表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1140/1265

第16章「るてん」 6-1 ローウェイ

 「ははあ、なるほど……」

 オネランノタルがうなずいた。


 「リースヴィル、うまくできるか? 私がやると魔力が濃すぎる。エルフといえど、心身に影響が出るだろう」


 「変身魔法ですか……効果があまり持続しないので、2~3日かに1回はかけ直す必要がありますが、それでよければ」


 「よければもなにも、それくらいですむのならいいんじゃないか? どうせ、リースヴィルは我らとは離れないだろう。プランタンタン、どうだい?」


 「ぜひ、おねげえするでやんす!」


 「決まった。じゃあ、ローウェイへ入る関所で、効果を試すしよう……キィッヒヒッヒヒッヒ……!」


 嬉しそうに、オネランノタルが甲高い笑い声を発した。

 そのやり取りから2時間ほどで、一行はローウェイの城壁に到着した。

 既に、リースヴィルがプランタンタンに魔法をかけている。


 耳や目鼻立ちを人間っぽくしているだけなので、ずっとエルフのプランタンタンと接してきたペートリューやフューヴァには違和感があったが、


 「まあ、こんなもんじゃないか?」

 オネランノタルがそう云った。

 「なんか、ちょっと不気味だな」


 フューヴァが、片眉を上げてそう云った。見慣れれば、むしろこちらのほうが人間っぽいのだから、違和感は無いはずなのだが。


 リースヴィルの出した魔法の鏡で自分の顔を見たプランタンタンも、

 「うへえ……」

 と唸ったきり、黙りこんでしまった。


 そんなこんなで、プランタンタンは久しぶりにフードをとって寒風に当たりながら街道を歩いていた。


 オネランノタルは別にして、リン=ドン以外はみな東方人なので、周囲の農村や川辺の漁師、荷役業者などとまじって関所に並んでいると、みなジロジロ見てくる。


 オネランノタルはとっくにどこかへ行っており、後で合流する。

 リン=ドンも、こんな大きな街は初めて見たので、

 「人がいっぱいですねえ!」

 などと、完全に御上りさんだった。

 「こりゃ、リン=ドンも当てにならねえな……」

 フューヴァがそうつぶやいて、嘆息した。


 城門の関所では、滅多に現れないものの、帝都やホルストン、バルベッハから訪れる東方商人もいないわけではなく、全く未知の存在というわけではなかったが、冒険者というのは相当に珍しいようで、それなりに賄賂を払っても、1人目のストラからなかなか関所を通れなかった。


 面倒くさいので、ストラが脳へ強制催眠波。続いたリン=ドンとリースヴィルも強力な魔法をかけたので、以降のペートリュー、フューヴァ、プランタンタンはわりとスルーだった。


 「見破られやせんでしたね……ゲッシッシシ……」


 人間に化けたプランタンタンが、楽しそうに笑った。まだその顔に慣れないフューヴァ、不気味そうな目でプランタンタンを見つめた。


 とはいえ、一行は城内でも目立った。

 リン=ドンが交渉しても、次から次に宿を断られた。

 「あんた、まさかさらわれてきたんじゃないだろうね!?」

 などと、眉をひそめて云う宿の女将もいた。

 「え、なに? この国はそんなにガキが誘拐されるの?」


 ギュムンデでも子供の誘拐や子捨てなどはあったが、あの町がかなり特殊だったのは否めない。こんな都で、しかも真昼間から一般の宿屋で出るセリフではない。


 「よく知りませんけど、私なんぞに生贄を出しているような国ですのでね」

 苦笑しながらリン=ドンがそう云い、フューヴァ、

 「説得力があるんだか無いんだか、わかんねえセリフだな」

 苦笑も出ずに顔をしかめた。

 「ハラ減ったでやんす。まさか、飯も食えねえんじゃないでやんしょうね?」


 人間の顔になっても変わらずの猫背で前歯を見せながら、プランタンタンが文句をたれる。


 「この分だと、メシ屋も入れてくれねえかもな」

 「なんとかしておくんなせえ、リースヴィルの旦那あ」

 そう云われても、リースヴィルも困ってしまった。


 「小さいですが、下町というか、暗黒街というか……物騒な場所・・・・・があります。そこなら、金銭次第で滞在できるかもしれません」


 ストラがボソボソとそんなことを云い、城塞の北の隅のほうを指さした。


 「へえ……行ってみようぜ。アタシたちにゃあ、そっちのほうが御似合いかもな」


 フューヴァがニヤニヤしてそう云い、プランタンタンも眼を細めて肩で笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ