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第3章「うらぎり」 2-6 最後の希望~尋問

 「……なんだ? 女か?」

 「どうして女が……」

 と、傭兵たちが絶望しきった声を発するが、誰かが、

 「おい……もしかして、カラスの連絡にあった助っ人か?」


 「なんだって……!」

 「あの、フィッシャーデアーデ総合一位ってやつか!?」

 「それがどうして、とっつかまってんだよ」

 八人がヒソヒソと声をひそめながら、二人ににじり寄ってきた。


 「アタシらは、その助っ人の従者だよ。契約はしたけど、傭兵じゃねえ」

 「従者だあ?」

 「肝心の旦那はどうした。どこにいる?」


 「あんたたちを助けに出たんだが、その後すぐ……アタシらが捕まっちまった」

 「なんでえ、そりゃあ」

 「め、面目ない……」

 「で、でもよ、助けに来てくれる可能性はあるんだな……?」

 「たぶん……」


 フューヴァ、申し訳なさげに、どんどん声が小さくなる。

 「それより、この中に、団長さんはいるのか?」

 今度は、傭兵たちが消沈した。


 「……いねえ。やられちまった」

 「ふいを打たれたんだ」

 「誰かが裏切りやがった……!!」

 「誰なんだよ」


 「わかんねえ。仲間も散り散りだ」

 「オレたちも、逃げていたところをそれぞれ捕まって、集められたんだ」

 「なんでだ? 傭兵ってのは……その……」

 フューヴァが口ごもる。


 「分かってるよ。傭兵は、人質にはならねえ。ピアーダ軍も、オレたちに身代金なんか払わねえ。そういう契約だ。明日にも処刑か……マンシューアルで奴隷だ」


 「そうなのか? マンシューアルの傭兵に誘われたりしないものなのか?」

 「あんたの旦那ならまだしも、オレたちなんか……」


 「それより、あんたの旦那、本当に助けに来るとしたらよ、こりゃ、最後の希望だぜ」


 「シッ……見回りだ。最後の希望を頼りに、寝ちまおう……体力を温存しておけ」


 誰かがそう云い、地面へゴロンと横になるや、他の七人も一斉に横になったり檻へもたれかかったりする。フューヴァも、そのことだけを頼りに、横になった。


 地面が、冷たい。

 (それにしても……カネだけは、必ず奪い返してやるぜ……!)


 フューヴァは、ストラが様子を見ながら明日にでも助けに来てくれると信じていた。


 そのフューヴァに重なりあうように、ペートリューが倒れた。

 「……おい、だいじょうぶか……?」

 「……け……おさけ……さけ……」

 ペートリューからそんなつぶやきが聴こえてきて、

 (こいつ、こんな状況でも酒かよ……!!)

 フューヴァが苦笑し、じっとりと闇の中に松明の()ぜる音を聞いた。



 3


 翌日……。

 「おぎろ! おぎねえが!!」


 木組の柵をガンガンと叩かれ、まさに叩き起こされる。そのまま水も食料も与えられずに、十人は後ろ手に縛られたまま、下草を刈って本陣中心に作られた広場に引っ立てられた。


 一同が膝をつき、頭を下げさせられていると、高い位置の椅子に一人の司令官が着席した。年のころ二十代半ばで、いかにも気の強そうな眼差しと体格をもち、不敵に笑う男だった。もちろん、マンシューアル人特有の黒髪に浅黒い肌だ。


 だが、兵士たちを見渡すと、同じマンシューアル人でも、部族などにより肌の色や顔かたち・・・が微妙に異なっている。


 「あいつが、俺たちを壊滅させた敵さんの師団長だ。そらもう、若いくせに敵ながら天晴アッパレの攻めっぷりよ」


 フューヴァの横にいたやつが、そう囁きながら憎しみの中にも敬意の念をこめて、その大隊長を睨みつけた。


 「ラグンメータ様、生き残りはこれで全員です。この中の女二人が、先ほど報告しました通り、大金をもって山中をうろついておりました」


 昨夜、フューヴァとペートリューをとらえた小隊長が壇の下から直立不動でそう報告した。


 「情報によると、何やら凄腕の助っ人が傭兵隊に入る予定だったとか。その仲間か?」


 驚くべきことに、ラグンメータは流暢なフランベルツ語を話した。

 「ごだえねが!」

 兵士にそう怒鳴られ、ようやくフューヴァが、

 「あ……ああ、そうだよ」

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