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「ルルーシュア…、ごめんね。絶対助けるから。」


目を開けるとマリカ=ディボルが私に妖艶に微笑み、レイが拳を握り締め此方を見ていた。壁際に研究員達が虚ろな目をして立って居る。


とりあえずレイには頷きで返す。

今ここで騒ぎ立てたり、怖がったりすると状況は荒れる。冷静に判断をする為、辺りを見える範囲で観察をする。


「『ちょっと、ちょっと。感動の再会している場合?貴方は私の物になるの。それを彼女には見届けて貰う事にしたのよ~。いい案だと思わない?』」


マリカからは何故か二重に声が聞こえ、一瞬で別の”何か”が話しているんだと分かった。

なんだ、お前。マリカ=ディボルの中に入れるとか羨ましいな。

意識がはっきりしてくると共に彼女が言っている意味が全く分からず首を傾げる。

ただ、私は捕まり手足を縛られて動けない状況で囮にされ危機的で有るという事は確かである。


「なんだと?……ふぐ…ぅっ!」


「…殿下!」


私がいる為に動けなかったのだろう、レイに強烈な魔力の波が襲い、彼は片膝を着いてしまう。


「『ふふふ、私知ってるのよ。ちょっと精神力が強いだけで、貴方は私には勝てない事。早く此方へいらっしゃいな?』」


ガタガタと震える脚は彼女の言う事を聞き立ち上がろうとしていたが、彼はそれを自ら進まないように押さえ付け床に縫い止めてる。


「…くっ…………る、ルルーシュア、奴は【魅了(チャーム)】精霊界を追放され、魔導においても禁忌とされる者だ………」


「なんだって…?」


「『あら。そんな風に呼ばれてたわねぇ、私』」


魅了(チャーム)と云えば遥か昔の王妃が持っていた様々な異性を虜にし、傀儡とすることが出来る強力な魔法。その余りの強制力を恐れた当時の国王が禁忌とし、その魔法陣は秘密裏に厳重に保管されていると聞いた事が有る。


彼はその強力な魔法の源で有る元精霊に術を掛けられて尚、抗っている様だ。


「僕が愛するのは後にも先にもルルーシュアだけだっ……、もし、お前に愛を囁くとすればそれは偽り、嘘で出来上がった虚しい関係でしかない。」


この後に及んで殿下は物凄いことを言っている。

何故そんなに好かれているのか全然分からないが、そこまではっきりと言われると流石にドキリと胸が高鳴る。


私の高鳴りとは裏腹に彼女の顔はぐにゃりと歪む。


「『うるさいっ!早く堕ちてしまえ!』」


そう言いながら彼女は手を前に出し、更に魔力を上げるとレイは苦しそうに唸った。

ダラダラと冷や汗を流し堪えている。


ずっと違和感があった。


不確かだが、そろそろこの状況に私自身イライラとしていた。


「ねぇ、貴方達。私の意見は聞いてはくれないのか。」



パキッ、キキキ、キンッーーーーーー



「『なにっ!?』」



パラパラと氷の粒が舞う。

先程座って居た椅子も、縄も、全てが氷と化し散り散りに砕けちる。


「ルルーシュア……ダメだ……っ」


殿下が苦しそうに私の前に出ようとするので、私はヒヤリと其方を向いた。


「……殿下、少々お待ち下さいませ。話をするだけですので。」


レイはまだ何か言おうとしたが、奴の魔法を止めるのが先だと考えて無視した。

私は怒っているのだ。

囚われてしまったのは自身のせいだが、よく分からん状況のまま、よく分からん話を続けられ、舞台の真ん中にいるのに私だけ蚊帳の外。


何だかレイと会えなかったのも此奴のせいな気がする。

そう思うと無性にむしゃくしゃした。


私はズンズンとマリカの方へと歩いて行く。

そして、丁度相手の手の届かない所で止まった。


「……お前、そこから動けないんだろう?」


ニヤリと笑うと、彼女は肩をビクリと揺らした。

彼女はずっとベッドから動かないで居た。執拗にレイを自分の元へと来させようとしていたのだ。

それに周囲に居る研究員達を使い、その力で動かせば早かったのではないか。私を捕らえた時の様に。

だが、もし力が弱まっているせいで出来ないのだとしたら。


「まだ完全では無いのではないか?お前を無害化する一歩手前までいったようだから、彼女の身体を動かす事もしんどいのでは?

彼女を利用し、王太子に近付くのはその力が欲しいからでは無いのか?

そして、その力は異性にのみ発動するもの。私には効かないのだろう?」


つらつらと考えていた事を口にすると、彼女の顔は真っ赤になり怒りに震えだした。


「『そ、そんな事ないわ!』」


彼女が逆上し立ち上がろうと手を付いた瞬間、私は彼女の手足を凍らせ縫い止める。


「『あ…、うぐっ!』」


そして動けない彼女の頬を片手で勢いよく掴んだ。彼女はとても変な顔だ。まるでタコ。


「マリカ=ディボル!!奴に身体を乗っ取られたままでどうする!いい加減出て来て説教しても良い頃だぞ!」


勢いのまま叫ぶと、彼女は一瞬キョトンとすると更に眉間に皺を寄せる。


「『無駄よ、彼女は出てこられないわ』」


「ほぅ。でも聞こえているじゃないか。」


「『え?』」


私は不敵ににやりと笑う。

ポロポロと伝うその雫はお前の物じゃ無いのだろう?


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