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第16章「るてん」 6-9 判断も手段も速い

 「フューヴァ」

 「あ……ハイ」


 フューヴァがそれを受け取り、片方の眉を上げてしげしげを見つめた後、懐に入れた。


 「では、私どもはこれで」


 ストラがそう云って席を立ち、フューヴァとリースヴィルも立った。他の応接間にプランタンタンとまだ水筒から帝都の蒸留酒のリヤーノを飲んでいるペートリュー、グラグラに二日酔いのヅーウァン=シャンと、興味深げに調度品を眺めているリン=ドンがおり、ストラたちが帰ってくるのを待っていた。


 そこへストラが戻ってきて、

 「終わりました。行きましょう」

 一行が立ち、ぞろぞろと店を出た。


 玄関までルゥや商会の幹部が見送って、ストラたちはローウェイの一般街・・・に向かった。


 「いやあ~~アタマが割れます……」

 いまにも吐きそうな顔のヅーウァン=シャンだったが、リン=ドンが、

 「道士、これでもう我々はいいですか?」

 「え? あ! はい、有難う御座いました! 私は王都に帰ります……オエ」


 ヅーウァン=シャンが気崩れた道士服を直しながら。髪も崩れかけたまま、フラフラと晩冬の通りを去って行った。


 「魔物退治代行の代金をもらってねえでやんす」


 ヅーウァン=シャンをじっとりとした眼で見送って、プランタンタンがつぶやいた。それどころか4000トンプも払ってハナクソを買ったなどと知れば、発狂するだろう。


 ところで……。

 その無何有ミレドである。

 完全にぼったくられて、ゴミをつかまされた・・・・・・格好だったが、

 「どういう目的があるんだい? ストラ氏」

 姿を現しているオネランノタルが、尋ねた。

 「こっち」


 ストラがそう云い、少し歩いて、人気のない辻まで来た一行が、ストラの周囲に並んだ。


 そこでストラが改まって一向に向かい、常の半眼無表情で、


 「私は、チィシャンなる無何有ミレドの後継組織の全容とか、どうやって魔薬の無何有ミレドを製造しているのかとか、流通経路がどうなっているのかとか、どれほどの量が流通しているのかとか、いっさい興味がありません。先ほど入手した無何有ミレドの成分分析により、半径60キロメートル以内で同様の物質がどこにどれほどあるかは既に解析してあります。これよりその全てを攻撃し、撃滅します」


 「え?」

 あまりの展開の早さに、一同が目を丸くした。


 「まずローウェイ内では、先ほどのルゥ商会のほか、3か所に在庫と思しき無何有ミレドの反応を確認。量は、それほど多くはありませんが、純度が桁違いです。また、南西の方角約50キロ地点に要塞というか古城があり、かなり厳重な物理的かつ魔導的防御がなされておりますが、そこにはもっと大量の無何有ミレドの反応があります。また未精製と思しき物質の反応や、先ほど入手したような粗悪品の反応も大量にあります。おそらく、そこが製造拠点でしょう」


 「キィーーーッヒッヒッヒヒヒヒ!!!! さすがストラ氏だ!! 判断も手段も速い!!」


 真っ黒なゴーストスタイルのオネランノタルが、袖の長い両手を掲げて楽しそうに云った。


 「ぜひともやろう! 私がその要塞を木端微塵にしてやるよ! リースヴィルもつきあえ! 街中の在庫処理は、ストラ氏がやりたまえ! それともリン=ドンが暇つぶしにやるか!? 無何有ミレドというのは、魔族が食うとうまい・・・というぞ!? リノ=メリカ=ジントの連中・・がそう云ってたんだ!」


 「魔薬を食うのかよ!」

 フューヴァが驚いてそう云った。

 「オネランの旦那も、食ったことがあるんでやんすか?」

 「私は無い。食いたいとも思わないね」

 「はあ……」


 「では、そういうことで。オネランノタル、リースヴィル、よろしく。正確な方角は、この矢印を参照に。直線距離で48.678キロ」


 空間に矢印が浮かび、ストラ独特の距離単位はよく分からなかったが、オネランノタルとリースヴィルが角度を魔術的に固定して記憶する。


 「じゃ、行ってくる! 要塞施設と無何有ミレドの処分が終わったら、戻ってくるとしよう! いくぞ、リースヴィル!」


 オネランノタルが素顔を現し、一気に飛翔した。

 「では、行って参ります」

 リースヴィルも一礼して、オネランノタルを追って飛びあがった。

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