第17章「かげ」 4-2 激戦
その復元を、ロンボーンとゴルダーイが供給される魔力を遮断して押さえ、タン道士と玄冬がイヴァールガルを補佐して攻撃を加え続ける。
「魔力結晶を引き剥がせ!」
タケマ=ミヅカが叫び、マーラルが黒シンバルベリルの物理的な遮断を試みる。
それを繰り返し、すでに9度目の挑戦だった。
みな、満身創痍だ。
これで失敗したら、世界は滅ぶ。
最後のチャンスであった。
だが、古クールプールラーン神も、最初に比べるともう7~8割がたの力を失い、復元力も格段に落ちていた。動きも覿面に鈍い。
(行ける!)
全員が確信した。
タケマ=ミヅカの直掩であるブーランジュウが魔剣リューゼンを振りかざし、無数の触手を打ち払いつつ、3つの黒シンバルベリルに接近するタケマ=ミヅカを助ける。
タケマ=ミヅカが、巨大な黒シンバルベリルにこれまでで最接近した。
クールプールラーン神が、吠えた。
「押さえろ! 行ける! 行けるぞ押さえろ!!」
マーラルが叫び、クールプールラーン神の肉体に食いこんでいるイヴァールガルが滅茶苦茶に暴れた。しかし、クールプールラーン神が強力にシンバルベリルから魔力を吸い出し、時間でも戻しているかのごとく身体を復元させた。
「こやつ……どこに、こんな……!」
ロンボーンが焦る。ロンボーンは精神体がもう持たず、次元の裏に隠れている銅鐸のような本体が現れる寸前だった。とにかく魔力を集め、神の魔力回路を遮断する。
「うううう……!!」
魔力は強いが、肉体はまだ少女のゴルダーイが、自分の魔力に押しつぶされそうになった。
「ゴルダーイ、無理をするでない!」
ロンボーンが叫ぶが、
(こんな状況で、無理するなも何もないか……!)
そう思って、皆それぞれの判断に任せる。
「うわあああああーーーーーッ!!」
ゴルダーイの天の眼が数百も出現し、クールプールラーン神に突き刺さった。
とたん、充血したゴルダーイの右目が破裂した。
「ギァッ!!」
血を振りまいて、ゴルダーイがひっくり返った。
「ゴルダ……!」
ロンボーンに一気に負担が来て、精神体が吹き飛んだ。
どうしようもなく、銅鐸が現れる。
赤シンバルベリルが輝き、銅鐸が開いて内部の赤シンバルベリルも展開した。
だが、それでも黒シンバルベリル3つ分の魔力奔流を押さえきれない。
(わ……我もここまでか……!?)
銅鐸姿のロンボーン、流石に諦めかける。
そこに、右目を失ったゴルダーイがガバリと起き上がり、鬼みたいな表情で復活した。
2人で、さらに猛悪的なまでの魔力を押さえた。
その隙に、ひたすら空間を遮断して巨大な3つの黒シンバルベリルを完全にクールプールラーン神より引き剥がしたマーラル、
「いまぞ!!」
タケマ=ミヅカが、ついに黒シンバルベリルとの合体に入った。後に合魔魂と呼ばれるものだ。
クールプールラーン神が、ありったけの魔力と触手を無防備のタケマ=ミヅカに向けた。
「ぬあああああ!!」
ブーランジュウがその前に立ち塞がる。
一撃で爆発四散した。
だが、攻撃を相殺した。
ブーランジュウの首が、ゴルダーイの近くに飛んで転がった。
「ゴルダーイ! あたしのシンバルベリルを!!」
云って、ブーランジュウの頭がボロボロと砕けて消えた。
ひとつ目のように顔の中央にあった赤シンバルベリルが、ゴルダーイの足元に転がった。
ゴルダーイが咄嗟にそれを拾い、右目を失った眼窩に入れた。
「うあああああーーーーーッ!!」
ゴルダーイからとんでもない神聖魔力がほとばしり、巨大な天の眼がクールプールラーン神に咬みついて魔力を吸収した。
「ばかもの! おまえが破裂するぞ!」
銅鐸のロンボーンが叫び、ゴルダーイを無理やり吹き飛ばして止めさせた。




