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第17章「かげ」 2-3 次元トンネル

 フューヴァなどは慣れたもので、寝転がっている。ペートリューは物珍しい風景を肴に、いつも通り水筒を傾けて止まない。


 進んでいるうちに日が沈み、真っ暗となった。空は厚く雲が垂れこみ、雪も舞ってきたので、深山の上は完全に闇となった。


 が、ストラを筆頭にリン=ドン、オネランノタル、リースヴィルと、空中を移動している面々はみな闇を見通せるので、特に問題はない。ゴンドラの中ではプランタンタンが座ったまま転寝うたたねをし、フューヴァとペートリューは爆睡していた。フローゼだけが、闇の中で進行方向を含む周囲に気を配っている。空中といえど、あの地獄の忍者が空間を超えていつやって来るか……想像もつかない。


 例の伝達のカササギが一行を先導し、そのため速度は鳥が飛ぶほどである。

 とはいえ。魔法の鳥なので生き物より速度は速いし休みもしない。

 5時間も進み、深夜半ころには、漆黒の深山の中の瀑布に到達した。

 「魔王様、あれ・・のようです!」

 リン=ドンがそう云い、闇を指さした。

 「行ってみましょう」

 鵲に続いてストラが降下をはじめ、一行も急激に高度を下げる。

 「着いたみたい! みんな起きて!」


 フローゼが3人を起こし、プランタンタンとフューヴァはすぐに目を覚ましたが、ペートリューは微動だにしなかった。


 「ペートリュー! ちょっと、起きて!」


 いちおうフローゼが二度、呼びかけたが、ペートリューのことを理解しており、三度目は無い。もちろんプランタンタンとフューヴァも無視だ。


 そのうち闇の中に着地し、魔力ゴンドラが解除された。ペートリューが冷たい雪交じりの地面に転がって、それでもまだ寝こけていた。


 この中で、フューヴァだけが真っ暗闇の中でドウドウという滝の音のみを聴いていたが、その他のメンバーは全て闇の中にハッキリと思っていたより大きな滝を見あげていた。


 「高さ120メートル、幅15メートル」


 ストラがボソボソと云っていると、闇の中をヒタヒタと一行に近づく者たちがいた。


 闇の中で感覚を研ぎ澄ましたフューヴァがそれに気づいたのは、流石だった。


 地面に転がっているペートリューは別にして、プランタンタンを含むフューヴァ以外の者は、その3人のエルフを見やった。


 「……魔王様で?」


 老年の1人のエルフが、滝音にかき消されそうなほど小さな声でそう云った。みな言語調整魔法により、異様なほどの地方語を話すこの幻のエルフたちの言葉も分かった。


 「こちらが、異次元魔王聖下である」

 リースヴィルが前に出て、エルフたちにストラを紹介した。

 ハッと息を飲む音がし、エルフたちがその場でストラに跪いた。


 「わ、我らはカーウュエ雲霧エルフに御座りまする。このたびは……急な願いを御聞きくださり、感謝の極み……!!」


 「うん」

 ストラがそう云ったきり黙りこんだので、オネランノタルが、


 「魔王様は、余計な口はいっさいきかない。以後は、私オネランノタルか、こちらの魔術師リースヴィルを通すんだ。あと、配下の戦士フローゼ、案内役のリン=ドン、魔王様の従者にして側近のフューヴァ、プランタンタン、ペートリューだ」


 雲霧エルフたちが顔を上げ、その金色の眼を目まぐるしく動かして全員を認識した。


 「そ、そちらの従者殿は……御気分でも御悪いので?」

 ひっくり返っているペートリューに眼をやり、雲霧エルフがそう云ったので、


 「なんでもねえ、気にしないでくれ。……オラッ、ペートリュー起きやがれ! 出発だぞ!」


 闇の中でフューヴァがペートリューを正確に蹴飛ばし、唸りながらペートリューが何とか起きあがった。


 そこでリースヴィルが2人のために間接照明程度の照明魔法を出し、足元を照らした。複雑に折れ曲がった木の根を跨いで進み、岩だらけの河川敷より半洞窟のようになっている岩場を通って、大量の水が落ちる滝の裏に入った。


 雲霧エルフの1人が彼ら独自のエルフ語で何やら呪文を唱えると、濡れつくした岩肌にぽっかりと灰色が渦巻く穴が出現した。


 (かなり独特な理論による次元トンネル……制御法は不明。意外に安定している……)


 ストラが一瞬でサーチした。

 「どうぞ、こちらに」

 雲霧エルフが先導し、トンネルに入った。

 「……なかなか立派な回廊じゃないか」

 オネランノタルが感心して、トンネル内を見渡した。

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