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第16章「るてん」 3-4 拉致空間

 そのまま触手が賊どもを持ち上げ、馬は勝手に走って荒野に消えた。


 オネランノタルの背後から20本近いケーブル状の触手が黒く伸びて、その先端に賊がモズのはやにえ・・・・めいて突き刺さっている。


 それらをいっせいに冷たい地面に打ち捨て、オネランノタルは街道の右側から迫る兵士たちに向かって飛んだ。


 荒野を街道に向けて疾走していた騎馬軍団、オネランノタルの予想とおり、カアン州街道警備隊の一部だった。


 正規の州軍なのだが、給料の一部が「盗賊をやる権利」なのは、ガフ=シュ=インの兵士と同じだった。


 この部隊は隣のイァン州に「情報ネタ屋」を放っており、常に関所を通る商人の情報を仕入れていた。


 襲うためにである。


 その一環で、800トンプでエルフのネタを買った。けっこう奮発したネタだった。もちろん、他の部隊や軍上層部にも極秘だ。


 とはいえ、他の隊や上層部が独自にエルフのネタを仕入れている可能性はある。そうやって、グァンガン関の役人は独自に少しでも儲けようとしていた。そしてそれは、この国では当たり前のことで、悪徳でも何でもない。


 「隊長殿! 旅人が見えます!」

 騎馬で先頭を駆ける1人が、ゆっくり下がってきて部隊長にそう叫んだ。

 「精霊気エルフはいるのか!?」

 「まだ分かりませんが、深く兜帽フードをかぶった小さなやつがいます!」


 「身を隠しているな……そいつかもしれん! なんにせよ、このまま襲撃する!」


 「その前に、いろいろ聞きたいことがある」


 隊長のすぐ横でそんな甲高い声がし、隊長がゾッとして振り向いたときには、真っ暗闇の空間に誘拐されていた。


 「わああ……!」


 馬から投げ出され、闇の中に転がった隊長は、わけが分からず、地面なのか床なのか壁なのかも分からないところに両手をつき、


 「なんだ、なんだここは!? ここはどこだ!?」

 一気に汗まみれとなり、恐慌に震えながら叫んだ。

 「おい、面倒だから聞かれたことにだけ答えろ」

 闇の中でオネランノタルがそう云い、

 「うわああああ!!」

 「お前たちは州の正規兵なのか?」


 「誰だ、誰だ!! ここはどこだ!! 俺を今すぐこっここ、ここから出せ!! 出せ!!」


 隊長が手探りで剣を抜き、振り回して叫び続ける。

 「聞かれたことだけ答えろと云っただろ」

 「殺してやる、今すぐ出せ!! 出すんだ!! 殺すぞ!!」

 「なんだ、こいつ」


 時間の無駄とばかりに、オネランノタルが魔力の「手」で男の頭蓋を鷲掴みにした。


 とたん、指が脳天に食いこみ、男が動かなくなる。


 「フン……正規兵だが一部の部隊……だけど、軍全体がこんな感じ・・・・・か……。ガフ=シュ=インとたいして変わらないんだな。情報の出所は……やっぱりあの関所か……。なに、20万から30万トンプ!? エルフ1人が? そりゃあ、血眼になるね。しかし、どうしてまた……なるほど、バーレじゃ、何百年もにわたってエルフを狩りつくした・・・・・・のか……それで、さらに値段が高騰……と。恐ろしいな、人間というのは」


 オネランノタルが、隊長から魔力の手を離した。

 脳天に指の穴が空いた隊長、血を吹き出してばったりと闇に倒れた。


 「さて……そうなると、これからどんどん襲ってくるものが増えるだろう。いっそ、プランタンタンを次元倉庫に隠すか? いや……それも面白くない・・・・・な」


 そうして闇の中で四ツ目を細め、やや何か考えていたが、プイと誘拐拉致空間を解き、現実に戻った。解放された隊長は馬に乗ったままだったが、頭やこめかみに幾つも穴が空いて即死しており、馬から落ちて雪原に転がった。


 「……隊長!?」

 「いかがされました!?」

 何人かが異変に気づき、

 「止まれ、止まれーーッ!!」

 「進軍中止ーーーーー!!!!」


 全体を止め、事態を飲みこめない者らを残して、3人ほどが隊長の元へ馬を戻した。


 「隊長、しっかりしてください!」


 馬から降りて転がっている隊長に近づき、抱き起こした瞬間、ブービートラップめいて隊長が爆発した・・・・・・・


 助け起こした兵が衝撃でぶっ飛び、即死して転がった。

 「なん……!?」


 兵士たちが仰天して固まりつき、すぐに我先にと逃げ出し始めた。とにかく、その場に留まっているのは恐怖だった。


 だが、もう遅い。

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