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第17章「かげ」 1-4 最後の戦い

 「ゾールンも、恐らくそんな感じなんだろうな……というのは、次元を制御する力を得た私はうっすらと思っていた。が、現実にそのもの・・・・が目の前に現れられてはね……驚いたよ。分身や分体ではない。複数の本物の・・・ゲントーが何人もいて、みな記憶や思考も同一の同じ個体だという。倒しても倒してもすぐ入れ替わるし、無敵……いや、不死不倒だ」


 「そんなことが!?」


 「ズルってもんじゃないよ。しかも、あれだけ強いゾールンもそうだとしたら!? 無限に現れてくるんだ。その全てを倒すなんて、不可能だよ」


 「むう……」

 ルートヴァンがそう唸ったまま、無言となった。

 マーラルが話を続けた。


 「……我々がゾールンに挑んだ時、仲間は8人だった。タケマ=ミヅカ殿、イヴァールガル、ロンボーン、ゴルダーイ、ブーランジュウ、ゲントー、私、そしてタン=ファン=リィだ」


 「ブーランジュウというのは、初めて聞く名です!」


 「魔族だよ。当時の、相当に強力な。真っ赤なシンバルベリルを持っていたよ。準魔王級でも、現在の基準だとかなり魔王に近い。当時としては……ま、そこまでではないがね」


 「そのような魔族まで、タケマ=ミヅカ様の御仲間に……」

 「あんたらだって、魔族の仲間がいたじゃないか。何と云ったか……」

 「オネランノタル殿です」

 「おなじような、ヘンテコリンな魔族がいつの世もいるものさ」

 「確かに」

 ルートヴァンが笑ってしまった。


 「リューズという、敵の血や魔力を吸う強力な魔剣の使い手でね……もっとも、その剣はブーランジュウの身体の一部だったんだが」


 「リューズ……ですか」


 「バーレン=リューズ神聖帝国の名に、私が冠したんだよ。魔族の功績なんか、いつしか忘れ去られると思ってね。せめてその剣だけでもね」


 「そうでしたか……」


 「タケマ=ミヅカ殿の話によると……そのブーランジュウが、何らかの理由でゲントーを見知り……自在に次元を操る諜報員として、タケマ=ミヅカ殿に紹介した。タケマ=ミヅカ殿は、どうやってかは知らんが……そのゲントーを、洗脳というか……支配下に置いて使っていた」


 「諜報員ですか……で、では、暗殺も……」

 「お手の物さ」

 不敵な笑みで、マーラルがルートヴァンを見やった。

 「手口から見て、ヴァルベゲル王を暗殺したのは、おそらくゲントーだろうな」

 ルートヴァンが口を引き結んだ。


 「……御爺様は、同時に6回殺されたのです。身代わりのブローチが、同時に5つ破壊されておりました。そんなことが可能か? と思っておりましたが、そうとしか考えられない。し、しかし……」


 「そうだよ。ゲントーなら、6人で同時に相手を殺せる」

 「なんと……」


 「だが、そうなると……最後の戦いの後……タン道士がタケマ=ミヅカ殿よりゲントーを奪い、それをバーレでは代々引き継いで……いまでも使っているということだが……」


 「魔王にも匹敵する存在を、どうやって? それに、最後の戦いとは?」

 「どうやってかは、バーレの連中に聞かんと分からんね」

 「そうですか……」


 「最後の戦いは、な……ゾールンとの戦いのことじゃない。さっきも云ったが、ゾールンは存在自体が異常だ。我々のやり方では、絶対に倒せないんだ。8人で攻めて、それが分かった。それが収穫だ。なにか、まったく根本から異なる法でないと倒せない……それこそ、いっさいの魔力を使わない異次元魔王のような、ね」


 「ハイ……」


 「その代わり、ゾールンの封も、我々の法では破れない。それも分かった。あと、ゾールンがシンバルベリルに似た特殊な魔力結晶と、人間やエルフを融合させていた。それも収穫だ。合魔魂テルミルは、その発想から生まれた」


 「なんと……」


 「それで、だから……放っておくことにした。保留だ。いつか……いつか、ゾールンを倒す法を持った者が現れるまでね。……最後の戦いとは、それとはまったく異なる話だよ」


 「何者と戦ったんです?」

 「古クールプールラーン神だよ」

 「えッ!?」

 ルートヴァンが息を飲んだ。

 「正確には、その成れの果て・・・・・だ」

 「ですが……タケマ=ミヅカ様の話では……」


 「そうだよ。この世界に流れてきて、イェブ=クィープで神童、神の御使い、天才少女と謳われていたタケマ=ミヅカ殿へ、救世の神託を与えたという古代の神が、古クールプールラーン神だ」

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