令室と化した。


 プランタンタンら3人が、「こりゃたまらん」と、こっそり部屋を抜け出した。そこらの使用人にフューヴァ、


 「なあ、従者の休める部屋に案内してくれよ。たぶん、しばらく滞在するわ」

 「畏まりまして御座りまする」


 「おっと、間違っても貴賓室とかは簡便だぜ! 前にいたところでもいいや。どこだったっけ?」


 「なんか、あっちのほうの建物だった気がしやす」

 プランタンタンが窓の外を見やってそう云い、

 「畏まりました、こちらへどうぞ」

 使用人が3人を案内した。


 臨時作戦指令室では、超極秘のチィコーザ全図を前に、作戦総参謀のリムスカール伯爵が宮廷魔術師長ムラヴィールリィを伴って説明を開始。


 「6日ほど前に御座りまする! 王宮目掛け、突如として凄まじい魔力の干渉術が行使され、代々王都と王宮を護る防御魔法が最大規模で反応いたしました! 攻撃は当初3日3晩続きましたが、耐えきるといったん止み、昨日、それ以来の攻撃が! しかしそれも耐えきりまして御座りまする! しかしながら、我が国は兵の侵略は何度も撃退してきましたが、この規模の魔術の攻撃は有史以来初めての経験で……最初の攻撃の最中、魔術王国たるヴィヒヴァルンと魔王様に救援を!」


 「以後、オネランノタルとリースヴィルがこちらの魔術作戦参謀となります。私とルートヴァン代王の総代理です」


 ストラがぶっきらぼうにそう云い、

 「ハハァーッ!!」

 チィコーザ側の全員が最敬礼で答えた。

 「じゃ、いろいろ聞きたいことがあるよ!」


 さっそく漆黒のローブ姿より素顔を曝したオネランノタル、初めてその魔族の姿を見やる人々の響動どよめきをうけ、地図の上に浮いた。

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