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第18章「あんやく」 1-2 最高救世会議

 途中まではここの管理を行っている王国最高魔術師陣が同行したが、最高結界を抜け、亜空間への入り口の前でみな止まった。


 ここから先は、直系王族とその許しを得たものしか入ることができない。シラールですら、ヴァルベゲルかルートヴァンの同行でなくば入ることができない。


 ルートヴァンが入り口を開け、ストラを運ぶオネランノタルをいざなった。


 オネランノタルが興味深げに四ツ目を動かしながらルートヴァンに続き、異次元ドアーを抜け、秘宝の間に至った。


 (これはすごい……)


 オネランノタルが、高さ3メートルほどの真紅のシンバルベリルを見上げた。床に浮かんでいるようで、微妙に結晶の一点が設置して立っているようにも見える。正多面体ではなく、天然結晶のようにゴツゴツしていた。巨大なルビーの原石のようにも見え、また、血の色の水晶のようにも見えた。


 その結晶の中に瞑想状態で映りこんでいるのは、年のころ30前後の青年だ。


 ルートヴァンが1歳になるかならないかという頃の、王太子フィデリオスである。


 「父上」

 ルートヴァンが、真紅の結晶を見上げてフィデリオスに語りかけた。

 「其の御方が、異次元魔王様か」


 フィデリオスは滅多に言葉を発しなかったが、ごくたまに話をした。ルートヴァンにとってはヴァルベゲルが亡くなったとき以来だったが、そもそもここを訪れたのもそれ以来だった。


 「はい、父上。聖下はバーレにて影の魔王を打ち倒し、いま7日ほどの休息を得なくてはなりません。その間、ここで御休み頂こうかと……」


 「わかった。私からも魔力を供給できれば良いのだが……」


 ストラが本気を出せば、次元転換法や余剰エネルギー回収フィールドにより赤シンバルベリルの全大魔力をエネルギーとして奪うこともできるが、いまはスリープモードであるし、そもそもヴィヒヴァルンを支えるエネルギーを奪う選択肢は無い。またこの状態でフィデリオスが魔力を発しても、どうすることもできない。


 「父上は、御構いなく……では」


 オネランノタルが人形めいた半眼のストラを赤いシンバルベリルの前に横たえ……ルートヴァンに続いて秘宝の間を出た。


 シンバルベリルの内側に薄く映っている青年が、瞑想状態からうっすらとその眼を開け、横たわっているストラを見つめた。


 (この御方であれば……私を……この呪われた血の色のシンバルベリルを消滅せしめ、長きにわたるヴィヒヴァルンの……魔術師ソレムの呪いを解いてくださるだろう……)


 そう確信し、微笑みを浮かべて、再び瞑想に入った。

 


 そうして、7日ののち……。


 何事もなく過ごしていたルートヴァンが再び秘宝の間を訪れると、ストラは只管打坐めいた座禅姿の半眼瞑想で、フィデリオスの前に座りこんでいた。その後姿を、これも瞑想姿のフィデリオスが、見下ろしている。


 「聖下……」

 静謐に、ルートヴァンが語りかけた。

 「うん」

 ストラが静かに目を開け、重力を制御しているかのように立ち上がった。

 ルートヴァンが恭しく胸に手を当てて深く礼をして跪き、


 「お、畏れ乍ら聖下……我ら・・の救世について……根本から見直し、新たなる法を模索する事態となり申した……も、諸々……確認したき義が……」


 「いいよ」

 あっさりとストラがそう云い、汗だくのルートヴァンが顔をあげた。

 「で、では、こちらに……皆が待っておりまする」

 ルートヴァンがストラをいざない、2人が秘宝の間を出る。

 それを、うっすらと目を開けたフィデリオスが見送った。



 「おおっ……!」


 ルートヴァンに続いて広間に入ってきたストラに、一行やシラールらが歓声をあげた。


 いま、プランタンタン達3人、オネランノタル、フローゼ、リースヴィル、マーラルのほか、シラールと王国最高幹部が何人かいる。


 ストラを神座に座らせ、ルートヴァンが次席について、最高救世会議が開かれた。(プランタンタン達は云わばオブザーバーであり、広間の隅の椅子に控えている。)


 「まずは聖下……影の魔王を見事打ち倒されたこと、慶賀に堪えませぬ。これで残るは南部大陸の竜魔王ゾールンめと、我らの努力不足によりいまだ正体不明の魔王のみ……しかし乍ら、その……まことに……まことに申し上げにくきこと乍ら、その……ここにきて、ではありますが、その……救世の法を再確認することにあいなり……いや、致したく……聖下におかれましては……その……」


 さしものルートヴァンも、急にしどろもどろ・・・・・・になった。


 自分たちで勝手にストラを担ぎ上げ、救世と称した魔王退治で帝国をメチャクチャにしておきながら、今更その方法が間違っていたかどうかを検証するというのだから……。

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