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第16章「るてん」 6-16 廃城

 既に、床には20ほども空き瓶が転がっていた。

 「こっ、このガキィ……!?」

 「ああ!?」

 酔っぱらいめいた目つきでふり向いたリン=ドン、その目が魔力に光った。

 「ヒェ……!?」


 ホウ=ラオが腰砕けに下がったが、蛟竜の姿になったリン=ドンが、脳天からホウ=ラオにかぶりついた。


 あとは、チィシャンの本部事務所だが……リン=ドンは、無何有ミレドの一気食いでベロベロに酔っぱらってしまった。



 ローウェイから飛び立って、猛スピードで郊外の廃城に向かったオネランオタルとリースヴィルが速度を落とし、白と茶色と黒の大地のど真ん中に忽然と建っている廃城の上空に到達した。


 「なかなかの対魔法防御ですね!」

 リースヴィルが目を見張る。


 「あんな廃墟に施す法ではない。また、こんな場所にこのような大規模な魔導施設があるとは思いもよらない。ストラ氏でなくば、発見は難しいだろう」


 オネランノタルが四ツ目のうち、上の黒い眼を細め、下の翠の眼を見開いてそう云った。


 「いかさま……」


 リースヴィルも、いまさらながらストラの探索能力、そして発想の凄まじさに戦慄する。


 (まさか、無何有ミレドの残骸を直に入手し、そこからここを瞬時に発見するとは……!!)


 恐れ入るほかはない。

 「さて……と、どう攻める?」

 オネランノタルがいつもの笑みを浮かべずに、リースヴィルに云った。

 残党とはいえ、無何有ミレドだ。


 亜空間の果てで滅亡した魔導都市国家マーラルで戦ったプールー=クやタインフェールを、まざまざと思い浮かべた。特に、あの魔力を無限に吸収する黒い珠……。


 (何と云っていたっけか……ナントカのカネとか云っていたような……)

 あれには驚かされた。


 ルートヴァンが力づくで押さえこんでくれなかったら、おそらくオネランノタルといえどもやられていただろう。


 それほどではないにしても、何が出るか予想もつかなかった。

 「どうしましょうね」

 眼を細めて廃城の崩れた屋根を見下ろすリースヴィルに、オネランノタル、


 「油断はできないぞ、リースヴィル。舐めてかかっていたら、痛い眼を見るだろう」


 「ハイ」


 そこでオネランノタルが四ツ目を見開き、鮫みたいな三角牙をむいてリースヴィルに向かって、


 「おい、おまえ、自分がどうせ代王の分身体だからどうなってもかまわないというなら話は別だが、それに私を巻きこんで私の足を引っ張るというのなら、いまこの場で先に八つ裂きにしてその魔力を喰ってくれるぞ」


 「フ……御安心を。僕とて、異次元魔王ストラ聖下の忠実なる下僕。生への執着は微塵もありませんが、だからと云って自暴自棄ではありません。聖下の御覇業を、是が非でもこの眼で観てみたい! これは、僕自身・・・の確実なる意思です!」


 「その意気だ」


 ようやく、オネランノタルが満足そうに笑みを浮かべた。そうして廃城を見下ろして、


 「相手の出方も規模も陣容も分からない以上、まずは正攻法で行きたい」

 「御任せします」


 「では、私が一点突破を試みるので、おまえはその補佐だ。結界に穴が空いたら、先に飛びこんでありったけの破壊魔術を使え。飛び出てきたアホを私が殺す。良い頃合いで城内に進入し、無何有ミレド製造施設の破壊と人員の殺傷を同時に行う」


 「畏まりました!」

 「よし」


 云うが、急降下爆撃機めいた逆落としでオネランノタルが真下に吶喊。魔力のドリルを形成し、分厚い対魔法結界に突き刺さった。


 閃光とスパークが炸裂して、結界ごと廃城自体が地震のように揺れる。廃城の崩れかけた石材が、ドサドサと落ちた。


 (……可成り強力だが、やってやれない規模じゃあない……さすがに、かつての無何有ミレドほどではないようだ……)


 オネランノタルがそう判断し、一気に魔力ドリルの集中を高めた。


 凄まじい狭窄音と閃光がほとばしり、防御結界術の術式がじわじわと破壊されてゆく。


 相手も急激に魔力圧を高め、オネランノタルが突進している箇所にバリアを集中する。


 次々に魔力の壁が補強され、オネランノタルが四ツ目をむいた。

 「このクソ……生意気な!!」

 魔力のドリルで突き破りつつ、防御壁の術式そのものを分解してゆく。

 ルートヴァンが得意なやり方だ。

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