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第16章「るてん」 3-1 物を知らない

 3


 リャンタン市を出たストラ一行は、カアン州の都であるローウェイを目指して、そのまま誰もいない街道筋を歩いていた。


 だが、一行につかず離れず、何者かがあとをついている。その数は、13人。


 また行く先にも、既に馬に乗った一団が一直線に近づいていた。これは規模が大きく、30騎以上はいる。


 さらに、向かって右側にも別の一団が地平線に見え隠れしていた。これも騎馬の一団で、20騎ほどだ。


 左側には、まだ遠いが30キロほどの地点まで、総勢20ほどの似たような騎馬軍団がゆっくりと接近していた。


 これらは全て復旧したストラの広域三次元探査でまるわかり・・・・・だったし、オネランノタルとリースヴィルの警戒魔法にもとっくに引っかかっていた。


 「何の連中だ?」


 情報を共有し、時おり吹きつける冷たい風に眉をひそめ、フューヴァが云った。


 「盗賊では?」

 リースヴィルがキョロキョロしながら答える。

 「こんなにいっぱいかよ!」

 「盗賊というより、盗賊団ですかねえ~~~」


 水筒を片時も離さないペートリュー、グイと仕入れたばかりのリャンタン酒を傾けて云った。


 「え、みんなアタシらを狙ってるの?」


 東方だろうとどこだろうと街道筋に盗賊なんか珍しくもなかったが、騎馬軍団が包囲を狭めているのは少し話が違う。


 「なんでだ?」

 「プランタンタンさんを狙っているのでは~~?」

 「あっしをでやんすか?」


 他に誰もいないのにフード姿のままのプランタンタンが、荒涼とした周囲を見やって焦った。


 「そんな、大げさな……」

 「でも、それ以外に考えられませんよ~」

 「いっしょにいるんだから、お前だって狙われてんだぞ!」

 ペートリューにそう云いつつ、フューヴァ、


 「でも、なんでアタシらがここを進んでるのがバレてんだ? リャンタンでは、バレてねえはずだぜ……」


 そこで、ストラがボソリと、

 「情報が漏れるとしたら、グァンガンの関所でしょう」

 「あの業突く役人どもが、盗賊団にアタシらのネタを売ったってことかよ!?」

 フューヴァがそう叫んで眼を丸くした。

 「とんでもねえ連中だな!」


 「キヒィーーッヒッヒッヒヒヒヒ!! ま、そう云うんじゃないよ、いい暇つぶしさ!」


 こちらも、他に誰もいないのにプランタンタンにつきあって真っ黒いフード付きローブ姿のオネランノタル、ローブの長袖を振りあげて楽しそうにそう云った、


 「おめえは、いい暇つぶしかもしれねえけどよ! ……チッ、仕方ねえ。むしろ、堂々と歩いてりゃいいんだろ? 囮として・・・・!」


 「さすがフューヴァだ! そのとおりさ!」


 フューヴァが、魔族に褒められたって嬉しくも何ともねえといった顔つきで、小鼻を鳴らした。


 「リースヴィル、後ろのをやるよ!」

 「分かりました」

 答えたリースヴィルが、少年のものとは思えぬ不気味な笑みを浮かべる。

 「私は、右側と前だ! ストラ氏は左方面の遠いのを頼んだよ!」

 「了解」


 「じゃあ、ちょいと暇つぶしと行こう!」

 ほぼ同時に、リースヴィルとオネランノタルが飛翔魔法で風に乗った。

 3人で、最も早く匪賊を片付けたのは、ストラだ。

 移動すらしていない。


 それどころか、手すら上げなかった。空間から、いきなり複数のプラズマ弾が飛んだ。


 精霊気エルフのネタに1200トンプも払ったこの左方面の匪賊どもは、4つの匪賊団の中で最も出遅れたのでまだかなり遠くにいたのだが、真っ先にやられた。それはもちろん、ストラのレーダーが最も広域かつ詳細で、先制攻撃も正確無比だったからである。


 ヒュルヒュルヒュル……という、彼らが聴いたこともない甲高い音がしたと思ったら、長距離野砲めいたプラズマ弾が矢継ぎ早に集中着弾して匪賊どもを容赦なくぶっ飛ばした。馬ごと人間が数メートルも跳ねあがって、地面に叩きつけられる。何が起きたのかも理解できずに、23人の盗賊と23頭の毛長馬リャドフが、硬く冷たいに転がったまま動かなくなった。


 荒野に遠く爆音が響き、うっすらと黒煙があがってすぐさま風に消えるのを、プランタンタン達が見た。


 「いっつも思うんだけどよ」

 フューヴァが眼を細めてその煙を見やり、つぶやいた。

 「物を知らねえって、おっそろしいな」

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