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第17章「かげ」 4-16 ストラの弱点

 時間遅延効果が終わり、そのままストラが再び超高速斬撃を見舞う。

 苦無クナイを打った姿勢で硬直していた玄冬が一瞬遅れ、全身をナマスに切り刻まれた。

 と、ほぼ同時に8体が入れ替わり、即座に合体する。


 たまらず玄冬が下がったが、そのままストラが追い、凄まじい攻防を繰り広げつつ城壁の上から燃え盛る都市部に落ちる。


 それを何とか感知したオネランノタルが、戦いの邪魔をさせないよう、魔像兵をいっせいに市外に出した。


 それでも、戦闘に巻きこまれた魔像兵が何体も一撃で砕けて散り、ストラの攻撃の余波でスライスされた。


 (は、速すぎて魔力感知でも追い切れないぞ!)

 オネランノタルが、上空から炎に包まれる王都を見やって歯ぎしりした。


 玄冬も、予想外の結果に戸惑いを隠せなかった。なにせ、玄冬のあらゆる攻撃が通じない。その身体に、着実に拳でも蹴りでも衝撃波でも叩きこんでいるはずなのに……だ。


 (頑強すぎる!! 有り得ぬ!! 何でできて・・・いるのだ、こやつ!!!!)


 アンデッド兵器である玄冬は、基本的に自身に火器類は搭載されておらず、人間には扱えない高出力・高火力兵器を扱うことはできるが、自身が高火力な訳ではない。魔法使いでもないし、特殊能力も基本的には諜報活動に特化した次元操作のみで、火力的攻撃力はやはり同じアンデッド兵器でも主力兵器に大きく劣る。


 だが、格闘戦では次元能力を駆使し、時に主力兵器に匹敵する攻撃力を発揮した。8乗体攻撃も能力のひとつだ。


 通常攻撃では埒があかないと、玄冬が両拳と蹴りに次元をゆがめる効果を乗せる。一種の次元破砕拳とでも云えるもので、極小範囲の次元ごと物理的な破壊を生む。


 さすがに、ストラがその連打を大きく避けた。


 膨大なエネルギーを空間折り畳み効果で理論上無限小に閉じこめるテトラパウケナティス構造体は、その特性上、次元のゆがみ・・・に弱い。限界を超える空間破砕効果を浴びると構造が連鎖的に崩壊し、全エネルギーが一気に解放され、亜空間に爆散する。


 物語の冒頭で対テトラパウケナティス構造体用空間破砕兵器を食らったストラは、偶然・・この世界に引っかから・・・・・なければ・・・・、そのまま消失していたのだ。


 人の拳大の極小範囲とはいえ、まともに空間破砕効果を食らうわけにはゆかなかった。何がきっかけとなり、構造体の全崩壊につながるか分からない。


 たまたまその攻撃を試した玄冬、内心、ほくそ笑む。

 「これ・・が、貴様の弱点のようだな!!」


 ストラにかわされた玄冬の拳が、周囲の燃え盛る炎を空間ごと砕き、一種のブラックホールめいて亜空間に呑みこんだ。一瞬の効果なので、空間はすぐに元に戻ったが、歪みはしばらく残った。その歪みにすら、ストラは触れようとしなかった。


 玄冬はそれにも気づき、

 「ウオオオオオラアアア!!」

 気合と共にストラの周囲に破砕効果をばらまいた。

 それがストラを檻のように囲って、ストラの移動を封じた。


 とたん、ストラが簡易空間制御を行い、周囲の破砕痕をすべて修復、炎の海より飛びあがって大きく距離をとった。この程度の空間制御であれば、ストラの性能でも戦闘速度で行える。


 「逃さぬ!!!!」


 玄冬に飛翔能力は無く、大ジャンプから空間制御で空中にゆがみ・・・を固定させた足場を作り、そこを伝って空間を走って、見る間にストラに追いつく。ストラの超高速行動ハイ・マニューバにはとうてい敵わないが、先ほどより大範囲で時間遅延を行い、ストラの動きが鈍ったところで一気に詰め寄った。


 「もらった! 異次元魔王!!」


 玄冬が忍者刀を抜きはらい、刀身に空間破砕効果をまとわせて、ストラに切りかかった。時間遅延効果が切れる前に、ストラに接触する。


 はずだったが、既にストラの周囲にはプラズマの帯がストラを囲うように漂っていた。アンデッドの玄冬にプラズマ帯を認識する能力は無く、気づかずに刀でその帯を切りつけ、大爆発を引き起こした。


 時間遅延は空間そのものに及んでいるため、爆発も当初はゆっくり発生した。

 (いまのは……!?)


 玄冬はストラが何をやったのか分からず、逃げるのが遅れたが、なんとか爆轟が自らを襲う前に距離をとった。


 そのまま地上まで落ちるころに時間遅延が終了、王都上空で大爆発が起きた。

 (何が起きたんだい!?)


 思わず、オネランノタルがさらに下がる。いつでも魔力バリアを展開できるが、ローウェイを襲ったストラの大規模攻撃がこの距離で起きた場合、どうなるかは分からない。


 それでも、オネランノタルはストラの戦いを……魔王同士の戦闘をその四つの眼でしっかりと見たかった。観測したかった。その想いが強く、なるべく近くでストラを見つめたかった。


 爆発により王都を灰にする炎が吹き飛び、衝撃で地面が揺れた。

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