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第3章「うらぎり」 3-1 ストラの勧誘

 「そやつは、どこにいる?」


 「アンタたちをぶっ殺すために、潜伏中さ。夜も寝ないで警戒していなよ」


 「一人で、我々を相手にできると?」

 「余裕だね。フィッシャーデアーデ……って、知らないか」

 「知ってるとも。見物に行ったことあるよ。お忍びで、ね」

 そう云って、ラグンメータが片眼をつむって見せた。


 「へえ……」

 「だが、そこの一位とはいえ……」

 「魔物を一人で倒すような魔法戦士でもか?」

 「魔物だと……!?」


 集まっていたマンシューアル兵が、ざわめいた。言葉の分かる何人かが、フランベルツ語を同時通訳している。


 「魔物ったってピンキリだ、どんな魔物だ?」


 そこで、フューヴァがやや大げさに、ストラ対ギーランデルの興行の様子を話した。


 だが、ギュムンデが壊滅したのは、黙っていた。流石に大げさすぎるし、現実味が薄れると思ったからだ。


 楽しそうにそれを聴いていたラグンメータ、


 「そうかそうか……! では、物は相談だが……そやつ、我が配下にぜひとも欲しい。説得しろ。成功したら、全員助けてやる」


 「おい、マジかよ……!」

 捕虜の傭兵たちも、いきなり風向きが変わって顔を明るくした。

 「姉ちゃん、頼むぜ!」

 「なんとか、お前の旦那を口説け!」


 いきなりそう云われてフューヴァも困ってしまったが、そこでピンときて、


 「分かった。だけど、もう一つ条件がある」

 「こいつ、調子にのんな!」

 と、兵士が怒鳴ったが、ラグンメータが手で制した。


 「アタシたちの金を返してくれ!」

 「それはダメだ」

 ラグンメータ、即答。

 「なんでだよ!!」


 「我が軍の正当な権利だ。捕まるお前が悪い。悔しかったら、お前の旦那をピアーダ軍の倍で雇ってやるから、稼ぎなおすんだな。そのためにも、しっかり説得しろ。期限は二日だ。二日以内に説得できなかった場合、また我々への攻撃があった場合は、すぐさま全員殺す」


 「……!!」

 フューヴァが奥歯をかむ。

 周囲の傭兵たちも、

 「ふ、二日かよ……!」

 「おい、てめえの旦那は、いまどこにいるんだ!?」


 思わず一人が立ち上がりかけ、マンシューアル兵に槍の柄でしたたか打ち据えられた。


 「……知らねえよ」

 「なんだと……!?」


 フューヴァのつぶやきに、傭兵たちが再び絶望に顔を歪めてがっくりと肩を落とした。


 「私なら、ここです」

 「!?」


 いきなりストラの声がし、忽然と姿を現したのを見やって、全員が凍りつく。光学迷彩で、とっくにこの場にいたのだ。迷彩を解き、姿を現した。


 真っ先に動いたのは、なんとペートリューだった。呆気にとられる兵士の合間をぬってストラの足元にすがり寄って泣きわめきながら、


 「ズドズドズゥウ! ズドラざあああああ~~~~~~~~~~~~んんんんん!!!! ごいッ!! ごいづらあああああああだじのおざげえええええ!!!! おざげをををををををを~~~~~~~~~~!!!!!!」


 「酒かよ!!!!」


 思わずフューヴァもつっこんでしまい、さしものラグンメータが吹き出して笑い始めた。


 思い出したように兵士たちが槍やら刀やらをストラへ突きつけたが、ラグンメータがまた手で制した。


 「おまえが、傭兵隊の凄腕の助っ人か」

 「はい」

 「名乗れ」

 「ストラです」


 「ストラ、かのギュムンデの闇闘技場『フィッシャーデアーデ』で総合一位というのは、本当か?」


 「本当です」

 「証拠を見せてもらおう」

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