表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1220/1264

第17章「かげ」 4-3 合魔魂

 ぶっ飛んだゴルダーイが、そのまま気絶して離脱。

 「タンファンリ!! ゲントウ!! わしを補佐せい!!」


 ロンボーンがそう云い、イヴァールガルを補佐して物理攻撃を仕掛けていた2人がロンボーンに加わって魔力攻撃に切り替えた。


 とたん、逆にイヴァールガルが神の最後の猛攻に打ち据えられた。

 (ええい……!)

 ロンボーン、仕方なく、

 「ゲントウ、己はやはりイヴァールガルを助けろ!」

 無言で、玄冬がイヴァールガルを助けに入った。

 その玄冬を一撃で古クールプールラーン神が破壊したが、すぐに入れ替わる。


 繰り返される攻撃が物凄まじく、玄冬はイヴァールガルに近づくまでに4度、打ち倒された。


 だが4回ともすぐさま多次元の玄冬が入れ替わって、破壊された肉体も元通りとなった。


 みな死闘に無我夢中で誰もその現象に気づかなかったか、気づいてもそれどころではなかったが、道士タン=ファン=リィだけはその様子をつぶさに観察していた。


 (あやつ……もしかして、死体を材料にした魔力の人形か何かなのか……?)

 アンデッドの居ない世界で、その発想はさすがであった。

 元から玄冬に興味を持ち、深く観察していたのだ。

 (しかも、無限に新品と入れ替わっている……?)

 タン道士の眼が、鈍い光をたたえた。

 「根だ、根を断ち切れ!! シンバルベリルにつながる根を切れ!!」


 マーラルが叫び、物理的、または魔力回路的に3つに割れた巨大黒水晶のような漆黒のシンバルベリルを雁字搦めにしている古クールプールラーン神の無数の根に向かって、全員がいっせいに攻撃した。


 「グあああああリィヤああああアアアアア!!!!」


 イヴァールガルが全身バラバラになりそうな衝撃に耐え、巨大剣ごと大回転ドリル吶喊で神の肉体を抉りつつ根をブチブチにからめとって切断してゆく。


 神の断末魔が、天地に轟いた。

 ロンボーンとタン道士も、それぞれの攻撃で細かい根を根こそぎ焼き捨てた。


 玄冬が5体同時出現でイヴァールガルを補佐し、断ち切り残した根を細かく寸断する。


 だが、神の力が玄冬の近接次元横断を禁じ、入れ替わりができなくなった瞬間を狙って5体とも一撃で粉砕した。


 いや……1体……本体だけが、上半身と右腕の半分をかろうじて残して、転がった。


 マーラルも次元断層攻撃を駆使し、断ち切られて蠢く根をことごとく断層ですり潰し、焼き捨てた。


 魔力の流れを断たれたクールプールラーン神の動きが、極端に鈍った。

 「タケマ=ミヅカ殿、いまだ!」


 マーラルの音頭で、黒シンバルベリルからほとばしる魔力の流れが、タケマ=ミヅカに切り替わった。


 一気に、シンバルベリルと人間の融合が始まった。

 後に合魔魂テルミルと呼ばれる秘術が、初めて行使され、そして成功した瞬間だった。


 魔力の変質と共に3つのシンバルベリルが柱のように立ち上がり、その中にタケマ=ミヅカの姿が3つの像に映りこんだ。


 タケマ=ミヅカが、新たな世界固定、世界総鎮守として古クールプールラーン神に代わって成りあがった。


 杭を打つように、3柱が次元を穿って沈みこんだ。


 同時に、最後まで3つの巨大な黒シンバルベリルを護るという役目を終えた古クールプールラーン神が、静かに土に帰った。


 全員が半ば呆然とその様子を凝視している中……タン道士が素早く地面に転がる玄冬を特殊な霊符に封印したのだった。

 


 カーウュエ雲霧エルフ達が逃げこんだマーラルによる次元トンネルの出口は、フィーデ山の灰に埋まったヴィヒヴァルン南部の大草原に隣接する、広大な低山森林地帯だった。ここも灰の被害はあったが、数十センチの灰に埋まった大草原ほどではない。


 その森林地帯で、ルートヴァンを含む宮廷魔導本部の面々や、宮廷魔導騎士が護衛と出迎えで待ち受けていた。


 「……助かったぜ、チクショウ!!」

 命からがら、フューヴァがふらつきながら大きく息をついた。

 「フューちゃん!!」

 真っ先に、ルートヴァンがフューヴァに駈け寄った。

 「生きてたか!」


 「なんだ、ルーテルさんじゃねえか! わざわざ、王様が出迎えてる暇なんかあるのかよ!?」


 フューヴァの塩対応に、ルートヴァンがむしろ懐かしそうに表情かおを緩める。

 「おい、代王! 御陰で、みな助かったよ!」

 「マーラル殿! みんなも!」


 たった数か月の別れながら、もう何年も会っていないような感慨を覚え、ルートヴァンが不覚にも涙を浮かべる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ