少年の名はアル
そんなこんなで神様に送られた俺。
超高い所飛んでる…てか超スピードで落ちてる?怖ええぇぇ!
『や、やべぇってこれ!シャレにならん!』
とか言いつつも周囲の風景は暗いから夜なのかな。とか考える余裕も出てきた。周りから見ると俺って流れ星みたいに見えてるんじゃね?
数十秒程度経っただろうか。どこに向かってるんだろう、なんて考えてる内に街の明かりが見えてきた。
『あそこに向かってるのか。相変わらず速すぎるってこれ。身体がいうこと効かないし。このまま激突して死なないよな?それはないよなさすがに…』
どうやら俺の魂は、街の中のとある民家に向かって落ちているようだ。それを認識したころには家の中の少年にぶつかった。屋根も壁も一瞬ですり抜けた。
死んだかと思ったが、少年の身体から強烈な蒼白い閃光が放たれた。それは一瞬の出来事だった。
『生きてる…』
そう思った瞬間、激しい頭痛と嘔吐感が襲ってきた。
『ぐっ…!うっ…あああぁぁぁ!』
思わず叫んでしまった。
階段からドタドタと足音が聞こえてくる。バタン!と自分の部屋の戸が開かれる。
「大丈夫か!何か凄い光らなかったか!?さっきの声は!?」
『いや、何にもないよ?父さん。』
少年と同化した僕は、少年の記憶を全て理解した。あまりの情報量に頭がおかしくなりそうだったが、何事も無かったように返事をした。
「そうか?何だったんださっきの眩い光は…まぁ何事も無ければ良かった。早く寝るんだぞ。」
首を傾げながら部屋から出て行く父を見つめる。
ベッドで横になっている僕の名前はアル。日本人の時の名前と同じだった。偶然ではないだろう。
完全に2人分の記憶がある状態…俺が少年の身体を乗っ取ってしまったのか?「そんなことないよ。僕はキミ。キミは僕なんだよ。」頭に少年の声が響いた。
同じ名前を持つ俺たちは元々似たような魂だったのだろうか。最初の混ざり合ったショック以外は違和感も無く、1人の人間として存在していた。
『僕はアルなんだ。少年を殺してしまった訳では無くて安心したな…』
1人呟いた僕は耐え難い睡魔に襲われ、そのまま眠りについた。