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第18章「あんやく」 1-10 急報

 ちょうど窓から見えるストラが、やおら北を向いていることに気づいた。

 (……北から、悪い知らせが来るでやんす)

 そう思い、出発の身支度を始めた。

 「おい、昼メシ食いに……」


 昼食の迎えに来たフューヴァがそれを見やり、表情かおを引き締めた

 「ストラさんか?」

 「たぶん、北に行くでやんす。オネランやフローゼの旦那は?」

 「知らねえ。城にはいねえと思う」


 「あっしらには、どうせ探せねえでやんす。せめてペートリューさんだけでも……」


 「あたしがどうかしましたか?」


 珍しくあまり飲んでいないペートリューが、フューヴァの後ろから2人に声をかけた。


 驚いてふり返ったフューヴァ、ニヤッと笑い、

 「…ったく、お前もすっかり予言者だな!」

 「え? なんでです?」

 「いいから、出発の準備しろよ! ストラさんが出るぜ!」

 「……!」

 ペートリューもあわてて自室に戻り、持って行けない酒をまとめ飲み・・・・・し始めた。



 「陛下、陛下!」


 内政に関する会議中のルートヴァンに、外交担当の政務官が緊急伝達を伴って現れた。


 緊急伝は、会議の中断をしても咎められない。

 「どうした!」


 ルートヴァンがそう云い、内務大臣や政務官、執行官ら高級役人も緊張の面持ちとなった。


 「チ、チィコーザ王国のレクサーン王からです!」

 「レクサーン殿から!?」


 もう何百年も犬猿の仲だったヴィヒヴァルンとチィコーザが、同盟を結ぶに至った経緯は第12章に記してある。


 「しょ、詳細はこちらを!」


 政務官が手で合図すると、無言でT字の止まり木を掲げ持った使用人が部屋に入り、直立不動となる。止まり木には、伝達のカラスが止まっていた。


 伝達カラスには、新王自らがルートヴァンにあてた親書代わりの録音機能のような魔法がかかっているのが、その場にいる魔術師の全員が分かった。ルートヴァンがその基本魔術の封を解くや、


 「ルートヴァン殿! レクサーンに御座る! 一大事にて、イジゲン魔王様の御助けを! ふっ、冬の日の幻想が何者かの強力な干渉を受け……防御結界が破壊されそうにて! これが破壊されると、ゾールンの神殿が蘇ると思われまする! もしやもすると、ゾールンがチィコーザの地に戻ってくるやも……!!」


 「なんだってえ!?」

 思わずルートヴァンがそう叫び、席から立った。

 (冬の日の幻想が……!?)


 と思ったが、話に聴いているだけで、ルートヴァンも実物を見たわけではない。チィコーザで実物を見たのは、ストラだけだ。


 (ゾールンめが、南方の奥地から干渉を!? い、いやしかし……ゾールンが直接干渉できるのなら、偽ムーサルクなどという面倒な手を使わずとも良かったはず……!!)


 つまり、ゾールンに味方する帝国内の何者かの仕業の可能性が高いということになる。


 (いったい、誰が……!!)

 しかし、いまそれが分かろうはずもない。

 「へ、陛下、如何なさります!?」

 誰かがそう声をかけ、ルートヴァンが我に返った。


 「ゾ、ゾールンがらみとなれば、無視はできまい。誰かを派遣せねばならんが……」


 正直、いまルートヴァンが動くのは不可能だ。ヴィヒヴァルンの全てが止まる。


 (おのれ、この機を狙って動くとは……こちらの内情も分かっているもの・・の仕業か……!)


 ルートヴァンが奥歯を噛んだ。


 (おり悪く、マーラル殿も帝都だ! オネランノタル殿か、フローゼを向かわせるほかあるまいが……手に負えるか……!?)


 ルートヴァンが判断を迫られていると、

 「私が行きます」

 会議室の全員が声のほうを向くと、ストラが立っていた。

 「聖下……!!」


 すぐさまストラを向いた全員が席を立ち、深々と礼をする。礼をしたままルートヴァンが、


 「聖下御自ら御出陣なさり、盟友チィコーザを御救いくださるとあれば、レクサーン殿を含めチィコーザの民もますます聖下への御帰依が深まりましょう!! 願わくば、よろしく御願い申し上げ奉りたく……!」


 「いいよ」

 そこでルートヴァンがおもてをあげた。

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