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第17章「かげ」 1-13 屠城

 フローゼに届いた矢も、フローゼが刀を振りかざして叩き落とした。

 「……なんというヤツだ!」

 軍司令官も魂消たまげて眼をむいた。


 兵が万単位でいれば、人海で無理やり押しつぶす手もあったが、4500ではおそらくあの円陣を突破するのは無理だろう。


 (かと云って、魔王の本隊はあれの100倍はある……! こやつすら勝てないのに、本隊を相手にするのは無理だ……!)


 やる前から分かりきっていたことを、司令官は痛感した。


 (やはり城を出るべきではなかった! が、あの軍監め……ここで引いては、王にどのような報告をするか知れたものではない……!!)


 司令官が奥歯を噛み、

 「槍の隙間を突破せよ! 騎馬は前に出よ! 数で押せ!!」

 槍に怯んでいた騎馬が奮起し、いっせいに突っこんだ。

 それを機にフローゼ、


 「外周は散会、自由に敵を打ち倒せ!」

 たちまち外側の円陣が崩れ、ホバー走行で騎馬に向かった。

 魔像兵は騎馬の突進を避けながら、正確に馬上の兵を突き殺した。


 その戦闘の合間をぬって、内側の円陣に一部の騎馬と大量の兵が蟻のように迫った。


 「内側も散会、自由戦闘に移行!」

 フローゼの命により、二重円陣の内側も散会して、それらの兵を迎え撃った。


 フローゼは単身無防備になった……かに見えたが、フローゼ自身がそもそも一騎当千の強者つわものである。


 「魔王軍の隊長を討ち取れ!!」


 誰かが叫び、竜に乗るフローゼに兵や騎馬が群がったが、親衛隊めいて常に数体の魔像兵が張りつき、文字通り蹴散らした。


 それが、とにかく強い。

 オネランノタルではないが、パワーと防御力だけで本当に20人前であった。


 槍をふるえば馬ごと打倒したし、雑兵など横薙ぎの一発で数人を再起不能にした。


 それらをなんとかかいくぐり、フローゼに肉薄しても殺人的な竜の蹴りで数メートルもぶっ飛んで絶命した。


 気がつけば、1時間もしないうちに4500の兵は1000以下になっていた。

 魔像兵の損失はゼロだった。

 損耗の速度が速すぎて、軍司令官は完全に撤退の機を逸していた。

 本当に、気がつけば……といった感じだった。


 (こ……こんなことが……!?)

 遅かれながら、

 「ひ、引け、引……!」

 三方から魔像兵の槍に貫かれ、司令官が戦死。


 誰が撤退命令を出したというわけでもなく、兵士たちが雪崩を打って退却し始めた。


 「追え! 皆殺しにしろ!」


 フローゼが無慈悲な命令を発し、魔像兵がホバー走行でたちまちおいつくや、容赦なく敗残兵を殺戮した。いわばロボット兵なので、命乞いも無駄だった。


 さらに、フローゼはそのまま高い版築の城壁に囲まれたハウオイの街(ハウオイ城)に向かった。バーレの戦争の常識、慣習はフローゼも知っている。魔王軍として、城内も一人残さず掃討する。


 エネルギー消費が激しいため、魔像兵は一般戦闘で火器類を使わなかったが、攻城用に数体が正面の門にめがけてヘルメットのモノアイから熱光線を発した。


 鋼鉄版で補強された正門が、たちまち赤くなって爆発。爆煙をさいて魔像兵が城内に侵入した。


 そのまま、通りを疾走しながら200体がそこら中に熱線を叩きつける。短時間照射ながら木造の家屋が瞬く間に燃え上って、街中が火に包まれた。慌てふためいて通りに出てきた市民を、魔像兵が容赦なく突き殺した。数匹のスズメバチは数万のミツバチを数時間で壊滅せしめるが、この場合はそれ以上だ。


 2キロほど離れた本街道よりその黒煙を見やって、ストラ、

 「オネランノタル、火砲支援をしてください」

 「キィッヒヒヒ……合点だ」


 オネランノタルが魔力を直接操作し、数発の特大火球ファイア・ボールを長距離で撃ちつける。光の塊が白煙と風切り音を発してまっすぐに飛び、街の上空で直角に折れ曲がって次々に着弾した。


 まさにドローンかミサイル兵器の着弾と同様に爆音が平野に轟き、城壁内に火柱と黒煙があがった。


 「もっとやるかい?」


 「あんなものでしょう。フローゼには、適当なところできりあげるように伝達してください」


 「了解だよ」

 フローゼは魔力通話ができないので、伝達魔法のカラスが高速で飛んだ。

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