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「状況は分かった。この件は私が持っている案件だ、何か不満が有れば私に言いに来い。お前達はこんな無駄な時間を過ごしているよりも、もっと有意義な時間がある筈だがな。」


私の説明が終わるとレイは男達にそう言い、解散を命じた。

男達はしょんぼりと肩を落とすと、トボトボと帰っていった。


そして、レイはマリカに向き直る。


「無駄に動くなと命じた筈だ。あの様な事になる事は分かっていただろう?」


「も、申し訳御座いません…。学園が終わり、此方へ来た所を待ち伏せされていました…。」


「…城の者に送らせる。今日は帰るんだ。」


「畏まりました、失礼致します。」


彼女は少しホッとした顔をすると、レイに付いていた従者の一人に連れられて帰って行った。


私は、心を平穏に保とうと努めているが何だか色々忙しい。

それに、王妃教育の時間は完全に遅刻だ。無遅刻無欠席だったのに。


「ルルーシュア。びっくりしたね、そんな顔をしないで。」


マリカが見えなくなると、レイは私を見てクスクスと笑う。

そんな顔とはどんな顔だ。私は感情を表に出さぬ様に訓練しているのだ、変な顔にはなっていない筈だ。

それよりも、距離が近い。


「ふふふ、目が笑って無いよ?」


「心を読まないで下さいませ。近いです。」


「読めないけど何となく分かるよ、君の事なら。

大丈夫、王妃教育は今日はお休みだ。」


「…お休み、ですか?」


「そう。君が頑張っているのは知っているから、お休みを設けた。だから、私と遊ぼう?」


「は?」



****



何故か私は王城の裏手で待ちぼうけている。


「おまたせ~~!」


すると、見た事の有るもっさりした青年が此方へ向かって走ってきた。


「……レイ、なのですか?」


「そうそう、びっくりしたよね。また、会えたね~。」


あの雑木林で出会った青年はレイだった。まさかの事が多過ぎて頭がついていかない。

この格好になると口調迄緩くなるのか、彼はニコニコと私の手をギュッと握った。


「れ、レイ!」


「まぁまぁ。二人ともこの格好じゃエスコートは変でしょ?その格好のルルーシュアも可愛いよ!だから、手を繋ごう?」


彼は私の手を恋人の様に繋ぎ、離そうとしない。

『だから』の意味が分からない。完全に強制的だ。

私も何故かレイ直属の侍女達に捕まりズルズルと何処かに連れて行かれたかと思えば、変装させられ町娘の様な格好をしている。まさか、市井に行くのか?と、頭には疑問符ばかり浮かんだ。


「そうそう。ちょっと失礼。」


彼は何かを思い出して、私をひょいと持ち上げた。


「ひっ!お、下ろして下さいませ!」


エスコート自体も、触れ合った事もほぼ無いというのに手を繋がれた事もびっくりしたが、まさか横抱きされるとは思わず少しだけ大きな声を出してしまうと、彼はにっこりと微笑み更にギュッと抱き締める。


「ごめんね~、密着してた方がやりやすいんだよね。」


何を言っているのか分からず混乱していると、彼の周りが輝き出して大きな魔法陣が展開された。

眩しさに目を閉じ、光が止んだのでゆっくりと目を開けると路地裏の様な所にいた。


「て、転移魔法……。」


「正解。初めて?」


「初めてです…。使っている方に会うのも…。」


「結構身近に居るよ。」


サラッと言っているが、転移魔法は膨大な魔力量が無いと出来ない。

出来る人間が居る、というのを聞いた事が有る位でそれだけ出来る者は少ない。

私もそこそこ魔力量は多い方だが、転移魔法なんて出来る程持ち得ていないしやり方すら分からない。

しかも1回の消費量が膨大なので効率的では無いと教わったが、彼はケロッとしている。


彼は壊れ物を扱う様に、私を丁寧に下ろすと再び手を繋ぐ。


「さぁ、デートだ。」


そう言い私を引っ張ると、表通りへと歩いて行く。

どうやらここは王都の城下町らしく、貴族街や市民街が別れていてとても賑やかな所だった。

離してくれそうにないので、手を握られている事は早々に諦める事にした。


レイは様々な屋台を見せて【コロッケ】なるものを買って私に食べさせたり、雑貨屋や小物屋等の店舗にも気安く入り私に色々と教えてくれた。

彼は店に入るその度に街の人に話し掛けては、「最近どう?」と、今の暮らしを聞いていく。

知り合いも多く、彼がこの国の王太子だと知る者は誰も居ない。無論、私が王太子妃になる事を知る者も居ない。

久々の外出は思いの外楽しかった。

これが彼の素なんだろう。のびのびとしている彼を見ると、王太子には向かない人なんだろうなと思った。


最初は訳も分からず付いて回っていたが、情報収集なのだろう。やたらと知り合いが多いので、揶揄われたり野次を飛ばされたりしたが、彼はのほほんと躱して行く。

これが先程物凄い威圧で周りを震え上がらせた人物だと誰が思えようか。


「よし、ここら辺で休憩しよう。ちょっと待ってて」


彼はそう言うと、広場のベンチに私を座らせた。

近くに有る屋台で飲み物を二つ買い一つを私にくれる。


「どうぞ。外で飲む事なんか中々無いでしょ?あ、鑑定もしといたから毒は入って無いよ。」


まさか、鑑定も出来るのか。鑑定が出来る人間はレアだ。故にトップクラスの地位を与えられるのだが、彼はこの国のトップに立つ予定の男だ。ちょっと桁がおかしい気がする。


「ありがとうございます。」


「あ~…、楽しくて言うの忘れてたんだけど敬語は使わなくて良いよ?婚約者なんだし、今更なんだけど。」


「いえ、私は少々口が荒く敬語の方が失礼が無いかと。」


「ふふ、気にしなくて良いよ。知ってるから。」



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