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第17章「かげ」 4-4 乾燥

 「おい、懐かしがってる場合じゃねえぞ、エルフたちはみんな無事に着いたのかよ!? 確認してくれ、リースヴィル!」


 「ハイ、ただいま行います!」

 フューヴァがテキパキと仕切りだし、ルートヴァンも安心する。

 そのままルートヴァンが、フローゼとマーラルに向かい、

 「フローゼ、よくぞ復活してくれた!」

 フローゼがなんとも云えない顔で苦笑しつつ、


 「しかし、いくら強化されても、あんなバケモノを相手にはできませんでした」

 「ゲントーは特別だ。相手にできるのは、同じ魔王や神だけだよ」

 マーラルがそう云い、ルートヴァン、

 「その聖下はどこですかな?」

 「御仲間の魔族と共に、王都へ向かったよ」

 「え、オネランノタル殿も……!?」


 ルートヴァンが驚きを隠さなかった。正直にズルイ、と思った。

 「まあまあ、お前さんには他にやることが山ほどあるだろう。諦めるんだな」

 そんなルートヴァンの思惑を察知し、マーラルがそう云った。 

 「分かっております……」

 ルートヴァンが、大きく息をつく。

 「畏れ入ります、精霊気エルフ達が、何やら申しております」


 そう云ってルートヴァンの前に現れたのは、少年姿のリン=ドンだ。

 「おまえが?」

 リン=ドンが両拳を合わせて礼をし、


 「ハイ、御初に御眼にかかります、ヴィヒヴァルン代王様。バーレ王国にて魔王様の道案内を務めておりました、リン=ドンと申します」


 「エルフたちがどうした? 逃げ遅れでもいたか?」


 「いいえ……逃げ遅れはおりませんでしたが、この森がひどく乾燥しており……まだ先ほどの天変地異が続いているのかと、恐れているようです」


 「乾燥……?」

 意外な訴えに、ルートヴァンが目を丸くした。

 「元居たところは、そんなに、湿潤な気候だったのですかな?」

 マーラルにそう尋ねたが、

 「私は、行ってすぐ戻ってきたから分からんね」

 次に、ルートヴァンはフローゼを見た。すぐにフローゼが、


 「あのエルフたちは、独特な亜空間に隠れていたけど、それほど湿度が高かったような覚えはないけど……」


 フローゼがそう云うのであれば、リースヴィルに聴いてみてもおそらく同じ答えだろう。


 「お前はどうだね、バーレの魔族なのだろう? エルフらの云っていることは、そうなのか?」


 リン=ドンがまた両袖を合わせ、


 「ハイ、確かにここは、バーレと比べても酷く乾いております。帝国の西と東では、大荒野や北方と南方の山脈を挟み、気候が異なると聞き及んでおります。バーレやイェブ=クィープ、マートゥーはもっと雨が多く、湿度も高いように思われます。じっさい、私も水妖ですので水気には敏感ですが、この森は、とても乾いております。まして雲霧エルフたちの住まっていたカーゥユンの深山幽谷は、その名の通り年がら年じゅう、常に深い霧が発生しているような森でして……」


 「なるほど、深い霧か……確かに、この森で霧など、年に何回かあるかないかだ」


 ルートヴァンがうなずいた。


 「しかし、ヴィヒヴァルンを含む東方諸国は、知っている限りどこもこんなものか、場所によってはもっと寒くて乾いているぞ。どうすればよいのだ?」


 ルートヴァンがそう云って眉をひそめた。リン=ドンが少し思案して、


 「大きな沼か湖でもあれば……私めの術で、霧を発生させることはできますが……」


 「湖な……」


 「それにくわえて、大きな谷あいでもあれば、最高にて。実は彼ら雲霧エルフの主食は、特殊なキノコのようで……それを植えつける環境を整えなければなりません」


 「なるほど……おまえさん、やる・・じゃないか」


 素直にルートヴァンがそう褒め、リン=ドンが逆に仰天した。あわてて両袖を合わせて、


 「も……もったいなき御言葉! オネランノタル様やリースヴィル様の足元にも及びませぬが、この程度はいつでも献策して御覧に」


 「フフ……なかなか、頼もしいやつを見つけたものだ。さすが聖下だ。さて、しかしそうなると……どうするかな……」


 ルートヴァンがそう云って、リン=ドンを伴って雲霧エルフたちに近づいた。


 「おい、言語調整魔法が効いていると思うが……言葉は分かるかね? 代表はどちらだ?」


 憔悴しきった雲霧エルフたちがめいめいに顔を合わせて、それから肩を支えて老エルフをルートヴァンの前に連れてきた。カーウュエ雲霧エルフの長ルォン=ルライ=イェルムである。


 「私めにて……ヴィヒヴァルンの偉大なる王におかれましては、我々を深き地獄の監獄より連れ出していただけたこと……その御慈悲に深甚の感謝を捧げ奉りまする」

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