才能判定
いよいよ今日だ。判定の儀とやらがある日は。
待ちに待ったぜ。今日僕の才能がやっと分かる。
多分、剣術も魔法も才能あると思うんだよねー。
朝食を済ませ、帯剣する。一応簡単に取り外せない様に魔紋磁石をロック状態にしておく。
『母さん。そしたら行ってくるよ。』
「ええ、行ってらっしゃい。気を付けてね。」
『うん。行ってきます。』
家を出てすぐミアを迎えに行く。というかミアの母親も同伴するので一緒に教会まで行ってもらうのだ。
『おはようございます。ケイトさん。』
「アル君おはようございます。ミアもすぐ来るから待って下さいね。」
『ケイトさん。子供の僕にそんなに畏るのはやめて下さいよ。』
「いいえ、アル君は貴族ではないとはいえ、姓を持つことを許されたお家の方ですから。私達平民よりも位が高いのですよ。」
『そんなこと気にしなくて良いって父さんと母さんもよく言ってるでしょ?元は平民な訳だし。僕は同じ人間同士に偉いも何も無いと思ってます。国王だって貴族だって同じ人間でしかありません。』
「ええ、そうですね。いえ、そうね。出来るだけ気にしないように頑張るわ。けど…アル君は聡明過ぎると思うの。6歳児はそんなこと言わないわよ。貴族様達に聞かれたりしたら大変よ。最悪殺されてしまう。」
『そんなことで殺されちゃうの?』
「ええ、不敬罪という罪で殺されてしまうわ。」
『恐ろしいなぁ。』
どこの世界も上に立つ者が居て、牛耳っている状況は変わらないんだなぁと思ってしまう。それが自然の摂理なのかね。
地球でも文明が発達してない頃はこんな時代だったのかな、とか考えてるとミアが来たので、一緒に教会に向かう。
教会は街の北に位置しており、歩くと20分くらいかかる。その後はミアとケイトさんと取り留めのない話をしながら歩いていく。
教会が近づくにつれ、子供や子供連れの人達が多くなってきた。皆、間違いなく判定の儀に来てるのだろう。
その中にトンチンカントリオも居る。こちらに気付き睨んで来てるような気がするけどスルーだ。
教会は結構な大きさで、この世界では皆に平等に才能を与えてくれる場所として奉られているようだ。
アテナと呼ばれる女神が世界を作り、人々に才能を与えたとされているので、教会内には美しい女神像が置かれている。
んー、誰がアテナとか言い始めたのか知らんけど、世界のシステムを作ったのはゼウスっていうオッサンなんだけどなぁ…まぁそれは良いか。誰がどんな神を崇拝しようとも関係ない。
教会の中には大体30人くらいは集まってきただろうか。来た者達から順に判定を行なっているようである。なので、もう終わって帰っている者もいる。
案外同い年の子もいるもんだな。と考えていると、オォと歓声があがる。
今、判定がされてるのは5人前に並んでいたラスターだった。
司祭の前に巨大な石板が置かれている。大体1メートル無いぐらいの大きさだ。そこにラスターの情報が出ているようだ。それを後ろから覗き込む。
□ラスター(男)6歳□
《才能》
・槍++
・体++
・弓+
・剣
・攻魔
・学
・商
こんな表示がされていた。
どうやらラスターは槍と体術の才能、が突出しているらしい。
無印は一般的なレベル。
+が付くと一般的なレベルを超えて、才能を用いての活躍が期待できる。
++まで行くと獅子奮迅の活躍が期待できるとされている。1000人に1人ぐらいの割合で出現するみたいだ。
実はドラゴンを倒した父も剣術と体術の++だ。
いや、マジかよ。あの悪ガキトンチンカンのトン。父さんと同じレベルなの。
と言っても何の訓練もしてない子供なので、もちろんまだ弱い。先日僕が教育的指導を行えたぐらいだ。
けどあんな悪さばっかりする奴に才能を与えても良いものなのか。増長して、手が付けられなくなるんじゃないか?
「ラスター君、貴方は王立学校へ進んでいただき、色々な事を学んで下さい。その後、成長した貴方には輝かしい未来が待っているでしょう。」
と司祭が言う。
+以上の者は学費免除の特待生。案外何かの+を持っている者は多い。
それぞれ人には才能があるって事だな。
「ハッ。やっぱり俺には才能があったか。まぁ学校へ行ってあげてもいいぞ。」
ガキが調子乗ってるわ〜。でも確かに半数以上が判定を終えているが、ラスター以上の者は出てきていない。悔しいが、あれほどの才能は滅多にお目に掛かれないレベルなんだろう。
ラスターの判定により、ざわめいた状況のまま次の判定が行われていく。が、なんとトンに続いてチン(マット)は商才の++。カン(ダズ)は斧の++が表示された。
何だこの敗北感。あんな悪ガキ3人組が才能があるとか…しかも滅多に出ない++だろ…世も末だ。
そして次にミアの番が来た。
□ミア(女)5歳□
《才能》
・回魔++
・弓++
・小剣+
・杖+
・学+
・攻魔
・体
・商
幼馴染みがチートだった件について。
いや、これは普通に才能ありすぎじゃね?てか1000人に1人、が多過ぎて草なんだが…
「こ、これは…!回復魔法が++とは!ミアさん、貴方も是非学校へ!そして将来は王国もしくは、教会へ。教会ならば聖女の1人になれますな。いや、きっと聖女となられたほうが良いですとも。」
早くも教会への勧誘が始まっておる。最早未来は安泰だな。
ケイトさんとミアは大はしゃぎしている。
しかしこうやって才能を示してくれると分かりやすくて良いよな。普通だと自分に何が向いてるのかなんて分からないからなぁ。ただ、+を1つも持ってない者は悲惨ではあると思うが。
「次の者、名は何という。」
ついに自分の番が来た。
『アル=ライトブリングです。』
「おぉ神よ、迷える子供、アル=ライトブリングの道を照らしたまえ。」
これが決まり文句のようだ。どういう仕組みかは全く見当も付かないが、名前とセリフにより才能が示されるのかな。
□アル=ライトブリング(有)6歳□
《才能》
・筋の良さM
・剣
・体
・攻魔
・学
えっ?…えっ?
大事な事なので2回言いました。えっ?3回目出たわ。