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第17章「かげ」 2-5 霊雲芝

 リースヴィルが前に出て、


 「こちらが異次元魔王ストラ様、その配下の魔族オネランノタル様、戦士フローゼ様、従者のプランタンタンさん、ペートリューさん、フューヴァさん、こちらでの道案内のリン=ドン殿、私が魔術師のリースヴィルです」


 「貴方は……」

 雲霧エルフたちが、フードを外したプランタンタンを見やって驚いた。

 プランタンタンも珍し気に雲霧エルフたちを見つめていたが、


 「へえっ、あっしは、ケチなゲーデル牧場エルフのプランタンタンでやんす!」


 「ゲーデル……初めて御聞きする……」

 「そうでしょう。みなさん、ゲーデル山脈なんか知らないでしょうし」

 リースヴィルがそう云った。

 「ま……とにかく、まずはこちらへ、魔王様」

 ルォン=ルライ=イェルムが一行をいざない、歩き出した。

 


 そこ・・は、オッサンこと元魔王無楽仙人マーラルの浅深度亜空間と同様の異世界だったが、マーラルの無何有むかうの里よりはるかに巧妙に隠されていた。これをなんの手がかりも無く発見するのは、奇跡的な偶然が必要だろう。


 一行は長の家に案内され、応接室のような場所に通された。偶然にもバレゲル森林エルフたちと同じような家の作りで、バンガローめいた高床の木組みの家に履き物を脱いであがり、床板に直に座った。座布団の代わりの敷物も、雲霧エルフたちの貫頭衣と同じく、硬そうな木の皮の繊維を編みこんで作られていた。


 ストラを中心に一行が座り、簡単なもてなしの膳が出された。


 「……あ、我らは、この3人しかものを食べなくとも大丈夫ですので、御気遣いなく」


 リースヴィルがそう云ったので、ルォン=ルライ=イェルムが指図をし、膳はプランタンタン達3人の前にのみ出された。


 が、それがまた不思議な料理? が並んでおり……正直にフューヴァが眉をひそめた。


 「え、これ、食えるの?」

 小声で隣のプランタンタンにそう云ったが、プランタンタンも、

 「さあでやんす」


 3つの木皿に乗っているのは、得体のしれない真っ白いウネウネした硬く細いもので、我々で云うと揚げハルサメか揚げビーフンに似ている。


 それの生のもの、ゆでたもの、炒めたもののように見受けられた。


 これはキノコ類の一種で、雲霧エルフたちの主食であった。見た目に反して大変に栄養、滋養があり、雲霧エルフは多少の川魚や木の実のほかは、ほぼこれだけを食べて生きている。バーレでもごくたまに出回る深山幽谷の激レア食材兼薬草で、エルフの肉ほどではないが、とても高価に取引されている。バーレ王室でも時おり食べられているが、これほどの量は無い。


 名を、霊雲芝リャムという。

 ちなみに味付けもほぼなく、岩塩が少しかかっているだけだった。

 おそるおそる手に取り、1本を口にしてみたフューヴァ、

 「……うまい」


 歯ごたえがあり、ボリボリという触感でかじったが、うまみというか、食べたことのない滋味があふれ出て口じゅうに広がり、フューヴァは驚いた。


 「ホントだ、うめえでやんす。こいつあ、なんともかんとも、えも云われねえうまさで。こんな珍しくてうめえものは、初めて食いやあした」


 貪るようにプランタンタンも霊雲芝リャムを鷲掴みにして食べだし、珍しくペートリューまで水筒を傾けつつそれを口にした。


 しかも、食べるとハラで膨れて、やけに満腹になった。

 そんな3人とは別に、


 「で、あんたたちは魔王様に帰依し、なにを願うんだい? ここから、どこか遠くへ行きたいということでいいの?」


 オネランノタルがそう云い、数人の幹部と座って一行に対峙しているルォン=ルライ=イェルムが、


 「左様に御座りまする。こことて、いつ王国の者どもに見つかるか……話では、東方ではエルフと人とは同等の扱いをされるとか」


 「人さらいはどこにでもいるから、完全に安全というわけでもないけど、少なくとも人を殺すのとエルフを殺すのは同罪ですよ」


 リースヴィルがそう云って、雲霧エルフたちの表情かおが明るくなった。

 「それだけで充分すぎまする。ここでは、我らは獲物・・にて」

 それも、比喩ではなく本当に狩猟や捕獲の対象なのだからシャレにならない。

 「どうするね? ストラ氏」

 「ルーテルさんに頼みましょう」

 ストラがボソリとそう云い、


 「では、ヴィヒヴァルンに?」

 「はい」

 「どうやろうか? あの次元トンネルを伸ばすかい?」

 「できますか?」

 ストラにそう云われ、雲霧エルフたちが顔を見合わせた。

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