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第17章「かげ」 4-17 自爆

 地面に下りた玄冬は爆発の中にストラを探したが、なにせ気配も魔力も霊力もないので、俄かに探せなかった。むしろ、高性能な対物レーダーか空間レーダーが必要だった。


 (どこに消えおった……!?)

 玄冬が周囲の空間にあえて波を発生させ、空間レーダーの代わりとする。

 一定の波形を崩すような存在があれば、まず間違いなくストラだろう。


 案の定、すでに玄冬の背後数メートルまで接近していたストラが、そのまま玄冬に突っこんだ。


 「舐めおって!! 身共に空間戦など!!」

 玄冬が、ふり返りざま忍者刀による空間破砕効果の乱れ突きを見舞った。


 ストラがそれをかわそうとしたが、同時に放たれた時間遅延効果がストラを包み、動きを封じる。


 時間の遅くなったストラに、高速で20発もの空間破砕刺突が襲いかかった。

 空間がねじれ歪み、それ自体が槍となって突き刺さる。

 まともにストラがそれを食らい、体が砕けて穴だらけとなった。


 刹那! そのまま閃光がほとばしって、凄まじい爆発が王都を含めた一帯を巨大な火球に巻きこんで炸裂した。


 「!!」


 瞬時に魔力バリアを展開し、ぶっ飛んだオネランノタルは、ストラが再び大規模爆破攻撃を行ったと思った。


 つまり、その規模はメガトン程度・・だった。

 いまのストラ本体が誘爆すれば、テラからペタトンクラスになる。

 まったくもって、これの比ではない。

 単純計算で、この規模の100万から1000万倍になる。


 だが、王都は城壁も含めて完全に蒸発。そのまま塵芥も残さず吹き飛び、熱線と衝撃波により一瞬にして半径数十キロが更地となった。王都の周辺に避難していた数多あまたの魔像兵も、そのまま全て砕け散って転がる。


 次元断層で自らを包んだ玄冬は、灼熱の炎の塊の真下で大地に1人で立ち、柄にもなく哄笑を発した。


 「ゲボァハハハハハハァーーッ!! 異次元魔王めが、自爆・・しおったわ!!!! ハハハハハ!! ゲヴァアアーーーーッハハハハハハああーーーーッ!!!!」


 ゆっくりと巨大なキノコ雲が成層圏まで立ち上って、暴風が荒れ狂う。


 爆風が地面を深く抉った土砂を強烈に巻き上げ、火球が天に昇ってキノコ雲の中に隠れた。この爆心地の地表温度は、未だ数千度はある。


 万歳めいて両手を掲げ、真っ黒い渦を巻く灼天に向かって哄笑をあげていた玄冬が、ピタリと笑うのを止めて両手を下ろし、仁王立ちとなった。


 異次元魔王を倒し、バーレ王朝の支配も逃れた今、玄冬が次にすることは。

 (御屋形様の真の望み・・・・をかなえるために……)

 その玄冬の次元バリアに、スッ……と何者かが侵入した。


 まるで武術の超絶的な達人めいた無我の動きで次元断層を中和しながら、何者かが玄冬の領域に侵入した。


 「……」


 元より、殺気はおろか、気配も魔力も霊力もない。さらに完全な次元ステルス性能で、超絶的に高性能で特殊な次元レーダーでなくば、その存在を確認できない。


 玄冬がストラを認識したときには、ストラが流れるような動きで、玄冬の忍び装束の胸元にマーラルの呪符を貼りつけていた。


 (なん……)

 玄冬も、瞬時に何をされた・・・・・のか、理解した。

 (……だ……とぉ……お……!?!?)


 ストラの指先が八角形の台紙より離れ、少し下がって背の高い玄冬を象嵌めいた半眼で見あげながら、ストラが光子剣アンセルムの束に手を添えた。


 先ほど爆発したのは、テトラパウケナティス構造体分離方式によるダミーだ。


 玄冬は、複数近似次元への接触を禁じられた。

 多次元同時存在体と、入れ替わる・・・・・ことができない・・・・・・・

 ストラの居合が、横一線に走った。

 文字通り、一閃による亜光速だ。

 光がほとばしり、玄冬が死に物狂いで仰け反って避けた。


 横一閃からふりかぶって追いうったストラに、玄冬が地獄の炎で眼くらましをかけた。


 一般人なら即死するような凄まじい瘴気が渦まいたが、ストラには何の効果も無い。


 仰け反ってからバック宙で一回転した玄冬がそのまま振りかぶり、炎にまじって空間破砕斬撃を放った。


 その忍者刀を、光をまとった光子剣アンセルムが受け流しつつ摺り下ろして玄冬の体勢を崩すと、瞬時に振りかぶってそのまま忍者刀を根元から叩き折った。


 「ゲェ……!!」


 魂消た玄冬が刀を打ち捨て、いつもの癖で他の次元から新しい刀のみを出そうとして出ず、あわてて至近距離から空間破砕拳の百連打をかけた。


 ストラも、この速度と数の極小空間破砕効果をいちいち相殺するプログラム的余裕はなく、陽炎を裂いて大きく空中に舞った。

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