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心臓の音の意味

 今日は私の騎士団潜入作戦の進捗状況を話し合うために呼ばれたはず。

なのに、どうしてかルドルフォ副団長がいる。


少しだけ久しぶりな彼の姿に、胸が大きく高鳴った。同時に、アンジェリーナとしては初対面だったかしら?と疑問が湧く。

挨拶はどうするのが正解だったかしら?ああ、お顔を見れただけでこんなに幸せな気持ちになるんて。

もう全く思考がまとまらない。


軽くパニック状態に陥っている私の顔は、きっと赤くなったり青くなったりと面白いことになっていたのだろう。

ルドルフォ副団長以外の皆の肩が震えている。笑いを堪えているのだ。

ライ兄様はすでに大笑いしているけれど。


「言っておきますけれど、殿下の顔も笑うのを我慢していて、相当おかしなことになっていますからね」

そう言ったのを皮切りに何故か皆が爆笑した。ディアナ姉様まで扇で口を隠すことを忘れて笑っている。ライ兄様はとうとう泣き笑いになった。


「おま、すんごい顔になってたぞ。百面相とはこのことかってくらいにな」

ヒーヒー言いながらライ兄様が言う。

「だって……どれが正解かわからなかったんだもの」

そう言うと、ライ兄様が更に笑った。


「初めまして。ルドルフォ・スカリオーネと申します。お名前を伺っても?」

スッと私の前に立ち、胸に手を当て挨拶をしてくれたルドルフォ副団長。一連の美しい所作にドキッとするも、初めましてが正解なのだと理解して挨拶を返す。

「アンジェリーナ・ガルヴァーニと申します。以後、お見知りおきを」

カーテンシーで挨拶をする。顔を上げると手を取られ、甲にキスをされた。


そして、そのまま軽く引かれる。咄嗟の事に全く力が入っていなかった私は、なすがままルドルフォ副団長の胸の中に収まってしまった。

「あなたにやっと会えた。以前、フィエロ殿下の執務室でお見かけした時からまた会いたいと思っていた」

そう言って、私を抱きしめた。


え?あの時?団長が帰る時にいたという事だろうか?

そういえば、子供たちに本を読んでいたんだった。きっと気付かなかったのだろう。


「あまりに会いたいと思っていたせいか、そのすぐ後に騎士団に入ってきた新人とあなたの姿が重なって見えて大変だった」

は?え?私?


「この流れるような金の髪も、サファイアのような青い瞳も、何もかもがあなたと重なって……俺は頭がおかしくなったのかと思ってしばらく苦しんだ。しかも愛称が同じ、アンジーだったことで俺の頭はもうパニックだった」

ああ、これは絶対アンジェロである私の事だ。私の心臓があり得ないくらいドキドキしている。


「彼を気にかけ、周りに過保護だとまで言われ……彼が魔物討伐の後、倒れた時は本当に心配で。剣が彼に向かって飛んで行ったのを見た時には息が出来なかった。なのに、当の本人は俺の心の葛藤など知らず、俺に剣の稽古をつけて欲しいと言う。王都の巡回では声を掛けてきた女性たち皆が俺の彼女なのだと勘違いまでする始末」


あわわわ、私ったら失礼な事ばっかりしてた感じ?これは次にアンジェロで会った時が怖い気がする。


「あなたを想っているから彼が気になるのか、それとも彼そのものが気になっているのか……もう訳が分からず思わず彼を抱きしめてしまった。そして気付いた」

私を軽く抱いていた腕がキュッと強くなった。


「アンジェロはあなただ、アンジェリーナ」


耳元で囁かれ、耳から首筋を吐息で撫でられた。背中から腰に電気が走る。

慌ててルドルフォ副団長から離れる。が、膝に力が入らずへなへなと座り込んでしまう。

地面につく寸前、ルドルフォ副団長が私を抱き上げた。


これではもう逃げられない。ああ、逃げるなんてこの方相手に元々無理だ。

それにしてもこの体勢って顔が近い。ああ、やっぱりルドルフォ副団長は素敵。

もう、笑えるくらいのパニック状態。


「やっと捕まえた……一目見た時からあなたに心奪われていた。アンジェロとアンジェリーナが同一人物だと確信した時の俺の嬉しさがわかるか?どうかお願いだ、俺と結婚してくれ。どちらのアンジーも俺に愛させてくれないか?」


顔が熱い。頭がくらくらする。心臓の音がうるさい。

私はルドルフォ副団長に対するほのかな想いが、恋なのかどうか確かめたいと思っていた。フィエロ殿下とディアナ姉様の後ろに彼を見た時、大きく胸が高鳴った。間違いなく彼に恋していると確認するよりも先に、パニックになってしまったせいで、そんな自分の気持ちを横に置いていた。


そして、何も整理がつかないうちにルドルフォ副団長に捕らえられてしまった。


それでも答えは出ていた。だって、ライ兄様よりも強いんだもの。もしかしたらお父様よりも強いかもしれない。もうそれだけで私の心は動いていた。

そして見た目の冷たさとは違って私をとても気遣ってくれた。そして初めて見た笑顔。

横に置いていた気持ちをそっと戻す。


「私、ついさきほどルドルフォ副団長の事を好きだと気が付いたんです。本当はもっと早くから気持ちは動いていたんです。でも、なかなかわからなくて……そんな私でもよろしいでしょうか?もらってくださいますか?」


一瞬、ポカンとしたルドルフォ副団長の顔が、みるみる崩れた。

先日の巡回で見た笑顔以上の笑顔になったルドルフォ副団長は

「ああ、ああ、勿論だ。ありがとう。愛している、俺の女神」

そう言って私のこめかみにキスをした。


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