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第16章「るてん」 5-6 翼の魔物

 「矢だ、矢だ!」

 10人以上もの弓馬兵が前に出て馬上から短弓を放ち、3人を追いつめる。


 アルーバヴェーレシュが防護魔法を使っているので矢が当たることは無かったが、馬に徒歩では急激に距離が縮まった。


 「先に行ってろ!」

 アルーバヴェーレシュが立ち止まってそう叫んだが、

 「バカ、本末転倒だ!」

 ホーランコルとユアサン=ジョウがその前に立った。


 その時にはアルーバヴェーレシュがありったけの魔法の矢マジック・ミサイル火球ファイアー・ボール、ビーム砲めいた高圧熱線ヒート・アタックを矢継ぎ早に放った。


 面白いように騎馬がぶっ飛んだが、散会しているので威力のわりに効果が薄い。


 「無駄な魔力消費だ、アルーバヴェーレシュ! 行くぞ!」

 ホーランコルが促し、舌を打ってアルーバヴェーレシュも再び走る。

 「こっちだ、こっち!」


 遠くで、ネルベェーンが短杖ワンドをふり上げて叫んでいた。もう暗くてよく見えないほどだったが、アルーバヴェーレシュが魔力をつなげているので、まっすぐその方向へ向かう。


 また照明魔法が飛び、周囲を照らしつけた。

 「しつこいな!」

 ユアサン=ジョウも、さすがに息が切れている。


 だが、ホーランコルは、ネルベェーンの近くでキレットが不思議な踊りを踊っているような動きをしていることに気づいた。


 広範囲大規模魔獣召喚魔法だ。


 踊っているのがキレットのみなのは、ネルベェーンがキレットの防御に入っているからだ。


 3人が合流すれば、2人で行えるだろう。

 「急げ! 2人を護れ! 反撃だ!」

 ホーランコルが叫び、

 「反撃だって!?」

 アルーバヴェーレシュも驚いた声を発した。逃げるのではなく、反撃とは。

 分厚い雲が流れてきたように、空を急に暗闇がおおった。


 照明魔法があったので賊どもはあまり気づかなかったが、アルーバヴェーレシュが妙な気配に驚いて空を見あげた。


 「……何が集まっている!?」

 「しらん! しかし、何かの魔獣だ!」

 ホーランコルが叫び、

 「魔獣……!? あれは魔物じゃないのか!?」

 「同じことだ! あの2人は、純粋な魔物も操るぞ!」

 「そんな魔術が……!」


 アルーバヴェーレシュの常識では、魔獣使いと云ってもいわゆるモンスター類を操ることしか想像しえない。ストラの定義する魔力依存生物であるところの純粋にして真の魔物を操る法は、ゲーデルエルフの魔術では確立されていない。常識外だ。


 (そもそも、魔物がこんなに集まるものなのか!?)


 高位の魔術師や魔族が生み出す魔蟲まむしは別だが、魔蟲まむしの類であれば、群体として存在している例はある。


 だが、魔蟲まむしというには明らかにでかい・・・、翼長が5~6メートルはある怪物どもが30体以上も集まっていた。これほどの規模はの魔物は、通常1種1体だ。なぜなら魔物や魔族は繁殖するのではなく、高濃度魔力の澱みから自然に発生する・・・・からだ。したがって、似たような種は存在するが同種は基本的に存在しない。


 (なんだ……この地方の大規模群体か……!?)


 アルーバヴェーレシュは、もはや馬賊どもよりその魔物に気を取られた。闇に紛れてよく分からないが、魔力を感知すると巨大な真っ黒い翼だけが飛んでいるように視えた。


 翼のみの魔物なのだ。

 それがいっせいに飛来し、次々に馬賊へ襲いかかった。


 賊ども、急に視界が真っ暗になり、翼の付け根というか中心にあるウニの歯のような八角形の牙に首ごと、あるいは顔の半分、または上半身の半分を齧りとられた。


 ひと口齧って次に移り、魔物がそこらじゅうの賊を喰い殺した。

 「なんだ……なんだ!?」

 「闇のバケモノだ!!」

 「下がれ、さが……」

 その部隊長も一撃で胸から上の右半分をかじられ、馬から落ちた。


 まとまりかけていた騎馬が再びバラバラになり、四方八方に散らばって遁走を始める。


 魔物が執拗にそれらを追い、100人以上も残っていた馬賊を皆殺しにした。

 


 「やれやれ、助かった……!」


 まだ上空に残っている敵の照明魔法の下、ユアサン=ジョウが布で刀をぬぐい、油を引いて納刀。一息ついた。

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