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第16章「るてん」 6-17 光柱の罠

 廃城全体を覆う防御結界が基礎から軋みだし、まるで巨大な船が波で揉まれて歪んでいるような、妙な音を立て始めた。


 いくらドリルで攻撃されている部分を補強しても、それを支える梁や柱や壁が弱りだしたものだから、ついに支えきれなくなり、オネランノタルが補強部分ごと押しこんで突破に成功した。


 とたん、バリバリとバリア全体が崩壊、魔力が拡散し虚空に消える。


 後ろでありったけの攻撃魔法を準備していたリースヴィルが、オネランノタルを追い越して廃城に吶喊。


 すかさず、思考行使で火の玉ファイア・ボールの嵐を御見舞いした。


 数十発のミサイルが次々に着弾したように爆炎が連続して立ち上がり、廃城が炎に埋もれて見えなくなった。廃城自体にも防御魔法が施されていなかったら、跡形も無くなっていただろう。


 25発の特大火の玉ファイア・ボールの後、さらにバンカーバスターめいて、数メートルもの巨大魔法の矢マジック・ミサイルが7発、撃ちこまれた。どうせ地下施設があるのだろうから、数メートルから10メートルほども地面に突き刺さって、地下から爆破する。


 爆煙に続いて大量の土砂が噴きあがり、様子を見ていたオネランノタル、

 「……待て、リースヴィル!」

 さらに攻撃をしようとしていたリースヴィルを止めた。

 「どうしました」

 「妙だ」


 冬の冷たい強風に土砂と爆煙が流れ、廃城は基礎ごと完全に破壊されて跡形も無くなっていた。まるで隕石でも落ちたみたいなクレーターができていて、地下にあったであろう無何有ミレド製造施設も粉々に吹き飛び、大量の土砂に埋もれたように見えた。


 が……。

 「なんの反撃もない」

 オネランノタルが、慎重に周囲の魔力や魔術試行の気配を探った。

 「僕の攻撃で、木端微塵に消え去ったのでは?」


 「自惚れるなよ、あれほどの防御結界を施していた連中が、これしきの攻撃で跡形も無くなるか? 否だ。ストラ氏や代王の攻撃ならいざ知らず」


 「ハイ」

 云われて、リースヴィルも気を引き締める。


 「調べる。おまえは、ここで厳重に警戒しろ。異変や違和感があれば、容赦なく対応し攻撃するんだ」


 「畏まりました」

 オネランノタルが、音も無くクレーターの中に降り立った。


 魔族なので魔法ではないが、魔力を触手のように伸ばし、また広範囲に沁み通らせて直接探査する。


 ものの1、2分で、オネランノタルは異変に気付いた。


 廃城と共に破壊した地下施設……あるにはあるが、ただの本当に古い石材のみだ。


 とても、無何有ミレド等の魔薬類を合成、製造していたような施設の痕跡では無い。たとえリースヴィルの猛攻で木端微塵になったとはいえ、ストラの疑似熱核攻撃じゃあるまいし、蒸発するほどの規模ではないので、破片や燃えカスていどは残っているはずだった。


 それが、何もない。

 最初から・・・・無かった・・・・かのようだ・・・・・


 (だが……ストラ氏は、ここに無何有ミレドの反応……それも、作りかけのような物質や在庫、あのゴミみたいな廃棄品の反応まであると云っていた……)


 どういうことなのか。


 (1つ。ここは、それらの物質を保管や廃棄をする場所で、製造施設ではない。2つ。無何有ミレドを攻撃しようとするものを、ここへおびき寄せるためのエサ……つまり、罠だ・・


 瞬間、廃城跡を取り囲むように8本の光柱が立ち昇った。

 「逃げろ!!」

 オネランノタルがなりふり構わずに、上空へ飛ぶ。

 リースヴィルも一瞬、反応が遅れたが、それに続いた。


 横はもうだめだ。柱と柱の間をすり抜けるには、2人の魔力では出力不足だった。恐るべき魔力干渉波が真っ白い光柱の合間に発生しており、2人とも方式は違うが魔力の塊であるため、強引に通ろうとすると分解されるだろう。


 上空では柱の先端が急速に折れ曲がって、天井を塞ごうとしていた。

 (やられた・・・・……!!)

 オネランノタルが、悔し気に四ツ目を細めた。

 (残党ごときが、これほどの魔術を!!)


 現役の無何有ミレド幹部であるタインフェールやプールー=ク、それに総帥のギゥ=ロッツであれば、これくらいは組みあげるだろうが、支部か何かの先遣魔術師の末裔が、どうやってこんな術式を生み出したのか。


 (つまり、当時の幹部どもに匹敵する魔術師が、現在の無何有ミレド後継組織にいるというのか……!?)

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