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何故、何故なんだろう。


ザワザワと周りが騒がしいのは、 今私の目の前に何とも麗しく輝かしい男性が立って居るからである。


「久しぶりだね、ルルーシュア。」


そう言って彼がニコリと笑うだけで、クラスメイトの何人かが失神した。

可哀想に。介抱してあげたい。


「お久しぶりで御座います、殿下。」


私は最上級のカーテシーをして、挨拶をする。

なんで今更会いに来たのだろう。しかも、連絡も無しに突撃して来た。卒業したら婚姻を結ぶから偵察か?

何より、確実に私のお昼休みは潰れた。


「顔を上げて、此方へ」


そう言って、彼は私をエスコートする。

そう。何を隠そう彼が、この国の第一王子にして王太子殿下。レイヴン=アル=カダール殿下だ。

やはり顔は全然覚えていなかったが、その容姿は皆の噂で知っている。プラチナの髪を靡かせ、金の瞳の相反する輝きを持つ、神が愛し作り上げたとしか言い様の無いお姿。

本当にそんな人間存在するのか?と思っていたが、どうやら存在するらしい。

どんなに丁寧にしたらこうなるんだ。


殿下は私を彼専用の個室へと導き、椅子へ座る様に促した。そして、少しだけドアを開け人払いをした。


「本当に久しぶりだね。」


「ええ。お手紙ではお話ししていましたが、こうして会ってお話しするのは六年振り位ですね。」


「そうなるね…。ごめん!」


「なっ!」


殿下は急に立ち上がったかと思うと、物凄い勢いで頭を下げた。


「お、お辞め下さい殿下!王族が臣下に頭を下げるものでは御座いません!」


私は焦ってガバリと立ち上がると、殿下は顔を上げて私を見てクスリと笑った。


「…良いんだ。今は、君と二人きりだ。今まで会えなかったのには理由が有る。だが、君が王妃教育を頑張ってくれている事も知っていたのに労わってやる事も出来なかったのは、ずっと謝りたかった。」


「お気になさらないで下さい。お手紙を頂いていましたし、私は自分の役目を果たしているだけですので。」


「ふふ、有難う。変わってないね、君は」


「そうでしょうか?」


「うん、あの頃のままだ。」


そう言うと、殿下はまるで愛しい者でも見ているかの様に頬を染め、私を見る。


なんだ、その顔は。


「で、殿下。それで、会えなかった理由とやらは何ですの?」


「すまない。それは国家機密に触れてしまって、まだ言えないんだ…。」


「左様でしたか。もう解決には至っていると?」


「うん、もう殆ど解決したからこうして会いに来た。愛しい、ルルーシュア。」


「はい?」


聞き間違いか?何やらあのニコニコとした男性の口から『愛しい』と聞こえた気がしたが。


「近くに行っても良い?もっと、顔を見せて」


殿下は言葉を発しながら私の正面の席から隣へと移動して、頬に触れようと手を伸ばして来た。


「で!ででででで、殿下!!お、お戯れが過ぎます!!」


日々、女の子を愛でる私に男性への耐性等ある訳が無い。確かに、殿下は手紙でも愛をつらつらと書き連ねてはいた。

だが、未来の為に仕方なく書いている物だと思うでは無いか。だって、会えていないのだから。


私は手を前に出して身体全体でお断りをすると、伸ばされた手はスッと彼の元へと戻っていった。


「そう、だね。いきなりはビックリしちゃうよね。これからは沢山会おう。僕の事は前の様にレイと呼んで?」


「そ、そんな!お…、恐れ多いので…。」


「レイ。」


「………………レイ…。」


「ふふ、じゃあ今日はこれくらいにしよう。教室まで送ろう。」


「い、いえ。レイに送って頂くとなれば、また失神者が出てしまい兼ねません。

私は一人でも帰れますので、またお会い出来ます事を楽しみにしております。」


「それもそうか、分かった。では、従者を付ける位は許してね。次は連絡を入れるよ。」


「畏まりました、お待ちしております。」



殿下と別れ、思ったより早く教室に帰る事は出来たが怒涛の展開に頭が全く働かなかった。

全然、意味が分からない。


そんな感じでボーっと授業を受けていたら、いつの間にやら授業は終わり王妃教育の時間が迫ってしまう。


まだ時間は有るが、何時もの様に図書室へ行き淑女観察をする気にもなれず、早めに行って復習でもしようと何時もの近道へと足を運んだ。


バサササッーーー



開けた場所へと出ると、白いフクロウが手に届く程の距離に有る木の枝に留まる。


「ほぅ…。……なんて可愛らしい」


クリクリとした瞳は金色に輝いて、白く美しい羽毛がモコモコとしている。

こんなに間近でフクロウを見た事が無かったので食い入るように眺めた。

可愛らしい女の子も好きだが、同等に動物も好きだ。



「あなたはとても美しいのだな。それに、人がこんなに近くにいるのに怖くないのか?」


『クルルっ』


「あら、お返事が上手だ。…少し、触っても怒らないか?」


フクロウはまるで言葉が分かるかの様に返事をして、触っても良いか聞くと目を細めた。


もしかして、良いという事なのだろうか。


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