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第16章「るてん」 5-9 最も強力な狩人

 「なんでもいい、ユアサン、私と共に首が囮になる勇気はあるか?」

 「ええ!?」


 アルーバヴェーレシュがニヤニヤしてそんなことを云い、ユアサン=ジョウが苦笑。


 「勇気ではなく、命知らずの酔狂でしょう、それは!」


 「では、旅の駄賃に、命懸けの酔狂につきあっておらおうか。ホーランコルは、キレットとネルベェーンを護ってくれ」


 「分かりました。しかし、酔狂はほどほどに……」


 苦笑してホーランコルが抜剣、2人の側に着く。一般魔法レベルながら、キレットとネルベェーンが全員に防御力付与と攻撃力付与魔法を二重がけにし、さらにアルーバヴェーレシュがその上から三重がけにする。計五重の魔法で、だいたい防御録、攻撃力共に+300ほどにもなった。強力な高レベル勇者パーティーとしては、まあまあだろう。


 「よし、行くぞ!」

 アルーバヴェーレシュが雪をかき分けて走り出し、

 「高い駄賃だぜ……」

 ホーランコルに肩をすくめて見せたユアサン=ジョウが続いた。

 「おい、精霊気エルフと……タケマ=トラルがそろって向かってくるぞ!」

 ロクザ=シャが大声で叫び、大太刀を抜きはらった。


 ヘイザが後ろについて、獲物めがけて組みつくためにいつでも飛び降りられる体制になる。


 その後ろに、呪術支援のためにナガソウとガナがついた。

 「飛んで火にいるナントヤラだ!!」


 ロクザ=シャがアルーバヴェーレシュめがけて片手持ちの大太刀を振り下ろしたが、アルーバヴェーレシュが飛翔魔法で難なく避けた。


 馬が通り過ぎ、目標が頭上に消えたのを看破したロクザ=シャが馬を返して、今度は後ろからユアサン=ジョウを狙う。


 「ヘイザ! 精霊気エルフを獲れ!」

 「合点だ!」


 ヘイザの背中と足首にナガソウの放った呪符が貼りついて、短時間の素早い飛翔を可能にする。馬の背から飛び上がって、小太刀と鎧通しの二刀流でアルーバヴェーレシュに迫った。


 「フッ……!」


 思わず鼻で嗤いつつ、アルーバヴェーレシュも腰の後ろに回しているグレーン鋼の小剣を逆手で抜き、飛翔の速度をあげた。


 呪符の補助魔法での飛翔と、自身の飛翔魔法での飛翔では、セミを襲うカラス、ハトを襲うハヤブサほどの彼我の差がある。さらに、アルーバヴェーレシュはレモン色のシンバルベリルも使えるのだ。


 「ぬぅうあ!」


 魔力で銀色に剣身が光り輝き、飛翔速度もアップする。ヘイザの空間認知能力と動体視力をはるかに超えた獣じみた素早さで、アルーバヴェーレシュがヘイザの斜め上の死角から襲いかかった。


 「……!!!?」

 声も無く、ヘイザが左肩から右腰にかけて一刀両断になった。


 呪符の効果がまだ生きていたので、血の雨を降らせながら真っ二つになったヘイザの身体がバランスを崩しながら空中を舞い、風に乗って糸の切れたタコのようになってどこかへ飛んで行った。


 ユアサン=ジョウを襲ったロクザ=シャとその補佐に回ったガナはそれに気づかなかったが、ヘイザに呪符を飛ばし術をかけたナガソウが仰天して馬を止めた。


 「なあ……!?」

 そのナガソウに、上空からアルーバヴェーレシュが襲いかかる。


 騎兵最大の利点の1つにその視線や攻撃の「高さ」があるが、さらに上空から襲われるのでは意味がない。


 戦車は空対地攻撃に弱いし、地上の獲物は上空からの捕食者の攻撃にほぼ反撃する手段がなく、逃げる他はない。


 ナガソウの身に着けている護符が警告を発し、仰天したナガソウは敵がどこから迫っているか分からず、周囲を見渡した。


 ユアサン=ジョウにはロクザ=シャとガナが迫っており、いまヘイザを襲った精霊気エルフが次は己を獲物に狙っているとナガソウが気づいたころには、アルーバヴェーレシュが逆落としにその刃をナガソウに突き立てていた。


 護符が反応してバリアを作ったが、数秒と持たずに破壊され護符が焼け散った。


 アルーバヴェーレシュがいったん上昇し、すぐにまた馬を飛ばすナガソウの背後に迫った。


 (クソが! こっちが獲物になるなんて!)


 まさか、狙っていた精霊気エルフが最も強力な狩人だとは思わず、ナガソウが遮二無二護符をばらまいた。


 毛長馬リャドフに乗って逃げるナガソウが護符の数だけ分身し、6人と6頭になってバラバラに雪原を駆けた。


 アルーバヴェーレシュが強力な魔法の矢マジック・ミサイルを思考行使し、5体の式符を次々に引きちぎって爆散せしめた。

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