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第17章「かげ」 2-10 急襲

 その小屋の屋根の上では、ルートヴァンからの通話を待っていたオネランノタルが、リースヴィルを呼んでいた。


 「昨夜、これから無楽仙人と会うという連絡ののち、急に通じなくなった。呼びかけても出ないということではなく、呼びかけができなくなった。この通話術は、代王の術だから私はよく分からん。原因は何だと思う?」


 「原因……」


 目を丸くし、リースヴィルが息を飲んだ。リースヴィルとしても、呼びかけ自体ができないというのは想定外だ。


 「ちょっと、私も陛下に呼びかけてみます」

 「やってみてくれ」

 「ハイ」


 だが、いくら呼びかけようとしても、魔力通話のチャンネル自体がつながらない。我々の携帯電話で云うところの、大規模な電波障害か「おかけになった番号は、電波の届かないところに……」という状態だ。


 「???」

 意味が分からず、リースヴィルが固まった。


 「ここが亜空間だとしても、昨日は届いていたのに、いま届かない理由が分からないんだ」


 「まさか、陛下の御身になにか……」

 「まだ無楽仙人のところにいて、そこには魔力が届かないとか?」

 「いや、そんなことは無いはずなんですが……」


 「そうだよな、代王に教えてもらった限りでは、個人の間で通話用の魔力の波長を合わせてしまいさえすれば、亜空間と云えど、よほどに元世界と離れた所に移行しない限り……」


 そこで、オネランノタルがギョッと四ツ目を見開いた。リースヴィルも、アッという表情かおになる。


 「おい、まさか、ここ・・が……? それとも代王が影の魔王に襲われたか?」


 「分かりません。しかし、陛下に何かあった場合、我々にはどうしようもありません! ここは、この場所に異常が起きてる可能性のほうを疑いましょう!」


 「だね!」

 オネランノタルが屋根の上から宙に舞い、 

 「ストラ氏! ストラ氏!」

 そのままストラを探した。

 「ストラ氏はいないのかい!?」


 小屋に入って、オネランノタルが甲高い声を張り上げた。すっかり出発する準簿を整えていたプランタンタン達を見やってオネランノタル、


 「3人とも、どうしたんだ? ストラ氏はどこだ?」


 「気がついたらストラさんがいねえ! 嫌な予感がするぜ、オネランノタル! いつでも逃げられるようにと思ってよ!」


 「クックヒヒッヒヒ……いい勘働きだ! フューヴァ、念のため、雲霧エルフたちにも声をかけてくれ!」


 「それは、とっくにかけてるぜ!」

 「云うことないじゃないか!」

 「フローゼとリン=ドンはどうした!?」

 「いま探す!」


 オネランノタルが小屋を飛び出て、

 「リースヴィル!」

 「ここに!」

 リースヴィルも屋根から飛び降りて、オネランノタルの前に控えた。

 「フローゼとリン=ドンを探せ! 私は引き続きストラ氏を探す!」

 「畏まりました!」


 その時、オネランノタルとリースヴィルを含め、プランタンタン達、そして雲霧エルフたちも、全身に悪寒が走って震えあがった。


 同時に、地震というより空間自体が揺れる空間震がこの隠し里を襲った。空中に浮いているオネランノタルですら、揺れによろめいて地面に叩きつけられた。


 エルフたちの小屋が崩れ、地盤ごと大木が倒れた。

 その揺れがピタリと収まり……気がつけばストラが近くに立っていた。

 「ストラ氏……これは……!?」

 オネランノタルが、地面から起き上がってそう云った。


 「フローゼとリン=ドンには、雲霧エルフたちの誘導を頼んでいます。リースヴィル、プランタンタン達を御願い。オネランノタルは、私と一緒に例の敵の迎撃を御願いします」


 「やはり、影の魔王がここ・・を……!」

 「来ます」


 云うが、虹色の次元光が輝き、空間が切り裂かれて地獄のアンデッド忍者が飛び出てきた。


 ただし、1体だった。


 焼けたコークスめいた真っ赤な両目が揺らめき、まっすぐ玄冬がオネランノタルを襲った。

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