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第18章「あんやく」 1-3 どう使うか

 「いいよ」


 ストラが半眼無表情でそう云ったので、ルートヴァンが安堵し、表情をゆるめた。


 とたん、ストラが非戦闘域待機行動中原住民支配モードに移行。

 「ヴィヒヴァルン代王ルートヴァン8世よ」

 「…ッあ、ハハァ!!」


 ルートヴァンが思わず席を蹴って直立不動になったので、シラールを含めてほかの王国幹部もそれに続いた。


 「私の立場を明確にしておく。それを踏まえ、私をどう使う・・かは、そのほうらの勝手次第とする」


 「ハ……!」

 ストラが無表情を極めて淡々と云い放ち、ルートヴァンが、ドッと汗をかいた。


 「私がこの世界に現れたのは、偶然か必然か定かではない。必然だとすれば、まさに世界の意思か、神の意思だと思われる。私がこの世界でなすべき第一のことは、この世界へ到達する際に失われたエネルギー……力の回復である。そのためには何でもする。魔王を倒すのは、倒す際に敵の魔王の持つ力を奪えるからである。それ以外に、私が・・魔王を倒す理由はない。また、神聖帝国皇帝やそのほかの勢力が、私をこの世界にそぐわない者とし、正確に・・・元の世界に戻すというのであれば、否やは無い。しかし、また異なる世界に転移させるというのであれば、意味がないので拒否し、抵抗する。それらを踏まえ、私を使って、この世界を天文学的な災害より救いたいというのであれば、力の回復を妨げないことを条件に拒否はしない。好きに使って見せよ。以上だ」


 「…………!!」


 ルートヴァンとシラールが言葉を失い、固まった。2人がそうなのだから、ほかの王国幹部も凍りついていた。


 オネランノタルが満足げに四ツ目を細め、鮫牙の口を上弦の三日月形にして微笑んだ。リースヴィルは無表情でルートヴァンを見つめ、フローゼも楽しそうにニヤニヤしてルートヴァンやシラールを見やった。マーラルも不敵に表情をゆがめ、ルートヴァンの御手並み拝見といったふうだ。


 部屋の隅でプランタンタンが、

 「何を云ってるのか、さっぱりでやんす」


 そう、ささやいた。ペートリューはむしろ興奮してヴィヒヴァルンの酒蔵から持ってきた高級ワインをラッパ飲みにして、


 「世界を救うのも滅ぼすのも、私たちがストラさんをどう使うか・・・・・ってことだそうですよ!」


 「へえ……」

 プランタンタンが前歯を見せたまま、ピスピスと小鼻を鳴らし、


 「そらそうでやんす。ストラの旦那は、はなっから自分では動かねえんで。何をするにも、あっしらが旦那をどう使うか・・・・・でやんした。てっきり、旦那は頭を打つかなにかして、そうなっているのかと思っていやあしたが……」


 「違うな」

 フューヴァが不敵に笑った。

 そしてやおら立ち上がると、まだ固まっているルートヴァンらに向かって、

 「おいおいおい、いつまで石っころみてえになってんだよ!!」

 びっくりして、ルートヴァンらがフューヴァを凝視した。


 「いいかてめえら、ストラさんはこの世界のモンじゃねえ! この世界がどうなろうと関係ねえ、知ったこっちゃねえんだ!! 当たり前だぜ! それなのに、アタシらにつきあってくれて、なおかつ自分を好きに使っていいって云ってるんだぜ! そんなありがてえことが、他にあるかってんだよ! ああ、そうだろ!?」


 「……!!」

 ルートヴァンが、眼を見開き、大きく息をのんだ。


 「だから、ルーテルさん、見事にストラさんを使いこなして……救世ってやつを、やって見せろや!!」


 ルートヴァンの全身に電撃が走り、わなわなと震えだした。

 そのままストラに向き直り、胸を拳でどんと叩いて、


 「おおお御まかせあれ、異次元魔王聖下!!!! 聖下を見事に使いこなし、我らの救世・・・・・を成し遂げて御覧に入れまする!!!!」


 「いいよ」

 元の待機モードに戻ったストラが、またぶっきらぼうにそう云った。


 「聖下の御許しが出た!! よいか、ヴィヒヴァルンの全てを懸けて、何が何でも救世を成し遂げるのだ!! 死に物狂いで、その法を確立する!! いや、してみせる!!!! そのために帝国が滅んでも構わん!! 新たな帝国を創る気概でやれ!! 古代ドルムが滅び、バーレン=リューズ神聖帝国が起きたように……新たな帝国をな!!!!」


 「畏まりまして御座りまする!!」

 シラールたちがそう答え、ヴィヒヴァルンの大方針が決定した。


 会議が終わり、意気昂揚とするルートヴァンやそれに従う王国幹部、オネランノタルやマーラル、リースヴィル達をよそに、シラールは笑顔でフローゼと話すフューヴァを見やった。

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