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解決です

 無事に取り戻せて本当に良かった。

あっという間に眠りについたアンジーを起こさないようにゆっくり走る。よほど疲れていたのだろう。気を張っていたはずだから。


あの男に服を脱がされていた姿を見て、彼女の頬に涙が流れているのを見て、危うくあの男を殺すところだった。こらえた自分を褒めてやりたい。

「もう一発くらい殴ってやればよかった」


ぼそっと呟く。実際、本当に殴っていたらあの男は死んだかもしれない。まあ、これから罪を償う為に、死んだ方が楽だったという思いをするだろう。

そう考えると、少し溜飲が下がった。


俺にもたれかかって安心したような顔のアンジーの頭にそっとキスをする。これでやっとこの件も片付く。婚約と言わず、すぐにでも結婚したい。宰相殿に殺されるから言わないが。


視界にガルヴァーニ家が見えてきた。この幸せな時間を終わらせるのは惜しいが、これから先のもっと大きな幸せの為にと自分に言い聞かせ前へと進むのだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ううん。良く寝た」

明るい日差しが窓から入ってくる。とてもスッキリした気持ちで起きる。

あれっ?私、いつの間に自分の部屋で寝たのだろう。ルディに身を預けて安心したのまでは覚えているが、どうして今自分のベッドにいるのかわからない。


起こしにきた侍女に尋ねてみる。

「ねえ、私いつの間に自分のベッドで寝たの?」

「やはり覚えていらっしゃらないのですね。とてもぐっすり眠ってらっしゃいましたもの。昨日はルドルフォ副団長様に送っていただいて、そのままベッドまで運んでいただいたのですよ。起こすといけないからと。本当に無事に帰っていらして良かったです」


「そういえば、あなた達は大丈夫だった?解毒薬をルディがくれたらしいけれど」

「はい、そのお陰で副作用もなく無事でした」

「そうなのね、よかった」

「心配していただきありがとうございます。さ、ご朝食の時間になりますよ。お支度を整えましょう」


 朝、朝食を摂るために降りていくと、母上に抱き着かれた。

「ああ、アンジーよかったわ。ドルフから聞いたけれど、本当に何もされなかったのよね」

「大丈夫。服を脱がされかけたけれど、ルディが堅い扉を吹き飛ばして助けに来てくれたの。やっぱり私、ルディが大好きよ」


「おい、服を脱がされかけたってどういうことだ?聞いてないぞ」

後ろにジル兄様がいた。

「薬で全く動けなくて、テスタ侯爵がボタンを一つずつ外して……本当に気持ちが悪かった。そしたらね、扉がバーンって凄い音で吹き飛んだの」


「あの変態男め。一発は殴らなくては気がすまん」

「そうだな、一発で済むかはわからんが」

更にお父様も参戦してきた。

「あれ以上は殴れないと思うよ。顔、潰れちゃってるから」

ライ兄様が入ってきた。


「潰れた?」

「そう。ルドルフォ副団長の会心の一撃でね」

「なるほど。ならば、その顔を拝んで我慢するか」


 謁見の間で見たテスタ侯爵は、これ以上殴るのは気の毒と思ってしまう程、酷い有様だった。

結局、殴られたことが功を奏したのか、テスタ侯爵はとても素直に罪を認めた。昔の麻薬の件には直接関わっていなかったことや、誰も実害がなかったことから死罪は免れ、鉱山で働くことに。第二王子は王位継承権はく奪の上、騎士団の下働きから始めることになった。側妃とリンダ・テスタは北の最果てにある、国一番の厳しい戒律を誇る修道院へ送られる事になった。


大人しく刑を受け入れた男性二人に対し、女性二人はずっとキーキー喚きたてていた。

イラついたジャンヌ副団長が、二人の傍に近づき何やら囁く。

すると、二人とも茫然自失になったまま、騎士たちに引きずられていった。


「いやあ、終わった終わった」

フィエロ殿下の執務室でライ兄様が大きく伸びをする。

「皆、ご苦労だったね。近々、打ち上げでもしよう。まあ、今はとりあえずお茶で乾杯かな」

フィエロ殿下の言葉で、お茶が入れられる。


「カッシオ殿下、素直に受け入れていましたね」

私が言うと

「あんぽんたんは目が覚めたんだよ。母親がずっと自分の都合のいい嘘を、自分の息子に刷り込ませていた事がわかってね」

「根っからのあんぽんたんではなかったのね」

ディアナ姉様が言う。

「まあ、騎士団でみっちりしごいてやりますよ。もしかすると、一皮むけて少しは立派になるかもしれないですよ」

「そうだね。よろしく頼むね」


「そういえば、ジャンヌ副団長。最後にあのうるさい二人を黙らせましたよね。何を言ったんです?」

ジル兄様がジャンヌ副団長に聞くと

「あ、それ俺も気になった」

「あれ?『修道院が嫌ならゴブリンの巣に放り込まれる刑に変更しましょうか?死ぬまであの臭い奴らに犯され続ける事になるけれど』って言ってやったの」


「そんな刑なんてないでしょう」

「いいのよ。どうせもう二度とあの修道院から外に出る事はないんだから。誰からもチヤホヤされずに干からびていくのか、臭い連中にチヤホヤされ続けて死んだ方がマシと思う程の苦痛を味わうか……どっちの地獄を取る?って選択させてあげたのよ」

「うわあ、怖すぎる」

「あいつらは自分たちが悪かったって思いが全くなかったんだもの。少しくらい脅してやらないとって思って」


「ふふ、ジャンヌ姉様ったら」

「……」

「あら?間違えちゃった」

「いやあん。間違えてないから。それでいいから。嬉しい、これは嬉しいわ」

「じゃあ、ジャンヌ姉様、これからもよろしくお願いしますね」

「ああん、もちろんよお」

思いっきり抱きしめられた。


「アンジーの姉様というのなら、私にとっても姉様なのかしら?」

ディアナ姉様が言うと

「え?何かしら?この幸福感。いいわよ。ディアナ妃も私の妹よ。どーんと来なさい!」

そう言ってディアナ姉様も一緒に抱きしめた。


「なんだろう?敗北感、感じるんだけど」

「偶然ですね、俺もです」

フィエロ殿下とルディがそう言って溜息をついた。


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