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第16章「るてん」 4-1 怒りと憎しみ

 「フン、とんだ道草だ。行こう、ストラ氏」

 オネランノタルがそう云うや、

 「まだ依頼料をもらってねえでやんす!」

 フードの奥から、即座にそんな声がした。


 「このクソ超バカやろうが、とっ捕まってバラバラにされて売られるところだったんだぞ!」


 フューヴァが眼をむいてそう云ったが、

 「それとこれとは、話が別でやんす!」

 「だから、もういい加減そんな端金はしたがねに執着するんじゃねえ!」


 「ハシタガネなんて御金様は、この世にねえでやんす!!!!」

 そういやそういう話だったと、フューヴァが諦めて肩をすくめた。

 「あっしがもらってくるでやんす!」

 プランタンタンが歩き出し、舌を打ってフューヴァが、


 「こいつ、死んでもこうなんだろうな! ストラさん、何とかしてくださいよ!」


 「リースヴィル」

 リースヴィルが苦笑し、

 「畏まりました」

 プランタンタンと共に、村に入って行った。


 結論から云うと、プランタンタンは主に名主の家から3000トンプもの(村にとっては)大金をせしめて、魔法のフード付ローブの上からでも分かるほど肩を揺らして笑いながら戻ってきた。


 「ゲヒェエッシヒッヒヒッヒッシッシシシシシ~~~~~~~~~~~!! 連中、こんなに払いやがったでやんす~~~~~~~~!!」


 リースヴィルが何を云って恫喝したのかはここでは触れないが……リン=ドンが、村人を軒なみ食い殺すのを見ていた者がいたのだ。


 「命ばかりは……」

 などと平伏し、有り金全てを出してきた。


 「どっちにしろ、主だった働き手や名主を失い……水源も3年持たないとあっては、この村は遠からず壊滅でしょうね」


 ルートヴァンそっくりの半嗤いでそう云うリースヴィルを見やり、フューヴァが苦笑する。


 「……じゃ、こんどこそ行こうぜ」

 一行が、夕刻近い街道を戻った。



 4


 時間は少し戻り、一行と別れたルートヴァンである。


 超極秘高速伝達魔法の竜とほぼ同じ速度で3時間ほども飛び、一直線にヴィヒヴァルンへ戻ったルートヴァン、半年ほど前にストラを迎えた王宮の前庭にそのまま降り立った。


 「殿下!!」


 シラールを含め、王国の要人が転がるように集まって、旅に薄汚れていつつも精悍な面持ちとなったルートヴァンを迎えた。


 「申し訳も……!!」

 そのまま、全員がルートヴァンに片膝をついて平伏する。

 「シラール先生、御爺様は?」

 ルートヴァンが静かに尋ね、地面に額をこすりつけんばかりのシラールが、

 「ハハアッ!!」

 ゆっくりと立ち上がり、

 「……こちらで御座りまする!」


 ルートヴァンを案内する。その後ろに、まるで葬列の如く要人たちも打ちひしがれて続いた。


 ヴァルベゲル王の死はまだ秘匿されており、いつ、どう発表するかもルートヴァンの判断になる。


 王宮地下の特設の霊安室に、ヴァルベゲル王の遺体は安置されていた。


 真冬であるにもかかわらず、王の好きだった純白の花々に囲まれ、かつ気温は冬のままで遺体を損傷から護っていた。魔法の照明が、荘厳に王を照らしている。


 ルートヴァンが愛する祖父を見下ろして、細かく震えだしたが、けして涙は流さなかった。悲しみより、怒りと憎しみのほうが勝っていたからだ。


 そのルートヴァンの背中を見て、王国の要人たちもルートヴァンと思いを一つにする。


 「……先生……」

 「ハッ」


 ルートヴァンの横に立ったシラールが、50年連れ添った主君であり親友であるヴァルベゲルに何度も祈りを捧げ、答えた。


 「いったい、どのような状況で……何者が……目星は……?」


 「まことに御恥ずかしいことながら……このシラールをもってしても、まったく状況も下手人の目星も皆目つかずで……!」


 「状況もですか?」


 「昼食ののち、いつも通り、陛下が回廊を歩いていて、いきなり御倒れに。侍従が駈け寄った際には、既にこと切れておりました。私はその時学院にいたのですが、学院と王宮の魔法結界防御には、何の問題もなく……反応すらありませなんだ!」


 「王宮の結界が、何の反応もなく?」

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