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困りました

「ルドルフォ副団長!?」

咄嗟にアンジーを隠すように立つ。

「どうしたんですか?」

「いや、どうだったかと心配になってな」


「そうなんですか、わざわざありがとうございます。もう大丈夫だそうです。初めての大掛かりな討伐にテンションが上がりまくっていたのがプツンと電池切れしたようで」

「そうか、ならよかった」

「はい、もうじき目を覚ますと思いますし、目が覚めたら今日はもうこのまま帰らせますので」

「そうだな。それがいいだろう」


会話が途切れる。なのにルドルフォ副団長は出ようとしない。一体なんなんだ?いつもの副団長と違う様子に困ってしまう。

アンジーもそろそろ目を覚ますだろう。早く出てってくれ。

そんな願いも虚しくルドルフォ副団長は、ベッドの傍の椅子を指差して

「座っても?」

と聞いてきた。


ああ、万事休す。

思わず天を仰いだその時

「アンジーはどう?」

天の助けが来た。


「ジャンヌ副団長!」

「……」


相反する反応にジャンヌ副団長がポカンとするが、それは一瞬で

「ドルフ、あんた何やってるの?第五の隊長が探していたわよ。報告書の件でって」

「……わかった。仕方ない」

そう言って、ルドルフォ副団長は去って行った。


「はあああ、助かった」

俺が脱力すると

「アイツ戻ってきたの?」

「そうなんですよ。なんでかわからないですけど。しかも居座ろうとして。マジで助かりました、ジャンヌ副団長」


「なんかアイツ、この子に対して挙動不審よね。なんなのかしら?」

「いやあ、全然わからないですね」

そんな会話をしていたら

「んん……」

アンジーが目を覚ました。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ライ兄様?」

「ああ、気分はどうだ?」

「もう苦しくないから大丈夫。深呼吸出来るって素晴らしいわ」

「キツく締め過ぎよ、アンジー」

「ジャンヌ副団長!?来てくれたんですか?すみません、余計な心配かけて」

「いいのよ、初めて長時間さらしを巻いていたから呼吸がしづらくなったのね。次からはもう少し緩めなさい」

「はい、ありがとうございます」


そう言いながらベッドから起き上がる。私の胸を締め付けていたさらしがなかった。

「あれ?さらしがない。ライ兄様取った?」

「いくら兄妹だからってそこまでやるか、ボケ。ディア姉の侍女が来てやってくれたんだよ。きつく締め過ぎていて切るしかなかったとさ」

「そうなの?後でお礼しなくっちゃ」

はだけたシャツのボタンを留めようとするが、どうしても三番目のボタンがしまらない。太ったのだろうか。


「ボタン、きつくて留められないのだけど」

「おまえ太ったんじゃないのか?」

自分が思ったことを人から言われるのって腹が立つのね、なんて思っていると

「何、おバカなこと言ってるの。胸が潰れてない分きつくなるのは当たり前でしょ」

「ああ、なるほど」

兄妹で揃ってしまった。


「騎士服に胸の谷間って……なんだか扇情的ね。それにしても困ったわね。これじゃあ帰そうにもここから出られないわねえ」

「隠れながら帰るのは?」

「ダメね。アンジーを心配しているのか、この辺を団員たちがウロウロしてるのよ」

「うーんと……困りましたね」


「ずっとここにいるわけにもいかないしね。そんな事したらまたドルフが見舞いに来ちゃうわ」

「ルドルフォ副団長?」

「そうなのよ。ここまで運んだのもドルフよ。それで保護欲でも出たのかここに留まろうとしてねえ。アイツがあんな感じになるなんて珍しいったら」

「そうなんですか」

ああ、だから意識が飛ぶ前、視界が銀色になったんだ。

妙に納得してしまう。


「そうなの。部下には基本優しいのだけれど、自分から進んで関わろうとはしないタイプなのよ。アタシになんて優しいどころかぶっきらぼう過ぎて逆に可愛いと思っちゃうけど。それがどうしてか、アンジーの事は気にかけているのよね。最初は団長の親戚だから気にかけるようにしているのかしらって思ったんだけどなんか違うのよねえ。アンジー何かした?」


「……いえ、記憶にはありませんね」

「じゃあ、なんなのかしらね?まさか、アンジーの可愛さにイケない扉が開こうとしてる?」

「考えるの拒否していいすか」

ライ兄様が聞きたくないとばかりに、耳に指を突っ込みながら言う。

「ちょっと、ちゃんと聞きなさいよ」

会話が不毛になる中

「ちわーっす。空の樽の回収に来ましたー」

向こうで大きな声が聞こえた。


すぐ近くに厨房があるので、そこへ向けて声を掛けているのだろう。

「樽の回収かあ」

「樽の回収ねえ」

「樽の回収ですね」

どうやら三人の思考が一致したようだ。


「これだ!」

「これよ!」

「これだわ!」

三人共に声を上げ、ニタリと笑いあったのだった。


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