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第17章「かげ」 2-13 崩壊

 「だめだ、リースヴィル、私たちじゃ、負けないにしても絶対に勝てない!」

 「それって、いつか負けるってことですよ!」


 それは、3体分の強化型玄冬と戦っているストラとオネランノタルも同じだった。


 ストラ、戦闘力が大幅にダウンしていようと、3体分ていどなら、一撃で倒せる。


 だが、やはり倒したそばから現れる。

 これなら、弱らせたままで動けなくするほうが良い。ただし、自害させないで。

 (そんな、面倒な法を使わなくてはならないとはね!)


 オネランノタルが、灼熱の巨大な刃を8つ出現させ、玄冬の周囲に固定する。玄冬は全身の周囲に空間バリアを展開させ、数センチほど浮いて刃を止めたのだが、オネランノタルが逆にそれを利用して玄冬そのものを空間ごとを固定した。


 が、玄冬の忍者刀は次元破断効果で、そんなオネランノタルの魔力の刃も紙切れがごとく切り裂いた。オネランノタルがいくら新たに魔力凝縮法で刃を作っても、次々に切り裂かれる。


 「倒してもダメ、押さえようとしてもダメだとはね!」


 「オネランノタル、とにかく時間を稼いで。また、敵の活動限界が来ると思われます」


 云いながら玄冬の斬撃、連続蹴り、肘打ちなどを全て避けた後に反撃で左の回し蹴りを入れたストラ、その蹴りを左腕で受け流した玄冬がカウンターで放った右の斬撃をさらにカウンターで受け、そのまま玄冬の右手首を掴みながら捻り投げた。


 並の敵なら右の手首が捻じりきられるところ、玄冬が自ら回転してその捻りを中和、そのまま地面に転がった。


 そこにオネランノタルが魔力凝縮法で物質化した檻をかぶせたが、玄冬が刀を振るい、超音波で切ったかのようにきれいに切断した。


 「厄介ってもんじゃあないよ、コイツ!」


 その時、停まっていた電車が急に動いたような衝撃があり、世界がガクンと揺れた。


 「警告! 私の空間固定処理速度を超えて、敵が本亜空間ごと移動を再開! 私たちごとエルフの拉致を試みる模様です」


 「チィッ!」

 オネランノタルが、余裕で佇む3体分の玄冬を睨みつけて舌を打った。


 「時間を稼げばいいのは、こいつも同じか! 本気の戦闘じゃないから、活動時間が伸びているのかい!?」


 「その可能性はあります」

 (どうする……こんな敵は初めてだ……!)

 ルートヴァンの知恵を借りたい。オネランノタル、素直にそう思った。

 そこにストラが、


 「空間固定が妨害された以上、そこに力を使う必要はありません。敵の活動時間限界まで飽和攻撃を敢行します。オネランノタルはフローゼ達と合流し、私の攻撃余波からみなを護ってください」


 「了解した!」

 もう、魔王同士の死闘にフェーズが移行する。

 そうなれば、オネランノタルといえど、その死闘に加わる余地は無い。

 3体分の合体玄冬に、凶悪的なプラズマ弾が炸裂した。


 玄冬が木端微塵に蒸発し、地面を抉って大爆発が起きると同時に、ストラの真後ろに次の玄冬が出現するが、その玄冬にも正確にプラズマ弾が直撃。同様に消失と同時にまた出現する。


 それが、ストロボ効果で残像が点滅するような猛烈な速度で繰り返された。

 数秒で数十回もの大爆発がおき、隠し里の亜空間が軋みをあげた。

 「どうなってるの!?」

 フローゼが頭を抱えて叫んだ。


 オネランノタルとリースヴィルで、リン=ドンとエルフ達ごと大魔力障壁を展開していたが、あまりの猛攻に押しこまれた。オネランノタルが血相を変えて、


 「リースヴィル、もっと魔力を重ねろ!」

 「やってます!」

 「リン=ドン、おまえもだ! 死にたくなくば、気合を入れろ!」

 「か……畏まりました!!」


 現在のストラの総エネルギー量であれば、数兆回から数十兆回もこれを繰り返し、当該次元に隣接する数時限の事象の地平線を崩壊させ、玄冬の出現を阻止できるだろう。


 だが、そんなことでこれまで溜めたエネルギーをすべて消費するのは非推奨だ。

 また、当該世界にどのような影響があるかも予測できない。

 そもそも、随行員を保護できない。

 さらに爆発が続き、ついに玄冬の活動限界より先に隠し里が崩壊した。


 この隠し里は巧妙に隠されてはいたが、亜空間的にはほんの少し位相がずれているだけで、ほぼ元の世界と重なり合っている世界だった。そのズレは、普通に歩いていても、うっかり迷いこむような神隠しが発生する程度の薄さである。


 次元の割れる音と虹色の次元光が炸裂し、一行がカーウュン山脈の奥深くに投げ出された。時間もよく分からなかったが、とにかく昼間だった。


 亜空間自体が崩壊し、隠し里そのものに空間移動をかけていた玄冬も8体全てが集合した。


 そこに、ストラがさらに容赦なく攻撃を加える。

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