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第3章「うらぎり」 5-6 洗濯魔法

 「いま、湯を沸かしますんで……」

 家人がそう云ったが、ストラ、

 「水でいい」


 そう云って、たっぷりと冷たい井戸水を湛えた大きい桶に指を入れ、ちょっと熱線を放っただけで、一瞬で適温になった。


 「いやはや、旦那の魔法は、ホントに便利でやんす」

 「オラッ、ペートリュー、溺れたくなかったら起きろ!」


 服を脱がしながらフューヴァがそう云うが、ペートリューはまったく起きなかった。


 「ストラさん、コイツ、起こしてくださいよ!」


 ストラがペートリューの頭に指をつけて覚醒波をぶちこむついでに、疑似ナノマシンにより血中残留メタノール及びアセドアルデヒドを強制分解した。


 「う、うう、うー……」

 ようやく、ペートリューの意識が戻ってきた。

 「あ、あれっ……なんで、ハダカ……?」

 「風呂に入るんだよ、バカ! てめえで洗え!」

 フューヴァが桶で湯を汲み、ペートリューにぶっかけた。

 「あっっっつぅい!!」


 それほど熱くはないのだが、沸かしたて・・・・・であるのと、ペートリューは滅多に風呂に入らないため、ビックリして黄色い声を発したのだ。


 それからフューヴァがタオルと石鹸を投げつけ、プランタンタンの洗濯へ加わる。


 シャッキリしたペートリュー、何を思ったか、勃然として身体を洗い始めた。髪も洗い、ザバザバと湯をかぶってさっぱりする。


 「ぜんぜん汚れが落ちねえでやんす」


 滅茶苦茶にペートリューの衣服を洗っていたプランタンタンとフューヴァ、下着やワンピースめいた衣服の上から羽織る魔法使いの職能ローブが全く綺麗にならないのに、衝撃を受けた。


 「何年、洗わなかったらこうなるんだよ!」

 洗濯水はとっくに真っ黒だったが、それでも手洗いでは限界がある。


 と、ストラが横から水浸しのローブを手に取り、一気に高分子振動をかけた。ストラにとっては未知の動物性体毛組織による毛織物であったが、素材強度を推定計算し、これ以上、崩れない程度に汚れを落とす。ついでに石鹸水成分も落とし、水分も弾き飛ばして、クリーニング後の状態にした。もちろん、毛織特有の縮み現象も発生させない。


 「…………!?」

 フューヴァが目を丸くする。

 「……洗濯魔法・・・・なんてえのも、あるんでやんすか?」


 袖と裾を折ったままのプランタンタンが、ずっとぼけた声を出した。綺麗になったローブを見やり、フューヴァ、


 「でも……裾はもう、ボロボロですね」

 そこは、ペートリューがどこかで修復か調達するしかない。

 「ついでに、こっちは洗うのをやめて買ったほうが早えでやんす」


 プランタンタンはローブ以外の衣服の洗濯を放棄し、大きなタオルで身体や長い髪を拭いているペートリューを見た。


 「ペートリューさん、すぐ適当に見繕って買ってきやすから、しばらく待っておくんなせえ」


 そのまま、行ってしまう。

 それに気づいたペートリュー、

 「……え、服、ないんですか?」

 


 三日後。

 フランベルツ攻略軍の先陣として、ピアーダ将軍が進軍した。

 「敵はガニュメデにあり!!」


 兵士達は噂や雰囲気から察していたが、いざ将軍からそう訓示されると、奮い立った。一兵卒にとって、フランベルツ家への忠誠がどうとかは一切関係ない。衣食住が保証され、金さえもらえればなんでもいいのだ。

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