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第18章「あんやく」 2-1 皇帝と斎王の対話

 2


 コンポザルーン帝の放った伝達の密林ワシは、元より魔法の鳥なので不眠不休で高度を西へ向かった。地面に下りると背の高さが子供ほどもある巨鳥で、翼を広げると3メートルを超す。魔物であればもっと巨大なバケモノ鳥がいるが、これは魔法の鳥ながら実際に南部密林に棲息している。もっぱら、密林のサルを襲うと云われているが、時には現地人の子供も襲われるという。


 およそ5日で、冠のような飾り羽を持った白頭のワシは、イェブ=クィープに到着した。


 イェブ=クィープでも、一度も地上に降りずに飛び続け、やがて西の端の海沿いに至った。


 聖地イアナバである。

 このとき、まだホーランコル達はイアナバにいた。


 いろいろな調べ物をできる範囲で済ませ、温泉で休みつつルートヴァンの指示を待っていた。


 昼過ぎ、大型の密林ワシは神祇庁の上で大きく旋回し、イアナバの上空を飛び続けた。偶然それを見た者は、


 「随分でかい鳥が迷いこんできたなあ」

 「もしや、吉兆ではないか……?」

 などと噂しあい、鳥を見て拝んだ。

 ワシは、飛びながら強力な魔術でタケマ=マキラ斎王に連絡を取っていた。

 午餐ののち、簡易な祭祀を終えたマキラは、その連絡に気づいた。

 「?」

 建物から上空を見やり、

 「なんと……!?」


 伝達というからてっきりカラスか何かだと思っていたので、怪鳥が神祇庁の上空を飛んでいたことに仰天する。


 (こ……皇帝の伝達ともなると、あんな派手な鳥になるのか……?)


 眉をひそめつつ、あまりに目立つのでとにかく魔力で合図を送って御殿の庭に下ろした。


 いきなり降り立った怪鳥に何人かの使用人がギョッとして身をすくめたが、廊下より斎王が現れ、履き物をはいて庭に降りたので平伏して下がる。


 マキラが目を白黒させて巨大な鳥に近づき、さすがに廊下から女官が、

 「へ……陛下、危のう御座る……」

 恐る恐る声をかける。

 「よい。帝都からの伝達じゃ」


 ワシが飾り羽を揺らして鋭い目つきをマキラに向け、巨大で鋭い嘴をカチカチと鳴らした。


 とたん、

 「マキラ斎王よ、久しいな。余の声を覚えておるか?」

 ワシからコンポザルーン帝の声がし、マキラも驚いた。

 「皇帝陛下!!」

 斎王がワシの前に正座で礼をし、

 「皆の者、下がれ!」


 鋭い声を発したので、使用人から女官から、慌てて駆けつけた警護の武官までもいっせいに下がった。マキラは流暢な帝都語で、


 「皇帝陛下、人払いがすみまして御座ります」

 「すまんな……」

 疲れた掠れ声で皇帝が答え、

 「しかし、念のため、以後は魔力通話とする。余の魔力に波長を合わせい」

 「畏まって候」


 マキラが皇帝の魔力通話に自身の魔力を合わせ、これ以降は、巨大なワシの前にマキラが正座し、ワシをただ見つめているような格好となった。


 なお、今後は、伝達魔法無しでも斎王と皇帝は魔力通話が可能となる。


 「マキラよ……余はもう長くない。よもや、明日明後日に死にはしまいが……いつどうなってもおかしくない。次の皇帝は、御主だ、よいな」


 「ハッ……仰せのままに。しかし、選帝侯会議は如何致しまする?」

 「いま、西方に選帝侯は何家あったか?」


 「かつては4家ほど御座いましたが、没落あるいは断絶で、この百年は1家も無いはず」


 「選帝侯の資格も失われたか……」

 「いかさま」


 「東方でも、何家残っているのか、調べるところから始まるだろう。余の即位の時ですら、7家か8家だったか覚えておらん。その後、50年のあいだに、何家か選帝侯の資格を失っているはずだ。皇帝府にとって選帝侯など飾りなので、ようわからん。勝手に売り買いする輩もおる始末だ。新たに任命するにしても……諸侯の調整は必須」


 「選帝侯会議は、無視してもよろしいのでは?」


 「それよ。話が早い。流石、イェブ=クィープ斎王よ。平時ならいざ知らず、いまは有事……選帝侯会議を後回しにした例は、数多あまたある」


 「はい」

 「有事と云えば……斎王よ、異次元魔王をどう見る」

 「異次元魔王では、とうていタケマ=ミヅカ様の後継は務まりますまい」

 「それよ!!」

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