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第16章「るてん」 6-20 エルフ狩り

 プランタンタンがフード付きローブごと姿を消したが、既に狭い路地で物を倒しながらもみくちゃだったので、フードが脱げて顔が見えた。


 「いたぞ、こっちだ!」


 プランタンタン、たまらず地面を這うようにして人々の足元を縫い、店と店の合間に逃げこんで物陰に姿を隠した。


 「どこへ行った!」

 「こいつも精霊気エルフだ!」

 何人かは東方人を見たことが無いので、フューヴァをエルフと信じきっていた。


 「そいつはちがうぞ!」

 分かっている者はそう叫んだが、

 「嘘をつけ!!」

 「騙そうったって、そうはいかねえぞ!」


 「生き胆を獲れ!!」

 「オレは腕だけでもいいぞ!」

 「あたしゃ指だけでもいい!」

 「目玉をくれ!」


 何人かが家畜をさばくような巨大な刃物を振りかざし、フューヴァをよってたかって押さえつけた。


 「止めろ!! アタシはエルフじゃねえ! 人だ!!」

 わけが分からずも、フューヴァが暴れに暴れて抵抗する。

 「腹を裂け!!」

 「大人しくさせろ!!」

 「生き胆をよこせえええ!!!!」


 空中に浮かんでいたテトラパウケナティス構造体分離方式による銀円盤が、凄まじい勢いで回転を始める。


 たちまち、軽快な音と共に軽機関銃ほどの威力のエネルギー弾を何十発も周囲にバラまいたので、人びとが血をふりまいて次々に倒れ、建物に穴が空いた。悲鳴や絶叫が飛び交い、巻き添えで死ぬ者やケガをする者も続出した。


 「チクショウ、こうなりゃヤケだ!」

 フューヴァが倒れた男から刃物を奪うと、ふり回しながら走った。

 それを、またフードをかぶった透明のプランタンタンが追った。

 「待て、待てえ!! 精霊気エルフが逃げ……!」


 プランタンタンの頭上にある円盤から放たれたエネルギー弾が、その者を打倒した。


 「魔法だ!!」

 市内で、魔法の使用は御法度だった。

 「衛兵を呼べ!」

 「人が死んだぞ!!」

 「精霊気エルフが魔法で人を殺した!!」

 その区画は、大騒ぎとなった。

 「精霊気エルフ狩りだ!!」


 恐れるどころか異様に興奮して、手に手に武器や武器に転用できる鉈やら包丁やらの民生具を持ち、フューヴァを追いかけ始めた。


 路地からごっそりと人がいなくなってから、

 「あわわわ……!」


 ひっくり返って崩れた雑貨に埋まっていたペートリューが、おののきながら出てきた。

 


 謎の地下空間からほぼ真上にある、掘っ立て小屋めいた事務所と思われる建物に接近したストラは、そのままカギのかかっている扉の取っ手を破壊し、堂々と侵入した。


 ちなみに、取っ手には猛悪的な呪術が施されており、強引に立ち入ろうとした者を呪い殺すが、ストラに対してはまったく効果が無かった。


 室内は質素な佇まいで人気は無く、半分は物置のようで、いかにも偽装された空間だった。埃が溜まり、しばらく無人だったことが分かる。


 ストラは一瞬で探査を終え、隣の建物側の変哲もない壁に向かった。


 とたん、壁に魔力が渦巻き、隠し通路を護る専門の魔物が出現する。ドアに擬態した怪物とでも云うべきか。紫と緑の網目模様に三つ目の大きな顔面が、壁に出現した。


 「止まれ! 何もごぶシぁ!!」


 強力なプラズマ球をまとった拳で眉間を痛打された魔物が、魔力中枢器官を一撃で破壊されてグズグズと崩れた。


 魔物がいた部分に現れた鋼鉄の扉を、ノックするように叩いただけで、鋼鉄がひしゃげて蝶番から捻じれてぶっ飛んだ。


 凄い音が響き、地下に向かう石階段が現れる。


 既に魔法のアラートが鳴り響いており、非常階段めいた狭い石階段には、縦横無尽に青い稲妻がスパークしていた。


 ストラがエネルギー回収フィールドを展開しつつ、そのスパークを完全に無視して、飛び降りるように空中を滑って一気に地下に向かった。ストラが通った後は魔法の罠の魔力がすべて奪われ、スパークが消えて暗黒に包まれた。

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